4-3 一応約束は約束


 もうここは俺の部屋のようなものか。

 この世界に来て最初に寝てた部屋。

 魔女の獄炎の露天風呂に入り、さっぱりしてベッドイン。

 いつもの入院服みたいなワンピースも借りて着ている。

 一応女性物ワンピースだから、オリティアに見られるの恥ずかしいな。


 今日はもう遅いので、先程の会話の続きは明日しようということになった。

 オリティアもこの家に泊まることになって、どっかで寝てるはず。

 風呂上がりで暑いから、ベッドに横たわっていた。

 電気を消して月明かりだけにしていた。



コンコン



 ドアをノックされた。


「起きてる?」


 誰だよ!?

 ああそっか。

 一応言っておこう。


「誰!?」


「私だよわかるだろ。」


 そう言って髪を2つ手で束ねた。

 いつもの赤いツインテールが解けていたので、一瞬マジでわからなかった。

 服も俺らと同じようなワンピースを着ている。


「ああ、オリティア。どうした?」


「ちょっとね。涼みに。」


「そっちの部屋暑いの?」


「うん。ちょっと。」


 俺はそのままベッドに、彼女はテーブルの横の椅子に座った。


「あの……さ。この世界に来たとき、どんな気持ちだった?」


「どんな? そうだなぁ。すべてが夢の中だと思ったよ。」


 今もだけど。


「夢ね……やっぱり親しい人に会えなくなって、寂しかった?」


「そりゃな。いきなり遠い地に降り立って、何もわからず誰にも相談できず。

でもそれよりも、連絡出来ない事で親に心配されてるかも、って申し訳なさが大きいかな。」


「そうなんだ。……私もね、小さいときに母親を亡くしたんだ。」


 さっき言ってたな。

 それで俺が親に会えないのを自分に重ねたわけか。

 母親がいなくなって、厳しい父親だけが残ったと。

 母親はどんな人だったのかな。


「…………ハグならしていいよ。」



???



「ちょーーーーーっとまって!

今の会話の流れにどこにハグ要素があった!?

今のは確実にお母さんとの思い出話をする流れだったでしょ!?

シリアスをぶった切るのが炎の巫女の能力なの!?」


「だ、だってそんな話しされても、お互い悲しくなるだけでしょ!?

泣くよ? 私、泣く自信あるけどいいの!?」


「そうだね! 俺ももらい泣きする自信あるよ!」


「でしょう~? で、教えてくれたら何でもするって約束だったじゃない。

さすがに胸を揉ませるのは無理だけど、ハグならいいかなーって。……私じゃ嫌?」


「んなわけないでしょう!!

まあそうか、そうだね、じゃあ約束だし遠慮なくいかせてもらうよ?」


「さあ! お母さんだと思っておいで! なんちゃって。」


 オリティアがベッドの俺の横に来てくれる。

 おいおいなんだこのご褒美タイムは。

 異世界で頑張ってきた俺に対するボーナスか?

 女の子、しかも気心の知れた(黙ってれば)カワイイ子とハグなんてしたことねえよ!

 しかもこいつ、わりと胸がある。

 ここはいっそ……


「えい!」



ポワン



 顔から胸に飛び込む。


「おっと……あれ? 私がイメージしてたのと違う。」


 オリティアが戸惑っているが、これだって「ハグ」だよ。打点の低い。

 ハグしていいって言ったのはそっちじゃない。


 おお! 柔らかい! この感触ッ!!

 集中だ! 全神経を顔に集中させて、完・全・記・憶!

 しばらくこれでいける!(?)

 怒られるかな……?


「もう、まったく~。」


 いける!

 しかし真ん中に飛び込むと、左右を楽しめるが弾力をそこまで堪能できない!

 右だ! 右乳に集中してみよう!!



スス……プニプニ……



 これは……首が押し返される!

 なんというちょうどいい柔らかさ!

 ちょっと顔でグリグリしてみよう……


「んんっちょっと!」


 いい反応が……ん!?

 この違和感……。

 まさかと思い、顔を離した。


「……もしかして、ブラつけてない?」


「え? ブラってなに?」



!!!



 そこからか!!


「えっと、下着の一種で、こう……両チチを固定するのに使うやつ?」


「うーん、水着みたいな?」


「そうそう! 水着はこの世界あるのか。服の下にブラをつける習慣無いの?」


「え、あんなの中に着たらゴワゴワするでしょ。服が胸にフィットするから、走るとき痛くないし。」


「ふ……フィット!?」


「うん。魔法でキュっと。」


 ん?

 俺とオルモア、オリティアが着てるワンピース、それぞれ形が違うと思っていたが。

 胸の構造が違うからそう思ったのか!

 胸の形にフィットしてる……?



!!!!!



 そうか!

 これが『乳袋』の正体かッ!!

 長年、俺が抱えてたエロゲの謎が解明された!!

 「服全体」で「支えてた」のか!!


「あ、そうだったの!! 魔法って便利だね! でも乳首が浮き出たり……」


「しないわ! そんな露出狂いないって! 薄くて形整えてくれるパッドが入ってるの!」


「どれどれ」



モミモミ



 どさくさに紛れて普通に揉む。

 確かに。

 この心地よい弾力性の一歩手前に、服とは違う一枚、何か入ってる。

 この薄いのがパッドか。

 じゃあパッドと一体になり、この温かいハリの良さを全神経で感じると……

 つまりパッド越しに生乳を触っているようなもんだな!


「……おい。そこまでやっていいって言ってないぞ。」


「ああ、ごめんww」


 といいつつもうちょい触る。



ビクッ!



 指がどこかに引っかかったみたい。


「ちょ……っと!!」


「おっと! ごめんごめんwww」


「お熱いところ悪いんだけどぉ。」


「「わああああ!!!」」


 二人共びっくりして、バンザイの状態でのけぞった。


「博士!?」


「いつからそこに!?」


 扉の方を見ると、ヴェアロックが覗いていた。


「さっき! りっくんと一緒に寝ようと思ったのに先越されたぁ~。」


「違う……違います!! ちょっと話をしていただけで!!」


「そうだったかなぁ~。」


「……っていうかリクシン!? 魔女様と一緒に寝てるの!?」


「違う違う!! ……くないけど!

俺に勇者様の面影を感じて、隣で勝手に寝てることがあるんだよ! 何もしてない(?)!」


「じゃあ~、オリちゃんと寝ましょう~」


「はあ!? 私!? え、……………ちょっ全裸!! この人全裸なんだけど!!

リクシン!! 助けてリクシーーン!!」


「達者でな~。」


 魔女は巫女の子孫をつれていってしまった。

 ふう。

 一人になった。

 いやー、賑やかな家だ。

 しかしこんなに女性に囲まれることなんて生まれてこの方無かったよ。


 家族に会いたいかと言われると、実はそこまで家族大好きってわけじゃない。

 寂しいけどね。

 でも今なら産んでくれた両親に全力で感謝できそう。

 パパン、ママン、ありがとう。

 息子は遠い地で元気にやってるよ。

 ……息子は元気だよ。


 ―――なんて。

 この世界で"こっち方面"でハマってしまうと抜けれなくなる。

 元の世界に戻りたくなくなってしまう。

 気をしっかり持とう。

 俺は自分の世界に帰るんだ。


 はあ……しかし寝れるかなこれ。

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