第41話 大統領と会談 リリスの爆弾


 会談の開始が宣言された。

 まず各人の自己紹介から始まる。

 中央にいるラリー大統領から右に向って挨拶する。

 終わると、大統領から左に向って挨拶する。

 各人の席の前には、役職と名前の書いた三角の板が並んでいる。

 アメリカ連合の後ろの3人は記録係だとか。

 そして私達二人が役職と名前を紹介する。

 それが終わると、大統領が手紙を差し出し質問がされる。


「この会談の目的が手紙に無かった、目的を教えて欲しい」


 リリスが静かな声だが、透き通るように部屋に響く声で説明する。


「あなた方が今置かれている現状の情報を提供し、あなた方の判断に役立ててもらうのが目的。


 そして、あなた方の判断によってどのような未来の可能性があるかを示し、判断に活用していただきたい。


 次に、隣に居る人類大使アリスの状況も合わせて説明し、あなた方の判断と行動に役立てていただきたい。以上が会談の目的」


 アメリカ連合側の各人が携帯端末を持ち、何か操作をしている。きっと内容のメモだろう。シュミットが司会を担当する。


「大きく3点ですね、続けてどうぞ」


「まず、アリスの状況。

 アリスは人類の中でただ一人、ライ連が保護し、ライ連の市民と同一の権利を持っている。ライ連側からは人類を代表するただ一人の人間であり。人類大使の位置にいる。


 したがって、人類からのアクセスはアリスを通して行われる。今回の手紙も、その回答受付もアリスが行っている。私に直接アクセスしても基本的に答えられない。安全保障上に関することは除く。

 しかし、アリスは人類側からは無国籍で何の役割も持っていない、書類上存在しない人間である。これがアリスの状況」


「はい」


「次に、あなた方の状況。

 あなた方は生物の生存競争を理解しているのだろうか? あなた方が今ここに生きているのは。生存競争を勝ち抜いた結果である。しかし、すでに数千年間あなた方は種の存続を掛けた生存競争をしていない。


 宇宙はいまだ種の存続を掛けた生存競争が有る。ライ連は生存競争を、ルーツを辿れば数万年生き抜いてきた。今も戦いは有る。


 あなた方は運よく数千年間それに触れていない。しかし、私が来た、あなた方は宇宙の生存競争の舞台に上がってしまった」


 会議のメンバーが静かになり少し青ざめている。

 流石にこれは青ざめるかもと納得する。


「私は、ライ連の安全を保証する使命が有る。宇宙の知的生命体や大規模生命体を調査し、敵性と判断されると絶滅攻撃を行い殲滅する。そしてライ連の安全を守る。それが私の目的と使命。

 地球人類はライ連ルールに照らすと、絶滅対象種族になる。

 しかし、アリスの強い願いを受け止め、現在保留状態である。アリスはその状況の中で、人類が生き残り繁栄する道を探している。

 それが、あなた方の状況」


 青ざめている者もいれば、怒っているものもいる。困惑の顔。疑っているも者もいる。

 こんな話を聞いて、まともに受け止められるはずがない。アメリカ連合はどの様に判断し、どの様な行動を取るのだろう。

 私には分からない。敵対するだろうか? 協力するだろうか? それとも、狂人の戯言と切って捨てるだろうか?

 私には分からない……


 もし対立したら、武力を持って征服? 最悪だ。

 でも、それで人類が生き残れるなら、絶滅よりはいい。

 アメリカ連合はどんな答えを出すのか?


 会議室は静寂に包まれている。誰も何も言わない。


「以上、質問がなければこれで終わる」


 慌ててシュミットが発言する。


「ちょっと待ってくれ、こちらで相談させてくれ。今の話は衝撃的すぎて、すぐに対応できない。いいかな?」


「問題ない」


「では、別室で休んでてくれないか。案内する」


 そう言って立って案内をする。私達はシュミットに付いて部屋を出て、先程の応接室の部屋に入る。そしてシュミットが言い放つ。


「また来るから、ここで待っててくれるかな。ではまた」


 急いで部屋を出ていった。




★★★★★ その後の会議室(三人称)


 残ったメンバーで顔つき合わせていた。

 誰かが話したそうに口を開くが、大統領が制する。


「シュミットが来るまで待っててくれないか」


 しばくして、勢い良くドアが空きシュミットが入ってくる。そして、大統領が聞く。

「シュミット今の話どう思う?」


 シュミットは大統領の向かいの席に座り、言うのを躊躇うが。

「真実なら、人類の危機です」


「あんな話が真実な訳がない!」 軍の大将が言い放つ

「嘘と決めて、破滅のスイッチを押すのか?」 調査局TOPが指摘。

 それに答えるものは居なかった。

 シュミットが提案する。


「まず先に、話が真実かどうか確かめるべきです」


 ラリーが聞く「どうやって?」


「リリスに証拠がないか聞いてみるべきでしょう。それと個別にアリスに確認する。攻撃の方法も聞いてみる。他に何か有りますか?」


 会議室メンバーを見る。


「聞いた情報をこちらでも確認できないか?」

「必要ですね」とシュミットは言う。


軍部の大将が「核兵器を用いて倒すのは?」


 ラリー大統領が大将に顔を向けキツい口調で怒鳴る。


「それで倒せる保証が有るのか!」


 それを聞いたシュミットが補足する。


「核兵器では倒せません、彼らは恒星間航行可能な宇宙船で来ています。その宇宙船はこの太陽系の何処かに有る。ここに居るリリスとアリスを核で攻撃した瞬間。宇宙から攻撃される」


 そして大将に強い視線を向けて問いただす。


「貴方に、何処に居るかわからない、恒星間航行可能な宇宙船を破壊できるのか? なおかつ、それをしたらライトリング銀河連合がやって来て地球を滅ぼす。地球にいるリリスとアリスだけの問題ではない!」


 大将は答えられなかった。シュミットは続ける。


「それにもし、核の攻撃をしたら滅亡の回避は不可能になる。今は慎重に対応し、確認と調査の時間を作るべきです」


 ラリー大統領は頷く。


「シュミットの言う通りだ、対立はダメだ。それに回避の方法を提案されている。アリスが生き残る道を探している。事実確認の前にその道を閉ざすのは不味い」


 シュミットがまとめる。


「まとめます。1事実確認をする。2こちらで検証する。3アリスの道を聞く、又はサポートする、必要なら一緒に動く。他に何か有りますか?」


 科学技術TPOが

「ライ連の技術を盗む」


 シュミットが答える。


「盗んだ時点で対立になる。あるとすれば、観測や調査や研究に、何かの取引で技術を提供してもらう、他には?」


 会議メンバーは全員考え始める。


 ラリー大統領がこぼす。


「最初から、私達の検討や想定を遥かに超えた事態だ……」


 しばらくして、シュミットはまとめる。


「では、先程の案で私が質問します。途中で何か気になることが有ったら言ってください。会談を再開していいですか?」


 ラリー大統領が「それで行こう」と返事をする。



 会談の再開が決まった。

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