第34話 大佐とアリスとリリス


★★★★★ 孤児院前 アイザック大佐視点


 アイザック大佐は焦っていた。長距離戦闘機で日本に来たが、孤児院に少女達が居なかった。職員に聞いてみると、保護を申し出た家に逃げ出したと。

 その家を聞いたが部外者なので教えてもらえなかった。


 焦っていた、複数人の関係者を作る訳にはいかない。だからと言って今回の任務はアメリカ連合の未来に関わる。


「仕方が無いか……」


 そう呟いて、東京に有る情報局の支部に連絡す。

 少女達を見つけ、数回調べに来た局員を呼び出す。


「情報局のアイザック大佐だ、白と黒の少女達が孤児院に居ない。何処に行ったか分かるか?」


「え、居ないのですか? 少しお待ちください………………

 分かりました、武田組と言うテキ屋の家に行ったそうです」


 アイザック大佐は疑問に思う。今の瞬間、孤児院に居ないのを知らなかったのに、10数秒で割り出した。情報局の能力を遥かに超えた情報収集能力だ。


「まて、今分からなかったのに、なぜ数秒で分かる?」


「あーーその、日本に有る某アングラ掲示板に少女達の噂が広まり。そこに参加する趣味人が、趣味ゆえ情報収集能力がとても高いのです」


「アングラ掲示板か、お前も参加しているのか?」


「情報収集の為に見ています。少女を見つけたのも此処です」


「そうか、まあいい、住所は分かるか?」


「今調べます………………

 住所検索で出ました。神奈川県ZZZXXXYYYです。」


「ありがとう、極秘任務だわかってるな?」


「了解であります!」


 アングラ掲示板だと。そこに助けられたか、馬鹿にできん。

 スマフォでタクシーを呼び武田組の住所に行く。


 武田組の家の前に着いたは良いが、どうやって確認して話をするか考えあぐねていた。そして門の横の壁際に立って考えていた。

 ピンポンとチャイムして入るのはいかにも不味い。

 かと言って、早くコンタクトを取らねばならない。


 いろいろ考えていたら門の開く音が聞こえる、見てみると3メートル程先に、映像で何度も見ている黒と白の少女が居た。

 全く同じ服装で同じ顔だった。



★★★★★ 武田組前 アリス視点


『』英語会話

「」日本語会話


 武田家に保護された翌日、生活品を買うために出かけようとしていた。リリスはいつもの黒ゴス姿に2個のポーチ付きベルト、最近はベルトに2センチほどの球が前に5個後ろに5個付いている。


 何かと聞いたら、「防御と攻撃の強化」と言っていた。

 リリスが更に強化された。半端ないリリスらしさが全面に出る。

 私は白ゴスに肩がけの大きいバックを準備した。私にもリリスと同じポーチ付きベルトが有るが、今は付けなくても良いそうだ。


 門を開けて買い物に出ようと外に出て、右を見る。

 そこには、大きなガッシリとした体格に、目の下に黒い膜がある、疲れた外国人が居た。

 目を大きく見開いてこちらを凝視している。

 そして、英語で話しかけてくる。


『あーーその、私はお嬢さん方にとても大切な話が有る。聞いてもらえないだろうか?』


『私達に?』


『そうです、お願いします』


 そう言って、90度に腰を曲げ頭を下げる。

 戸惑っていたら何時までも下げたままだった。

 そしてリリスが。


「アリス、話を聞きましょう」


 と、少し真剣な目で私を見る。


『分かりました、ここでは良くないので、中に入ってもらえますか?』


『ありがとう』


 と言って頭を上げ、私達たちに近づく。

 疲れた雰囲気は有るが、足取りは鋭くきっちりとしていた。

 厳しい訓練を受けたような足取りだった。

 男を招き、門を閉めて玄関に向かう。

 玄関に入り組員に。


「3人で話せる静かな部屋は有りますか?」


「梅の部屋がいいですね、案内します。そちらの方は?」


「私のお客さんです」


 「へい」と返事して案内を始める。8畳ほどの部屋に入り、中は和室でテーブルと座布団が有る。

 私達が座り向かいに男が座る。そして男が。


『私は……』


『まて』 とリリスが手を上げて止める。


『体の各所に有る電子機器をテーブルに出せ、銃もだ』


 男は固まる。


『出さねば、敵として排除する』


 リリスは今にも処分するような鋭い視線を男に向ける。

 男はリリスの真紅の瞳に射抜かれて冷や汗を出した。


『分かった』


 そう言ってゆっくりと脇の下に有る小さな銃と、スマフォや何かの電子機器をポケットや袖から出す。


『まだ足りない、服のボタン、ワッペン、腕時計に、腰のベルト』


 男の顔には「なぜ分かる?」と言いたげに苦みばしり。

 上着を脱ぎガンホルスターを外し、たって腰ベルトを外し始める。

 その時、裕二が障子戸を開ける。


「アリス、お客さんだって?」


 シャツ姿で立ってズボンのベルトを外している外人を見て固まる。男も裕二を見て驚く。


「おまえ! うちの妹に何やってるんだ!」


 今にも掴みかかろうと、男に迫る。


『まて、誤解だ!』


「何喋ってるか知らんが、ただでは帰さん!」


 と胸ぐらを掴む。


「裕二まって、誤解です」


 と裕二を慌てて止める。

 裕二は私っを見て「誤解?」と言って止まる。


「テーブルを見て」とテーブルを指す。


 裕二はテーブルを見た、何かの装置類と拳銃にホルスター


「なんで、拳銃が有る?」


「武装解除をしていた、ズボンのベルトもそう」


 リリスが説明する。


「武装解除?」


「そう、この人は私達の客、今は大事な話が有る。人払いをお願いする」


「俺もか?」


「そう、とても重要」


「まあ、リリス達をヤれる人間は居ないか、わかった」


 そう言って、部屋を出ていった。


『突然の事、申し訳ない』


『いや、問題ない』


 そう言って男はベルトを取り、テーブルに置き座る。


『これは破壊する。文句は聞かない』


 そう言うと、スマホ以外を1箇所に集め。ベキベキベキと潰れ始める。男は目を見開いて潰れるのを見ていた。

 それを、近くの引き出しの中に入れ。


『違う部屋に持っていく、帰る時に返す』


 引き出しを持ち部屋を出て行く。

 その姿を見て、半端ないリリスだと思った。

 そして男の顔を見て『話はリリスが戻ってから』と言う。

 男は頷く。


 リリスが戻ってきてすぐ、周りから音が消えた。

 男はハット気が付き周りを見渡す。


『防音のバリアを貼った。貴方はアメリカ連合軍の方ですね?』


 男は焦る、きっと不明な人物を装うつもりだったのだろう。

 諦めて話す。


『そうです、アメリカ連合軍関係です』


『名前は? 名前も話せない人と話せない』


『アイザック』


『嘘ではないですね、話しましょう』


 アイザックは落ち着きを取り戻し、リリスの目を見る。


『貴方は、わが軍に侵入している黒羽の少女ですね?』


『そう』


 次に私の目を見て。


『貴方は、1度だけ来た白い少女ですね?』


 心の中で、二つ名きたーーと騒ぐ。


『たぶんそうです。白い少女は初めて聞きます』


『これで目的を達成できる』


 アイザックは少し安心して、少し力が抜けたようだ。


『ストレートに行きます。アメリカ連合は貴方に敵対の意思はありません。しかし、数日前に黒羽の少女を捕獲する作戦が決定されました。それを止めることができません。次の回収は1師団規模の兵力が準備され貴方を攻撃します。私はそれを反対する立場で情報を伝えにやって来ました』


 それを聞いた私はすぐにリリスの顔を見た。

 リリスの顔には何も現れていなかった。それを見て安心した。

 リリスが静かに話す。


『アメリカ連合の意思決定は一つではないんですね?』


 アイザックは少し苦しい顔になる。


『そうとも、言えます……』


『その件で、私達に何をしてほしいのですか?』


『私は先程の情報を伝えに来ました。何かをしてほしいために来ていません。しかし、個人的には戦ってほしくありません』


『ふむ……』リリスは少し考える。そして聞く。


『貴方に情報を伝えると、アメリカ連合に情報は伝わりますか?』


『私の上司に伝わります』


『そうですか。では、あまり情報は伝えられませんね』


 リリスはアイザックを見つめながら、微動だにせず考える。


『ユニットの回収は絶対。これは変わりません』


 アイザックは難しい顔をして話す。


『攻撃にレーザー兵器を使用します』


『問題ない』軽く答えるリリス。


『他に何か伝えることは有りますか?』


 アイザックは考え込む、そして。


『伝えることは以上ですが、質問はいいですか?』


『殆どが秘密と答えるが、それでも聞きますか?』


『はい、貴方は宇宙人ですか?』


『地球外知的生命体に所属している』


 アイザックは驚いた。


『地球に来た目的は?』


『秘密』


『軍議基地の異物は?』


『秘密』


『友好になれますか?』


『あなた方しだいで。これで質問は終わり。

 最後に、私から言う事がある』


『なんでしょう』


 リリスがアイザックを今にも殺さんとする刺すような目つきで睨む。


『貴方は私達がここに居るのを確定した。アメリカ連合に情報が伝わる。もし、アメリカ連合が回収以外で、この周辺及び関係者に害を与えた場合。貴方の国は敵国になり。友好の機会は失われ、アメリカ連合は滅びる』


 強烈な威圧と話された内容に、アイザックの顔が青ざめる。

 私は急いで口を出す。


『まって、まって、アイザックさん。リリスの言ったことは事実です。本当にアメリカ連合は滅びます。だから、絶対止めてね。ちょっかいで滅びたくないでしょ、本当ですから。ね、お願い』


 わたしはリリスとアイザックの間に手を上げて、急いで話す。

 そして、アイザックにお願いする。

 リリスは本当に滅ぼす。冗談ではない。

 アイザックは何も言えずに、冷や汗を書いている。

 沈黙の時間が流れる。

 リリスは真紅の瞳を射殺すほど強く圧力を上げアイザックを睨んでいる。

 アイザックはその瞳を受け狼狽していた。

 私は二人を交互に見ていた。


『伝えることは終わりました。会談は終了でいいですか?』


 リリスの瞳がもとに戻る。

 アイザックは力が抜ける。


『はい』


 周りの自然音が戻る。防音バリアが解除されたのだ。


『荷物を持ってくる』


 そう言ってリリスは部屋を出る。

 私はアイザックさんに向かう。


『アイザックさん、私はアメリカ連合と友達になりたいです。だから、軽はずみなことは止めてください、お願いします』


 そう言って頭を下げる。


『努力します』


『それと、捕獲作戦ですか、リリスにとって何の問題もないと思います。あの顔は何も気にしてない顔でした』


『そうですか……』


 リリスが戻ってきて、荷物が戻された。

 アイザックは潰れた荷物を回収して、ベルトと上着を着る。

 そして、3人で門まで出る。


『アイザックさん、今度は友達として会いましょう』


『ぜひお願いします』


 そしてアイザックと別れる。



★★★★★ アイザック大佐視点


 武田家を出て街の中心に向って歩く、そして会談の状況を考える。


 あの黒羽の少女の持つ雰囲気、勝てない猛獣の前に裸で立っている気分がした。恐怖を感じるのは何年ぶりだろうか? もう覚えていない。

 あれは、私に向けての威圧行為だ。なぜなら、あの威圧が普通に出れば、この一般の中で生活できない。

 あれはアメリカ連合に向けてのメッセージだ。

 変なちょっかいは掛けるなと。


 そして、地球外知的生命体であることが本人の口から確定した。

 私の持つ総ての機器を見つける能力。何かのスキャナーだろうか、そのような装置を動かした気配もない。そして防音バリア、やはり話すために防音はしていなかっただけだ。

 黒羽の少女の言葉が何処までが事実かわからないが、事実であっても不思議はない、そう思えた。

 報告しなくては、ありのままを。

 捕獲作戦を聞いても何も気にしていない事実を。

 結果はすぐ分かる。

 そして、この場所は秘密だ。

 心に強く誓う。


 課題は、友好をどうやって結ぶかだ。やはり、白い少女が鍵だ。何としてもコネクションを持とう。

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