第33話 国防省対策会議 その2


 マフィア事件の翌々日。

 孤児院に武田家に行きますと手紙を残し、脱走して武田家に保護してもらった。これで、予定通り保護者付きとなり。私の計画は順調に進んでいる、もう食糧問題はクリアされた。

 一つ一つ地道に目標をクリアする私は偉い! この調子で人類を救うんだ。と自画自賛していたらリリスが。


「アリスが忙しそうだったから、アメリカ連合でユニット回収を予備のリリスでやってたけど、良かったよね?」


 と、びっくり発言。確かにパトロンの件やマフィアの件が忙しかったから行けなかったのは事実だ。聞いても何もできなかった。


「うん、問題ない、でも暇だったら教えてね」


「了解」


「所で、前に外人が孤児院を訪問してたけど、ひょっとしてそれ関係?」


「かも知れない」


 何となく納得してしまった。まあ、害が無いならいい。

 軽く考えよう、そうしようとのんびり考えていた。




★★★★★ 国防省対策会議 2回目 (三人称)


 前回行われた、国防省対策会議の2回目。

 10日間の状況の進展と経過、分析調査と推察、そして今後の対策が行われる。

 場所は、前回と同じく5角型のビルの中、横20メートル縦30メートル高さ5メートルの大会議室。窓はなく、正面に巨大スクリーンが有り。立ち台が有る。全長20メートルの巨大な楕円形テーブルと多くの革張りの椅子が有り、テーブル内はくり抜かれ中央の下に幾つものスクリーンが配置されている。


 前回とほぼ同じメンバーが揃っている。

 今回の報告は、情報省本部に新設された【異物及び異邦人対策本部】アイザック大佐であった。巨大スクリーンの横にある立ち台に大佐は歩いていく。参加メンバーは静かになり、大佐を見る。今回どのような報告がなされるか興味が強い。前回は衝撃的だった、2回目ではあるが伝え聞く内容は興味深いものが多い。

 アイザック大佐が立ち台に立って書類を広げる。

 咳を一つして、会議場をゆっくりと見渡す。


「情報省本部 異物及び異邦人対策本部のアイザック大佐です。今回は大きく3分類で報告します。最初に時系列に発生した状況の説明、次に分析結果、最後に今後の推察と対応の提案です」


 数秒の時間を置いて、巨大スクリーンを示しながら説明を始めた。


「状況推移の説明。

 前回の対策会議で決定された。異物の捜索。

 軍施設全体の捜索を行いました。最初に5箇所がほぼ同時に異物を発見。回収し調査を行なうと共に『黒羽の少女』が来るための対応をしています。会議で決定に従い、情報収集を主体とし武力衝突を避ける対応をしています」


「発見回収された日時と場所は、お手元の資料及びスクリーンを見てください。数時間の違いが有ります。しかし、回収はほぼ同じ時間に行われました。その時刻と遭遇時の画像です。これを見る限り黒羽の少女は5人居ることになりますが、違いが見つかりません。ただし、XXX軍事研究所のみ、画像に有る白い少女が伴っています。

 以後時系列で説明します。

 XX日XX:XX頃に黒羽の少女が同時に現れ…………

………………

………………

………………

………………

………………

 と今日までに12個の異物発見と黒羽の少女が回収に現れました。

 以上が時系列に発生した事件の内容です」


 動画映像、詳細画像を用いた説明を行い、会場は静かに聞いていた。


「次に分析結果を一つずつ、説明します」


「まず、重力制御の分析です。

 バリアに使用しているのは、約100G

 兵士を他投げるのに 1G

 飛行に 1Gから5G 自由方向機動で飛んでいます

 次が脅威ですが、壁やドアを破壊するのに50Gが使われています。

 これは攻撃に50G使用できる意味を持ち、わが軍の持つどんな防御も意味を持ちません。30センチの鋼鉄の箱の中に居ても重力は中の人にかかり。箱は無事でも、中の人は潰れます。

 そして、中の電子機器も壊れます。

 残念ながらこの攻撃を防ぐ手段が今のところありません」


「物理学者と分析した結果、解析不能な現象を発見しています。

 普通重力は距離の3乗に比例して減衰し無限遠に届きます。

 しかしこの重力制御は、一定の四角い空間のみ働き他に影響しません。現在の物理学では説明できないと言っています。


 最先端の物理学でも説明が不可能なため、人類には不可能であると結論しました。したがって、これは異星の技術のみ可能とし、黒羽の少女を異星人と判断します」


 会議場がざわめく。政府公式の異星人判定であり、人類初である。

 会場のざわめきが引くのを待ち説明を続ける。


「次に、発見された異物ですが、異物の中に1センチから2センチの金属球体が有り。黒羽の少女による回収はその金属体でした。他の部分が有っても無視される様です。


 また何らかの方法でその金属の場所が理解されているようです。どんなに電波を遮断しても位置が把握され回収されます。また金属体から電波を検出できませんでした。


 この結果、電磁波音波以外の未知の通信方法を利用していると判断されます。これも又人類技術では作成できませ」


「次に相手の人数ですが、白い少女も含め今回6名が同時に現れました。従ってそれ以上の人数が居る可能性が有ります」


「次に外見ですが、白い少女は羽も牙もありません、一見地球人に見えます。そして、行動がとても地球人的な少女的な喜怒哀楽を出しています。白い少女は黒羽の少女に守られていました。白い少女は地球人である可能性が高い」


「最後に、バリアを通過して攻撃できる方法が有ります。バリア状態でも音と光は通過します。従ってレーザー又は音響攻撃が可能です。


 しかし、わが軍の攻撃力の中でレーザー攻撃は数万分の1の攻撃力しかありません。その力で黒羽の少女と対決するのは、無謀であり自滅の道に近いかと思います」


「黒羽の少女が話をしています。外見を見せています。だから音と光は通ります。しかし、もし攻撃的であったならばそれを止める事が不可能とは思えない。

 以上が分析結果です」


 会場は静かに聞いている。


「3つめに、推察と対応の提案」


「まず会話について、黒羽の少女との会話は最初とほぼ同じ、挨拶と注意による配慮だけです。


 しかし、白い少女のみ重要な情報を会話で提供しています。まず、黒羽の少女をリリスと呼んでいました。名前と確定します。次にドアを破壊したくないので開けてほしいとお願いされています。これは、本来なら破壊したくないのだと言う意味に取れます。


 次ぎに質疑と応答をしています。話したいと言うと、何ですか?と答えます。これは積極的なコミュニケーションが可能を意味します。

 ただ、各種質問に秘密と答えている。ただし、何か話せることはないか、の質問に友達になれば話せます、と答えています。


 ぜひ友人になって情報を得たいと切に思います。対立ではなく友人関係になるべきです」


「次に黒羽の少女と白い少女は度々目線を合わせて会話しています。

 わが軍と黒羽の少女のコミュニケーションはあまり成立していませんが。白い少女とは成立しています。白い少女を通してアプローチが良いのではないかと提案します」


「次に、まだサンプル数が少ないですが、異物が発見された場所は核兵器に関係してます。黒羽の少女の興味は核兵器関連ではないかと推察します。理由は不明です」


「以上で報告を終わります」


 会議場は前回に比べ静かだった、これから話される内容に多少の危機感が有ったからだ。


 次はアメリカ軍の元帥が進めている、黒羽の少女を捕獲する計画の進捗状況だった。


 運参謀が立ち台に立って、捕獲計画の説明を始める。


…………


 捕獲計画の説明が終わった。

 結果、総て準備が終わり、次に見つかった異物は、その場所に運ばれ実行することになっていた。


 情報省から

「情報省では、対決より友好を結ぶ提案している。軍の方針は対決に見える。それで良いのですか?」


 元帥から

「これは、対決ではない。対応能力の偵察だ」


「しかし、武力を使うのだろ」


「今までも武器はつかっている」


「今までは携帯武器だ、これは1師団規模の戦力だ」


「携帯武器では、対応力を測れない」


 情報省は言う

「議長! これは敵対的対応ではないのか?」


 議長は難しい顔をする。

「国家安全保障会議の許可は出ている」


「しかし…………」


 元帥が宣言する。

「情報省、そういう事だ、この作戦は異物を見つけしだい最短で明日にも可能だ」


 情報省は苦い顔をする。


 その後多くの議論や議題が出たが、作戦は変更できなかった。

 会議は終了し、黒羽の少女捕獲作戦は実行されることになった。




★★★★★ 情報省の室内


 情報省TOPとアイザック大佐だけが居た。

 黒羽の少女と白い少女のいる場所はある程度に掴んでいた。

 しかし、先走って何か仕掛ける部所が居ないともいえず。公表していなかった。それが役立つ時が来た。


「アイザック大佐、日本で見つかった同一と思われる黒い少女と白い少女に、捕獲作戦の情報をリークしろ、アメリカ連合は敵対意思は無いが、既に決まってしまった作戦が止められないと、だから注意してくれと」


 アイザック大佐が真剣な顔で頷く。

「分かりました、私が一人で行きます」


「頼む、敵対はアメリカ連合の破滅だ、友好こそがアメリカ連合の発展だ」


 アイザック大佐は一人で長距離航行戦闘機を使い日本に飛び立つ。

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