10-4 プチ飲み会


 今日はいつもの部屋じゃない。

 俺が博士の家でいつも泊まるのは三階の部屋。

 今いるここは二階のすこし広い部屋。

 ベッドが二個並び、真ん中にテーブルが有る。

 この家、二人しか住んでないのにベッドが多いな。

 配置的にも低価格ホテルのツインベッド洋室みたいだし、元は宿屋だったのか?


「はー、いいお風呂でした。」


「……見晴らしもいいし、人気スポットになれる器はある……。」


「ここまで来れる人なんていないわよ。あ、リクシンお待たせ。」


 三人娘がやってきた。

 みんなグレーの簡易的なワンピースを着ている。

 相変わらずオリティアの髪が降りてて誰かわからんが、タタミもポニテを崩して肩まで髪があり新鮮。

 風呂上がり、いい。


 今日は寝る前に、この部屋でプチ飲み会をすることになった。

 地下室に眠っているのはVLDカードだけではなかった。

 ヴィンテージ物のワイン――ディオニューのお酒が大量に眠っていた。

 博士は飲まないらしいのでちょっといただくことに。


「ところでみんな、明日の講義は?」


「……一回くらい出なくても。」


「そうですね。」


「私は休講よ。リクシンは?」


「俺は自主休講だ。」


 みんな悪いやつだ。

 まあ、大学生あるあるだよ。

 今日は重大な発表があったししょうがない。


 小さなコップでお酒を分け合い、乾杯した。


「あんまり飲みすぎるなよ。特にオリティア。」


「わ、わかってるわよ。」


 開けたお酒は一瓶だけなので、皆で分けたら酔える量じゃないと思うが。


「さあ、では俺の世界で流行ってるカードゲームを紹介しよう。」


「え、りっくんの世界もカードでデュエルするんですか?」


「いやいや、ただの紙切れだよ。でも俺が紹介するのは最近、ある意味世界の注目を集めた!」


「……うん。」


「トランプだ。」


 俺は54枚のカードの束を机に置いた。

 倉庫にはVLDのカードになる前の札、呪文が記入されていないカードが大量にあった。

 それで思いついた。

 この"プロキシカード"(白紙のカード)に数字とマークを記入し、即席でトランプを作ってみようと。


「トランプ? どうやって遊ぶの?」


「大富豪、ポーカー……色々遊び方はあるんだけど――」


 トランプについて説明した。

 とは言っても俺もそこまでルールに詳しくないので、今回は簡単な「ババ抜き」をすることにした。


「ババ抜き……すごい名前ですね。」


「そう言われたらそうだな。気にしたことないわ。」


「この配られたカードで戦うの?」


 カード=戦うってのがすごい考えだな。

 戦いってよりはゲームとして楽しんでもらいたい。

 俺はルールを説明しながら手札を配り、同じ数字を捨ててもらって準備完了。


「じゃあ始めるぞ。デュエル!」


「どのへんがデュエルなのよ。」


 彼女たちが一枚ずつ引いていく。

 何気ないババ抜きも、久々にやると面白い。


「ああっ。」


「おいおいクラウ、ポーカーフェイスっていうのがあってだな。

どんな状態でも表情に出さないってのが良いとされてるんだ。」


「え? ポーカーフェイスは知ってるよ。」


「ええ!? ポーカーは知ってるの?」


「いえ、ポーカーフェイスっていう言葉です。トランプと関係あるのでしょうか?」


 オリティアもクラウもその言葉として覚えてるようだ。

 本当、この世界の言葉はわけがわからない。


「……こっちだ。……あ、上がった。」


「はい、リクシンの負け~。自分で教えといて負けるとか。」


「だってほぼ運だよ! あーくそ、もう一回!」


「あ、じゃあ何か賭けましょうよ!」


 何でもかんでも賭けようとするなこの世界の住人は。

 蛭子さんか。


「いやいや賭博行為は良くないよ~。負けたら乳を揉まれるくらいならいいけど。」


「……はぁ?」


 タタミの声がこれ以上無いくらい低かった。


「ああ、ごめんなさいタタミん。」


「わかったわ、負けたら乳を揉ませればいいのね。クラウの。」


「私の! え、負けとか関係ないですよねそれ!」


 クラウの、か。

 みんないつものグレーワンピースを着ているが、クラウだけ乳袋がエグイ。

 重ね着してないからモロに形が出てる。

 タタミがずっと舌打ちをしてるのもわかる。


「こっち?」


「ちがう。」


「じゃあこっち?」


「ちがう。」


「なわけ無いでしょ! どっちかがババでしょ!」


 言えるわけ無いだろ。

 最後に俺とオリティアが残った。

 さすがに連続で負けるのは勘弁。


「えい! やった、あがり~」


「うっそ! え、マジか連続で負けた。」


「……りっくん、弱い。」


「だからほぼ運だからこれ!」


「じゃあ罰ゲームね。えい!」



むにゅっ



 オリティアがクラウの乳を鷲掴みにした。

 形が大きく崩れる。


「あっ、ちょっとオリちゃん!」


「お前が揉むのか! 自由すぎるわ!」


「はっ! 餅……モチだ! 何だこの柔らかさは!」


 容赦なくモミモミするオリティア。

 感想を聞いてみる。


「魔女様と比べてどうよ?」


「魔女さまは水。中に水が詰まってるようなプルプル触感。生き物。

これはモチモチ。赤ちゃんのほっぺのような心地よい弾力性。」


「へぇ、さすが乳ソムリエだな。どれどれー」


 俺も手を近づけ、触るふりをする。

 ……抵抗してこない。


「……え、いいの? 拒否しないなら触っちゃうよ?」


「いいわよ、ほら触ってみてよ!」


「何でオリちゃんが許可出すんですか! んんっ……」



もにゅもにゅ



 オリティアに腕を掴まれ揉まされた。

 ……柔らか!

 モチって言ってたのがわかる。

 手に吸い付くような柔らかさ。

 巨大な塊が揉むことで形が変わり、手を離すと元に戻る。

 少し弾ませてみると、手にずっしりと重みが返ってくる。肩こり大変そう。

 揉んでるだけで癒される。俺はここに住みたい。


「……ウチも触る。」


「タタミちゃんまで! じゃあ仕返しにえい!」


 クラウがオリティアのを揉む。

 オリティアは動じない。


「私は別に揉まれてもいいし。減るもんじゃないしね。」


「オリちゃんも充分やわらかいじゃないですか。私と同じ。」


「いやー、オリティアはまた違うんじゃないかな。」



モミッ



 片手でクラウ、片手でオリティアの乳を揉む。

 どさくさでやってみたが怒られなかった。


「りりりりっくん!」


「ああ、別にいいわよこんなカスに揉まれたとこで何も思わないから。」


「カスってなんだよ。」


 オリティアから手を離す。

 オリティアは前にも揉んだことがある。

 弾力性があり、元気があるように感じる。

 クラウまでは行かないがかなり大きめで、手には全然収まらない。


「今比べたでしょ。大きさ。」


「え? いやいやそんなこと無いよ。」


 俺はクラウからも手を離した。


「いいよ、どうせクラウのほうが大きいよ!

小さいときからそうよね。私も同じくらいになるかと思ったのに!」


 オリティアはまたクラウの両乳を揉みしだく。


「どうせお菓子が詰まってるんでしょ! この! この!」


「やめてぇ~」


「……やめてあげてよ、泣いてる子もいるんだよ……。」


 はっ!

 タタミを見ると、この世の全てを恨んでいるような顔になってる。


「ほら、タタミんだってちょっとは……ねぇ。」


「まだ成長期なんですよきっと。」


 こいつらが言っても傷を抉るだけというのを分かってないらしい。


「……じゃあ触ってみなよほら……。」


 タタミがオリティアの手を掴み、自分の胸に引き寄せた。


「これは……これは、え? 乳が浮いた!?」


「なんだよそれ。」


「何か、胸に空洞が。」


 ああ、こいつまたブラを着けてるのか。

 ブラの形に沿って乳袋が形成されてるけど、実際の乳はその奥にあるってわけね。


「空洞ってオリちゃん、ひどいこと言わないで……ほんとだ。」


 タタミはクラウの手も引っ張り、片乳を触らせた。


「……わかったか。……ほらりっくんもこの惨状を理解してよ!」


 俺も手をぐいっと寄せられ、触らされた。


「乳が……浮いた!?」


 実際に中を見たことがあるが、ここまでとは思わなかった。

 ブラはその役目を果たしておらず、寄せて上げることすら放棄している。

 そのため揉もうと思ってもブラだけを掴んでしまう。

 乳だと思っていた形状のものが浮き上がり、俺は乳の幻を見ていたんだと驚愕する。


「……オリちゃんまって……その揉み方は感じるやつ。」


「ええ、ごめん!」


「どんな揉み方してるんだよ! 感度は良いんだな。」


「……おう。敏感さなら負けない……。」


「何の戦いだよ。」



 そんなこんなでお酒も尽き、俺らは自然と同じ部屋で寝てしまった。

 タタミとオリティア、俺とクラウが同じベッド。

 元の世界では雑魚寝なんて日常茶飯事だったけど、女の子と一緒は初めて。

 しかし今日は講義・山登り・経緯の説明・お酒。

 忙しかったので眠い俺は、女の子と同じベッドで寝ることに下心が沸いてこなかった。

 三階のいつもの部屋に戻る気力が無く、ありがたいとしか思わなかった。


 やっと包み隠さず全てを語れる友達ができた。

 オリティアのお父さんはいつ来るかわからないし、それまで思い出が作れるだろうか。



◆◆◆



「まじかよあいつ!」


 次の日、ちょっと遅く起きて身支度をしていた俺・クラウ・タタミ。

 ……オリティアがいない。

 ちょっと長めのウンコでもしてるのかと思っていたが、違った。


「オリちゃん、一人で出ていったんですか!?」


「……まさか……お父さんが今日この街に帰ってきたとか……!」


 タタミの予想は当たっていた。

 オリティアは博士に事情を伝え、新しく出来たマジックアイテムを持って山を降りたらしい。


「何で教えてくれなかったんだよ! 博士!」


「あの子がそれを望んでたのよぉ。炎の巫女にはお世話になってたしねぇ。」


「何だよそれ! クソッ!」


 俺らは準備を急いで済ませ、山を降りた。

 目的地は隣街の駅前にある大きな建物、「BSUカンパニー支社」。

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