8-2 情報系大学の知恵


 後日。

 俺の部屋に『ミーム』が届く。

 石版は重たいし、PCラックみたいな机も買ったから配送&設置をお願いした。

 パソコンだったら自分で初期設定するんだけどな。

 なにせ今回はお金使い放題。全ては『赤石』捜索活動経費として処理されます。


 その日の夜、早速彼女たちが見に来た。


「これが『ミーム』ですか?」


「男ってこういうの好きそうね。いくらしたのこれ。」


「……新聞部室にあるのより高級……!」


 男はこういうの好きよ。

 新しく買ったバイクとか見せたい派だ。


「おうおう! これで情報は俺の手の中だ! 何だって調べられる気がするぜ!

まずこれを見てくれ。」


 端末の前の椅子に座り、俺は慣れた手つきで画面にタッチする。

 彼女たちが集まる。

 そんな画面に近づかなくてもってくらい近い。別にいいけど。

 オリティアに至っては俺の真後ろ、俺の頭にアゴを乗せてやがる。

 無視してタッチで画面を切り替えていく。


「これは『クエストボード』の電子……じゃなかった『ミーム版』だ。

この国に現れたモンスターの情報が載ってる。」


「へー、こんなにいるんだ。魔界と切り離されてもモンスターって湧くのね。」


「これはモンスターに遭遇した人が誰でも書き込めるようになってる。

だから国が出してるやつと違って、正式な情報ではないかもしれない。」


「そういうものがあるんですね。」


「そう。嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しいんだ。

ただ、問題はそこじゃない。ここだ。」


 俺はクエストボードサイトの一部分に着目した。

 「強制デュエルアイテムの存在」のページだ。


「……あ、これって……。」


「そう。ここはモンスター情報じゃないけど、モンスター被害の疑いがあるものも挙げられてるんだ。」


「なんて書いてあったんですか!?」


 サイトにアクセスした。

 基本的には被害報告、俺とクラウが出くわしたような報告がされていた。

 これに関して警察も動いており、アイテムは捜索中だとのこと。

 ただ、有名スポーツチームのケースが使われているため、まだ公表されないらしい。


「やっぱり話題になってるのね。」


「まあこれだけ噂になってたらなるでしょ。」


「あんな体験をした人が他にもいるなんて、許せませんね。」


「……ここ、これは?」


 タタミが指差したところを見る。


「へぇ、隣駅付近のナイトクラブねぇ。」


「……ここが怪しいって。」 


「あそこ飲み屋多いから、そんな噂も立つわよね。」


 とりあえず、今回得た情報はここまで。

 しかしこれで俺も情報を得る手段を手に入れた。

 今後はこの掲示板や、他に情報サイトがないか探っていく。


「これって写真も見れるの?」


「うん、見れるよ。これとか。」


 画面を切り替え、画像検索。

 この端末、文字入力方式は『念入力』。

 入力装置に手を置いて念じると文章が入力される。便利。


「うわあワンコだ! かわいい!」


「これはコボルトの子供の写真ですか?」


 犬型の獣人モンスター「コボルト」。

 その子供の写真を表示させた。


「わあこれもこれも、くっそかわいい!!」


 オリティアが画面に近づき、前にいる俺にギュッと寄りかかる。

 胸は腕でガードされているが、密着度が。


「……オリティアさん……犬が好きだったの。」


「私は猫派です。」


 何故かクラウが答える。

 そういやライオンっぽいユニット使ってたな。


「ねえこれってさ、エロい画像も検索できるの?」


「ちょっとオリちゃん、何言ってるの!?」


「あー、出来るよ。」


 すみません、一回検索済みです。

 だって異世界のエロサイトとか絶対興味あるだろう男性諸君!


「ちょっとリク君! ……え、すごい。」


 画面には女性のヌード画像。

 この世界の女性は本当にレベルが高く、俺からしたら綺麗すぎて使えない。


「ほんとだ、すごいね大股開きだよ。」


「……結構鮮明に表示されるね。」


 冷静に見るオリティアとタタミ。

 食い入る様に見るクラウ。


「すごいです……あれ、ここに動画ってありますけどもしかして?」


「ああ、動画も見れるね。こんなイメージ映像じゃなくてすげーのあるから。」


「あんたそれを目的に『ミーム』買ったんじゃないでしょうね。」


「……どうりで部屋がイカ臭いと思った……。」


「違えよwww ほら、この動画すごくない?」


 そこにはイケメンと美女の絡みが。

 しかもノーモザイク。

 俺は所属している情報系大学の知識をフルに発揮し、全力で無修正サイトを探し当てた。


 全員黙ってしまった。

 初AVを鑑賞する子供かよ。


「……男の筋肉がすごいね。」


「この女性の動き、特殊な訓練を受けてるんでしょうか。」


「訓練って、慣れれば出来るんじゃないの?」


「……ある程度筋力が無いと……」



ビクッ!



「あ痛っ!!」


 オリティアがアゴをぶつけた。

 筋力が無いと、と俺の脇腹をつねるタタミ。

 脇腹をくすぐられるのが苦手な俺、上に逃げてしまう。

 そしたら頭上のオリティアの顎にぶつかった、というピタゴラスイッチだった。


「あ、ごめん! ちょっとタタミん何するの!」


「……思った以上に反応が良かった。」


「リークーシン!!」


 オリティアが俺の脇腹をくすぐる。


「あははははwww やめてwww」


「うるさい痛かった!」


「タタミんだよ悪いのはwww」


 俺はベッドの方まで逃げる。


「……ウチはちょっと触っただけ。」


 といいつつタタミも面白がってくすぐってくる。

 助けを求めようとクラウを見たが、エロ動画に夢中だ。


「おらおら、ごめんなさいは?」


「すみませんごめんなさい、って何で俺が謝るの!?」


「……えい。」


「あっ、謝ったでしょ! あっ、お腹つつくのやめて! あっ、つーかタタミん加害者でしょ!」


「あら、音楽も聴けるんですか? これ。」


「えー、何? 音楽?」


 クラウが音楽配信サイトを見つけたようだ。

 オリティアも興味があるのか、端末の前に行く。


「はぁ、はぁ、何で俺がこんな目に。」


「……反撃しないね。」


「女の子には手を出すなってばっちゃが言ってたオゥフ!」


「……そう。」


 そう言ってタタミはくすぐりの手を止めない。

 何だこの子、実はSっ気があるのか?


「まてまてwww どういう流れこれwww」


 お腹を重点的に責められる。

 しかし手が滑ったようで、間違って変なところを握られた。



ギュウッ



 下腹部まで伸びてる固いもの。

 タタミが手を離した。


「固っ……え? 何で。」


「いやだってほら、今見てたし、くすぐられてその……生理反応っていうか!」


 まずい、ドン引きされる。

 だって状況的に反応しちゃうのはしょうがないでしょ。


「……そっか。」



ギュウッ



「はい?」



コスコスコス……



「ちょ! あっまって、あっ、ちょっ!」


「……あはは。……あ、ウチもその曲知ってるー。」


 タタミも端末の前に行った。

 何なんだよ今のイタズラは。

 反応に困るよ。いや、反応が収まらないよ。

 俺はベッドの上でしばらく、死んだ魚の目をして横になっていた。

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