第43話 大統領と会談 アリスのターン その1


 応接室で休憩していたらお昼時間になり、シュミットがお昼を誘いに部屋に入ってきて。


「レディーたち、お昼だけど食事行かない?」


 おおー、ホワイトハウスのランチ、期待が膨らむ。

 ニコニコしながら返事をする。


「はい、お願いします」


 シュミットと一緒にホワイトハウス内のレストランに来る。すれ違う人が私達を見て、驚きと注目の的になる。声をかける人がいたがシュミットが防御していた。


 レストランに入ったが、一斉に注目され困り、個室に入った。メニューはハンバーグセットやサンドイッチ、バーガーセット、ステーキまで有る。さすがアメリカ連合。ハンバーグセットを2つ頼んだ。

 シュミットはサンドイッチセット、食欲が無いのかもしれない。

 少し疲れた感じでシュミットが私を見て話す。


「すれ違った皆は、会談を知らないから気楽に対応しているが。会談のメンバーは今大変ですよ。お嬢さん達」


「そうだと思います」と答えた。


「想像していた範囲を超えた内容だった。アリスは知ってたの?」


「聞いてます。最初リリスと話した時は驚愕の連続です。

 はじめはリリスを危ない人と思いましたよ。

 もうね、「なにこの危ない人!」 とね」


 リリスを見て話したが、リリスは無表情だった。


「その後どうしたの?」


「次々と信じられないものを見て、信用するしか無かった。それに、リリスは嘘をつかなかった。信用するしか無いです」


「なるほどね、アリスも原爆が爆発したら死なないの?」


 きたきたーーーー、アプローチきたーーーー。

 心の中で叫んだ。

 たしかに、リリスよりは私の方が簡単そう。

 なんか楽しい、笑ってはいけないが面白い。


「リリスが守ってくれるから死なないです」


「そうなの! 凄いなーー、捕獲作戦の時アリスが一人で成層圏にいたけど飛べるの?」


「飛べますよ、下手だけど」


「バリアも?」


「できる、だから襲わないでね、怖ーーいリリスがやって来ますよ」


「それは怖い、真面目に怖い」


 驚いた表情で私を見ている。きっとリリスが般若の面で周りを潰しながら歩いてくるシーンを想像しているのかも。

 ランチが届いたので食べ始める。流石にここのは美味しい。

 ホワイトハウス侮れない。


「君たちの宇宙船を一目見てみたい、興味でね」


 私はリリスの方を見て。


「リリス、あのときの画像チラリ見せるのは問題有る?」


「チラ見せなら問題ない」


 そう言って、ポーチからスマホを出して。シュミットに見えるようにする。


「今から10秒だけ、宇宙船の画像を見せる。記録は駄目」


 リリスがスマホを操作する。

 シュミットは食い入るようにスクリーンを見る。

 そして、私が見た第一級調査船の全景3D画像がスマホの平面スクリーンに映し出される。

 あの画像は私の驚愕の記憶、それを小さなスクリーンで見つめていて、一言も話さずに見る。そして10秒が終わる。

 シュミットがリリスの顔を呆れ顔で見て。


「あの、むちゃくちゃデカイんだけど?」


「そう、大きい」


「SF映画スター○オーズのデ○スターに見えた。ほんとにこれ?」


「実物」


 シュミットは何処か遠くを見て。


「CG映像って言われても信じる。実感がわかない……」


 手が止まって、何かブツブツ言い始めたので、私たちは美味しくランチを食べ始めた。

 お昼ごはんが終わり、私たちは応接室に戻る。


………………


 しばらくしてシュミットがやって来て。


「あの、リリス、あの映像皆に見せられる? 録画しないから」


 録画しないはきっと嘘、リリスはどうするのだろう?


「もし誰かが録画したらアメリカ合衆国は私の信頼を裏切ったでいいのか? その場合当然の報いを受ける」


 シュミットは返す言葉がなかった。

 そう、これは私が引き起こしたこと。少し見せればもっと見たい。そしてもっと、際限がない。何処かで線を引かなくてはいけない。

 リリスがした政治的武力行使、あれは線引きだ。外部の者にでる威圧も線引きだ。アイザックにも引いた。大将の暴走にも線を引いた。これ以上は駄目ですよと。

 私は線が引けなかった。自覚してしまった。


『リリスごめん』


『気にしなくていい、私は高度な政治ができる機能を持っている。アリスのホローは私がする。気にしないでアリスはアリスの思うままにすればいい』


「シュミット聞いてほしい」とリリスはシュミットに願う。


「なんでしょう?」


「アリスは貴方を友人として見ている。そして友人の願いは叶えたいと思っている。だから友人として見せた。貴方がそれを仕事にした、貴方が何をしようと貴方の自由だ。しかしアリスは困って私に誤ってきた」


 そしてリリスは提案する。


「アリスはアメリカ連合に友人を作りに来た。その思いを受け止めてほしい。今回は私が駄目だと言ったことにしませんか?」


 シュミットは少し逡巡したが。


「分かりました、そうしましょう。アリスごめん」


「いえ、大丈夫です」私はニッコリ微笑んだ。


「シュミット焦らなくても、繋がっていればどんどん情報は出ていく。ゆっくり友人関係を作りませんか?」


 リリスの提案にシュミットの気分も晴れたようだ。


「そうしましょう。では会議室に行きましょう」


 会談室に歩き出したが、リリスから仮想会話が来た。


『アリス、申し訳ない、難破中とライ連が別銀河だけは話さないようにお願い。アリスの進む道に大きな障害になるから』


『了解しました。他にもできる限り秘密にする。なんでもいいとは言われたけど。まだ責任が取れると思えないから、リリスに相談するね』


『ありがとうアリス、そう言ってもらえると嬉しい』


『リリスに喜んでもらえるなんて、私も嬉しい』


 会談室に着き大統領の向かいの席に座り、シュミットが司会をする。


「午後からの会談を始めます。まず初めにアリスの道についてお聞かせください」


 きたーーーー、ここからは私のターン!

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