第24話 児童相談所


 公園を出た私は、派出所の場所がわからないことに気がつく。

 また探すのか…… 仕方が無い。


「リリス、派出所探すよ」


「了解」


 派出所を探すために歩き始めた。

 人の多い所に有るに違いない、大道りを見つけて、建物の多い方に歩く。

 歩く、歩く、ウロウロ歩く、無かった。

 1時間ほど歩いて、探すのを諦めた。

 そう、人に聞こう! それがいい。

 近くに、学生風の若い男性が居た、よし聞こう。


「あのーー、すみません」


 若い男は立ち止まり、振り向く。


「えっ ひょっとして俺?」


「はい、道を教えてほしいのですが」


「オッケーー、まかしな」


 と言って嬉しそうに、ポケットから厚さ5ミリで手の平に入る大きさの板を出した。

 2つに折っているそれを広げると、表面が明るくなりスクリーンになった。そして壁紙とアイコンが並んでいた。

 おお、若者はこれか! オバちゃんより進んでいる。


「で、何処を探してる?」


「近くに常駐している、派出所は有りませんか?」


「オッケーー、今探す」


 そう言って地図アプリを立ち上げ、板に向って派出所と言う。

 地図上にポイントが表示され、数が出ていた。


「うーーん、今ここに二人居る、そこが良いかな。今の場所はこの三角のマーク」


 と言って板を指差して見せる。

 この数は人数なのか。


「リリス覚えた?」


「覚えた」


 さすがリリス、若者も驚いていた。


「えっ、もう覚えたの? 結構遠くだけど」


「問題ない」


 とリリスが答える、若者は少し残念そうだった。

 きっと、案内をしたかったのだろうか?

 でも、案内は困る。迷子の孤児予定だから。

 そう思ったら、思わず悪のアリス爆誕! と考えてしまった。

 ふふふ、私は悪に生きるのだよ悪に、と某セリフが出る。


「お兄さん、ありがとうございます。覚えたので行きますね」


 と言ってお辞儀をする。リリスもしていた。


「そうか、気をつけるんだぞ、何か有ったらまた言ってくれ」


 二人は手を振って別れた。

 若者が残念そうに見送っていた。



★★★★★


 しばらく歩いて派出所に着く、外見は昔と変わらないが昔より綺麗になっている。中に二人の警官が居た。

 よし、今からが本番だ!


「リリス準備は良い?」


「いい」


 アリスを先頭に派出所に歩いていく、そして中に入りながら。


「すみませーーん」


 と声をかける。20代ぐらいの若い警官が机から立って近づいてきた。


「どうしたんだい?」


 と優しそうな声を掛けてきた。


「私達、知らない公園で目が覚めて、お母さん探しても居なくて、ここが何処かも分からないんです。あちこち探してたんだけど、分からくてお腹も空いてきたので、警察に来ました」


 優しそうな顔から、少し心配そうな少し困ったような顔になり。


「わかった、まずはこちらに座って」


 と言って二人は机の前の椅子に座る。

 若い警官は壮年の警官に話す。


「先輩、迷子みたいです」


「そうか、まずは分かる範囲で調書を取り、その後本署に連絡だな」


「了解」


 若い警官は机に座り、引き出しから書類を出して下記ながら質問をしてきた。


「名前は?」


「森田アリス、こちらが森田リリス、双子です」


「年齢は?」


「10歳」


「お母さんの名前は?」


「森田桜子」


「お父さんは?」


「分からないです」


「住んでた住所か電話番号が分かる?」


「それが…… 分からないんです」


「君も?」


 と、リリスに向いて聞く。


「分からない」


 無表情に答えるリリス、リリスに演技は無理だった。


「何か、分かりそうなもの持ってない? 名前や住所や連絡先が書いてあるもの」


 二人は、服のポケットを探し出す。

 もちろん、何も出てこない。


「そうか」


 質問が終わったようで、その他の私達の特徴を書き始めた。

 終わると先輩に調書を見せながら話す。


「先輩、調書です。分からないことが多いですね」


 先輩は調書を見ながら。


「そうか、わからないことが多すぎるな。どうするか……」


 しばらく思案した後。


「ここで考えても仕方が無い、青少年課に連絡してみる」


 と言って携帯を取り出し、連額を始めた。


「もしもし、XXX派出所の城木です。状況不明が多い10歳の迷子の少女が2名が来てます。どのように対処しますか?」


「はい…………、はい…………、分かりました、そうします」


 若い警官に向って。


「本署の方で引き継ぐことになった、迎えが来るのでそれまで現状保持。調書を再確認しろ」


「了解」


 若い警官は私たちに、


「ちょっと待っててな、いま本署から迎えが来る。そちらでもっと優しく対応できると思う。私たちはここを動けないから」


 そう言って、冷たいお茶を湯呑みで2つ出してきた。

 そして、机に座り調書の確認を始める。

 周りを見ると、先輩警官が何かを忙しく書いていた。壁には地図やポスターや標語が貼ってあり、ホワイトボードには予定が書かれていた。


 10分ほどで普通の車がやって来た。中から2名の女性警官がカバンを持って出てくる。制服は事務服のようだった。

 先輩警官と若い警官が立ち上がり出迎えた。

 調書を渡し少し立ち話をして、私達の方にやって来る。

 リリスと私で同時に振り向いて女性警官を見る。

 女性警官は急に固まった。

 これは外見ですね、こうも繰り返すと慣れました。

 動き出した女性警官が私のそばまで来て、腰を落として話しかける。


「迷子ちゃんね、本署に行って対応するから、車に乗ってくれるかな?」


「はい……」


 私は不安そうな顔をしながら返事をする。

 リリスは無表情無言だった。ブレないリリス。


 女性警官に案内され、後ろの席に私、次にリリスそして女性警官が並び3人掛けだった。前に運転する女性警官が乗った。

 前を見ると無線機やカーナビの様な物が並んでいた。

 たまに何か数値記号を言う声が無線機から聞こえる。

 普通の外見の車は、覆面パトカーだった。


 しばらく走っていると、大きな駐車場が有る大きいビルに着く。

 車を降りてビルの中を案内される、すれ違う警官が私達を見ては驚いていた。

 小さな部屋に案内されて机の片側に私達、向かいに女性警官が座る。そして調書を見ながら同じ質問と回答を繰り返した。

 女性警官がカバンから、A4サイズ板のパソコン? と筆箱を少し長くした何かの装置を出した。パソコンの電源を入れ、調書を装置に挟み自動で動く。スキャナーのようだった。

 スクリーンには今入れた調書が出ていた。

 私たちに見えないようにパソコンを立て何かしていた。

 そして、隣の女性と話す。


「この子達の情報無いわよ」


「えっ、日本人じゃないの?」


「入国管理も調べてみる………… 無いわね」


「不法入国者の子供?」


「そうかも、これは簡単に解決できないわね」


「持ち物調べてみるか」


 そう言ってこちらを見る。


「お嬢ちゃん、ちょっと服とかみていい?」


「どうぞ」


「ちょっと立ってもらえるかな?」


 そう言われて二人は机の横に立つ。

 二人の女性警官は、二人のポケットや服や靴を細かく調べる。

 一人がつぶやく。


「くっ、なにこのチチ、こんな少女で許せん」


 隣の女性警官が発言者を睨む。

 睨まれた女性警官は横を向いて調べ始めた。


「持ち物なし、着ている物は総て日本製ね」


「こちらも同じ、それに総て新品みたいにキレイ」


 ぎく、新品だったーー、と心で思う。


「困ったな、持ち物からは何も分からない」


 女性警官が考え始める。そして、


「ここで考えても駄目か、上司に報告してくる。貴方はここで待ってて、譲ちゃん達も待っててね」


 と隣の女性警官と私達に言い部屋を出て行く。

 周りをみてみると、壁は乳白色で何もない。机はねずみ色の事務机。取調室そのものの雰囲気が有る。

 これで、デスクライトとカツ丼があればパーフェクト!

 泣いて総てを白状…… しません。

 などと、いろいろ考えていたら、女性警官が戻ってきた。

 そして、隣の女性警官に。


「保護するのは変わらないけど、引き続き調査することになった。保護は児童相談課に移ることになる。それまで待機」


「了解」


「お嬢ちゃん達も、ここで待つ事になるけど良いかな?」


「いいけど……朝から何も食べて無くてお腹すいた……」


「そうか、もうすぐお昼だし、お昼にパンかサンドイッチ持ってくる。それまでジュースでも飲んでて、持ってくる」


 そう言って女性警官は又出ていった。

 しばらく待って、いちごオーレのパックを2つ持って戻ってきて渡す。

 私の目がいちごオーレをキラキラした目で見た。本物だ!

 二人で安っぽいけど本物のいちごオーレを美味しく飲んだ。

 一人の女性警官が残っていた。


 しばらくして、お昼になり、女性警官がサンドイッチとジュースを持ってきた。サンドイッチを食べたあと、リリスと仮想パソコンでゲームを楽しんだ。会話はもちろん仮想会話。

 向かいに居た女性警官は、じっと動かず、たまに目線を合わせて私が笑ったりする二人をみて、不思議がっていた。

 午後の3時頃、二人の女性職員が来て児童相談所にいくことになった。


 第一段階、警察の書類に迷子で保護したことが乗った。そして児童相談所に保護してもらう。目標クリア!

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