第2話 この人、危ない人?


 ロリ巨乳になった訳をリリスに問い詰めた。


「説明してくれる?」


 強い意思を持ってリリスを睨んだ。

 リリスは静かな顔で答えた。


「こちらに座って」


 リリスが向いた先には、透明なテーブルと革張りのソファーが二つ、ソファーの一方に座る。

 説明が長くなりそうだった。

 当然だ、高3女子高生が12歳ぐらいの少女になったのだ、じっくりと話してもらう。


「飲み物を取ってくる」


 そう言ってリリスはキッチンブースに向かい、冷蔵庫のようなドアから大きなボトルに入ったジュース? を出し、左手脇に抱える。

 食器棚のような戸を開けて木制マグカップを2つ出して右手に持った、戸は肩で押して閉めた。

 ワイルドな行動にリリスの姿を凝視していたら。


「ごめんなさい、ここは何もないし、人間の常識を知らない」


 と誤ってきた。

 いけない、初めて話す人を凝視してしまった。


「いえ、ぜんぜん構いません、こちらこそ見つめて」


 と言って頭を下げる。


 リリスがテーブルに飲み物を置くと、リリスからバサリと音がして黒いコウモリの翼が背中に隠れ、銀髪ストレートの髪が揺れる。

 そして向かい側に座り、マグカップに大きなボトルから透明の液体をそそぐ。


「便利な翼ですね、それは飾りですか?」


「いえ、背中に付いている体の一部です。そして、バリアであり兵器であり、飛行ユニットです」


 真紅の目が私を見つめながら答えた。

 しかし、聞き慣れない単語を聞いてしまったため、思わず即答。


「へ、兵器? 飛行ユニット? バリアってあのバリア」


 自分でも言っていることが理解できなかった。

 そして大きな疑問符を頭の上に出した。


「その説明は後で」


 即答で拒否。

 でも今その暇はない、ロリ巨乳に変わった話だ。


「わかりました、この体が変わった説明お願いします」


 リリスは一口ジュースを飲み、真剣な表情でこちらを見つめる。

 そして、ゆっくりと話し始める。


「今から話すことは絶対に他人に、いえ、人類に話してはいけません」


 唐突に条件が出た、それも人類に。

 なぜ、それが必要なのか考えて、一瞬体が固まる。


「何故ですか?」


「それを話すということは、絶対に他に話さない事を、了解したことになる。いい?」


 少し下を見て考える。確かに理由を説明する事は秘密に触れること、リリスの問い返しは正しい。

 しかし、何も分からない状況で即答は難しい。


「そうですね」


 私の不安な表情を見てリリスは続ける。


「既にあなたが此処に居る時点で、いろいろ情報を持っている。あなたに、現在の危険性の自覚と覚悟を持ってほしい。そうしないと、また眠ってもらう」


「え、もう逃げられない状態?」


「そう」


 話す前から道は塞がれていた!


 すでに私は引き返せない所にいると指摘された。

 これは有名な覚悟を決めるタイミングだろうか?

 殺す覚悟、いや違う、話さない覚悟を決めなければ。

 しかし、何にもわからないから……

 そんな私の顔を見つめてリリスは話す。


「決められない様なので、情報を少し開示する」


「あなただけが知った情報が、国や組織等の行動力がある人たちに伝わり、組織的に何かの行動をして、私の本体に危害が加わった時。

 人類の対して、敵性知的生命体の判定をクリアし敵性と判断される。

 そして、敵性の人類を絶滅攻撃する」


 真紅の瞳が私を見つめながら、真摯に話した。

 しかし、話された内容が私の理解を飛び越えていた。

 最後の言葉が頭の中でこだまする。


「絶滅、 ですか……」


「そう、70数億人を殺す」


 まて、殺すという過激な言葉が出た。

 でも、よく考えると絶滅と殺す同じだった。

 ここまで来ると、すこし疑問になる。

 この人、危ない人?


「あなたは、私を危ない人と疑っている」


 ギク! 図星だ、心を読んだか。


「疑いを晴らす証明に、人類に無いオーバーテクノロジーを見せる。壁の鏡を見て」


 指示されるまま鏡を見ると、綺麗なゴスロリ美少女が二人ソファーに座る姿が写っている。

 とても綺麗で妖精のような幼女と少女中間だろうか? 誰だろう?

 と火照った顔で眺めて現実逃避していた。

 リリスから指摘される。


「一人はあなた、人類の技術で作れる?」


 言われて気がつく、あれは私達なんだと。

 立ち上がって鏡に向かって歩いてゆく。

 もちろん鏡の私も近づいてくる。

 鏡の前で頬をつねったり、髪を引っ張ったり、スカートを上げて足を見たり、大きな胸を揉んでみた。


 どう考えても現実、それも動作に違和感がないし感触も有る。

 普通に動いてる。元のガリガリ長身と絶壁胸が違いすぎる。

 こんな事は整形手術でも不可能だし、幻覚と思えない。


 可能性を考えれば、完璧な脳移植。

 しかし、まだ人類にはできない。


 そうだ、なぜ変わったのかを聞くために話をしているのだ。

 私がそれを考えても意味はない。

 これは確かに今の人類にはできないオーバーテクノロジー。

 だから、話さない覚悟をした。

 リリスに振り向き、歩いてソファーに戻って座る。


「理解しました、話さない覚悟を宣言します」


 リリスを真っ直ぐ見つめ、真面目な表情で言った。


「理解してもらって、良かった」


「良かったのですか?」


「はい」


「あなたは、私が瀕死の状態だったのを、ただ一人助けた人間。

 人間で言うところの、命の恩人。

 そして母…… いえ。

 だから、この恩はとても大きい、理解してもらって良かった」


 リリスが言うには私は命の恩人らしい、でも何かした記憶も助けた記憶もない、だから。


「私は助けた記憶もないし、そんな助ける力は無いよ」


 リリスは首を横に振って、そうではないと否定する。


「まだその経緯を話していない。でも、私はあなたと親友以上の関係を持ちたい。だから、真摯に対応し嘘偽りなく総て話しても良いと考えた。しかし危険も大きい、だから最初に覚悟を求めた。

 再度、助けてくれて有難う、親友になってください」


 そう言ってリリスは深々と腰を折り、頭を下げる。


 そんなリリスを見て、今までの話を思い返して、危ない話ではあったが嘘偽りを感じなかった。

 だからリリスと、最初は友達になるのもいいかなと思う。


「こちらこそ」


 と言って私も頭を下げる。

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