第5話 ライ連 局長の代理で
★★★★★ ライ連 連合宇宙軍 安全保障局 (三人称)
ここはティア星系にある、ライトリング銀河連合の連合宇宙軍本部がある直径30キロの人工惑星アイリッシュ。
連合宇宙軍の一つ、安全保障局はライ連以外からの危険を事前に察知するため、ライ連領域の外を探査する数千万隻の探査ロボット船を持ち、知的生命体・大規模生命体・未知のテクノロジー・その他の未知、解析不能現象を探査している。
発見された場合、高度な政治能力と強力な武力を持った調査船が派遣される。そして敵性知的生命体や敵性生命体と判断された場合、その種族を絶滅する権限と能力を持つ。
宇宙は未知・未調査の領域が広すぎて大きすぎる、生命の基本原理である生存権をかけた戦いが宇宙にある。
ライ連は宇宙規模で見ると、小さな集団でしか無い。
★★★★★ 安全保障局 局長室
コン、コン、
まるでドアを叩いたような音が室内音響システムから響く。
何千周期へた今でもドアを叩いたような入室許可願いの音は変わらない。
重そうなドアには、外に立っている調査船統括部部長の姿が、まるで透明ガラスが有るように映っている。
室内にいるのは安全保障局局長ジーリアクリフ、外見は人類と同じ姿だが、耳は上に尖っていて耳先に向かって毛が生えている。
瞳は縦に長い猫目で鋭い眼光を持つ、猫科の猛獣が祖先である。
「はいれ」
音声応答の許可を出す。
シュンと微かな音とともに、重厚な機密ドアが左右に開く。
そこに居るのは調査船統括部ティアナ部長。部長は局長の大きな机の前に歩いていき、手を胸にあてて軍敬礼する。
ティアナ部長はまるでエルフのような外見と言えば、総ての説明が不要だろう。
「局長、20日後に新造の《第一級調査船リリスZA100943》が、知的生命体が発見されたアルファ285宇宙領域に出航します、送迎式典の出席はいかがしましょう?」
局長は話を聞きながら、うんざりとした顔をしていた。
なぜなら、長い歴史が有るライ連の調査船は、既に数万隻と作られ運行している。
第一級調査船も数百隻ある。
自動保守と修復機能を持つ調査船は、よほど老朽化しないと廃棄されない。宇宙に出れば自動保守で飛び続け任務を行なう。
「もう何隻目だと思っているんだ、当事者以外誰の興味もない形だけの式典に数日も使う暇がない」
「局長、新造された最新の第一級調査船ですよ、ライ連技術を集結した最高傑作、単体で知的生命体とコンタクト・交渉・政治的決断ができ、未調査宇宙域で何の支援も無く半径10光年の制宙権を確保でき、恒星破壊兵器を備えた星系制圧型の要塞宇宙船ですよ?」
「だが、乗員が乗らない人工知能のロボット調査船だろ」
「そうですが…… 昔は国威をかけて全議員が参列した、送迎式典とお祭りをしたのですが…… 前回は局長の出席が有ったのです」
「君の気持ちは理解しているが私も忙しい、君が局長代理として出席してほしい」
「分かりました……」
「ああ、それから宇宙軍・安全保障局・調査船ページに出航の詳細を提示してニュースに、出航当日も最新ニュースとして出しなさい」
「局長の声明文は?」
「いつもと同じ文で」
「了解しました、では失礼します」
局長は深く椅子に持たれながら思う。
(探査プローブ船が発見した、電磁波を使って通信を行っている知的生命体。
新造の第一級調査船を派遣するが、多分また、未発達文明の知的生命体で危険度は定期監視と判定されるだろう。
そして安全保障局定期監視部門行きとなり何十何百周期も監視行きで埋もれてしまうだろう。
新造の第一級調査船を派遣するような任務ではない。
たまたま新造船の完熟航行に適した任務だったのだろう)
(簡単な任務過ぎて、トラブルなど発生しないだろ)
溜息をついて、次の書類に取り掛かる。
***** 第一級調査船とは *****
高度な並列思考人工知能を持ち、高度な政治的任務を行う。
その内容は外からの観測探査・中に入る極秘侵入調査・コンタクト任務・交渉任務・敵性生命体の判断権限・敵性生命体の絶滅判断と実行権限を持つ。
その外見は直系1キロの球形宇宙船であり、最高武力は恒星破壊兵器を持つ。
また人工ワームホール作製機能を持ち、搭載艇を数10光年先に短時間で移動できるワームホール移動ネットワークを作れる。
ライ連技術が結晶した最高傑作の要塞機能と高度な並列思考演算ユニットによる人工知能を搭載している。
この人工知能はロボットの分類であり、情報生命体ではない。
またルールに従って目的を達成する人工知能であり。
思考演算ユニットの基本ベースに、ライ連が定めるルールを書き込んだルール裁定演算ユニットが総ての思考演算ユニットの中に独立して存在している。
そして人工知能が決めた行動の裁定を常時無意識下と有意識下で行う。
調査船と呼称しているが、恒星系を制圧できる武力を持った要塞宇宙船である。
そして、いつ壊れて破棄しても問題ないように搭乗員がいない。
一度出航すると戻ること無く連続で任務を行う、自己修復機能を持ったロボット調査船である。
★★★★★ 20日後 巨船組み立てベース
局長代理の調査船統括部 ティアナ部長は、戦艦製造領域の巨船組み立てベース展望ルームにいる。
要塞船技術スタッフと最先端技術スタッフに囲まれ、今回の《第一級調査船 リリスZA100943》が如何に優れているか、長い説明を聞いている。
(ふぅー、これは疲れる、私も出席したくない気持ちが沸く)
長く退屈な説明を聞いていたが、出航時間になると全員展望ルーム前に整列する。
司会が紹介する。
「安全保障局局長代理、調査船統括部ティアナ部長挨拶」
「本日は、ライ連最高傑作である第一級調査船の…………
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では、いまより出航します」
司会が号令を掛ける。
「調査船に向かって敬礼!」
掛け声とともに全員調査船に軍敬礼する。
歴史的な出航音である汽笛が音響システムから流れる。
すでに移動しているが、巨大すぎて全く動いてるように見えない。
三分ほどで「敬礼止め!」の掛け声とともに軍敬礼が終わる。
離れていく人、近くと会話する人、徐々に解散していく。
そんな中、全く動いていない調査船を眺めつつ部長は思う。
(数日かけて、巨大ワームホール移動ゲートに向けて航海し、アルファ285宇宙領域に行き、知的生命体を調査をする。もうこの姿を直接見ることは無いだろう)
「良い航海を」
以後、リリスZA100943は、担当の管理部門に管理権限が移譲する。
いままで第一級調査船は老朽化の廃船以外消えた船は無い。
ティアナ部長は移動しているように見えない調査船を見つめ続けた。
その後、緊急連絡がティアナ部長に届くまで、平和であった。
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