第38話 国家安全保障の緊急会議
リリス捕獲作戦が行われた深夜、国家安全保障の緊急会議が行われた。大統領及び出席できた国家安全保障会議のメンバーと、捕獲作戦を指揮した参謀。その他数人。
テーブルの中央には6枚の全く同じ文面の手紙が有る。
内容は会談の申込みと人数の指定が有る以外、こちらで決めて3日後に予定を聞きに来る。それ以外何もない。
会談の内容を示すものは何も無かった。
最後に所属が書かれていた。
ライトリング銀河連合 安全保障局 リリス
人類大使 アリス
ラリー大統領が議長となっていた。
「まず、相手の確認だが、ライトリング銀河連合 安全保障局 リリスが黒羽の少女であり、地球外知的生命体で間違いないのだな?」
大統領直属のシュミット情報顧問が答える。
「そうです」
ラリー大統領は手紙を指し。
「この、ライトリング銀河連合の情報は有るか?」
「今回初めて出た名称です。それ以外の情報はありません」
「そうか、では、この人類大使アリスの情報は?」
「黒羽の少女と共に行動していた、白い少女です。それ以外の情報はありません。人類大使と有るからには地球人と想定できます」
「うむ、次に進む前に捕獲作戦の結果を聞こう」
ラリーは作戦参謀を見る。本来そこにはアメリカ連合軍の最高司令官、元帥が座る場所だった。しかし、作戦参謀が座っていた。
「参謀、元帥はどうした?」
「急病で出席できません」
「そうか…… では簡単な報告を」
短時間でまとめた2枚程度の一時的な報告資料を配るとともに、動画を出しながら時系列で作戦の推移を説明する。そして最後に降伏したことを部隊及び黒羽の少女に言ったことを伝えた。
ラリーが驚く、ただの捕獲作戦に1個師団と最新兵器、そして戦争ではなかったのだ、驚くのも当然。
「なぜ、降伏を出したのだ?」
「はい、作戦終了の40分後に、黒羽の少女が降下してきました。わが軍の攻撃手段がほぼ破壊され、救助活動をしていました。対抗手段もなく再度攻撃されたら、人的被害が膨大になりそれを防ぐために元帥が降伏を決断しました」
「その降下後は?」
「この手紙を渡すだけでした……」
参謀は苦しそうに顔を歪めた。
降伏する必要はなかったのだ、もとより攻撃の意思が黒羽の少女に無かった。軍として最大の失敗であり屈辱だった。しかし、あの場では降伏以外部隊を守る選択がなかった。
ラリーは苦い顔をしながら次に進む。
「被害状況は?」
「航空機38機が墜落、43機が敵攻撃により故障し帰還。搭乗員の死者はありません全員無事です。
地上の機動車両358台が総て攻撃で裏返され壊れました。死者は7人、負傷者は多数で現在集計中です」
「戦闘機が墜落して死者0? 機動車両がそれだけ壊れて死者7人? 異常に少ない」
「はい、相手は手加減した攻撃でした。相手の攻撃で直接死亡した兵士はいません。すべて裏返ったことにより兵器が暴発しそれに巻き込まれて死亡しています。それが判断理由です」
「たった3人の黒羽の少女に1個師団が全滅しても、手加減なのか?」
「そうです」
会議室が静まり返る。
「攻撃力の上限は分かるのか?」
「予測着きませんが、アメリカ連合軍が総力を上げても、3人に勝てません。試していないのは核兵器だけです」
「核兵器など使えん、試すのもダメだ」
大統領直属の情報顧問が手を上げ発言する。
「大統領、私が手紙を受け取った時に説明が有りました。これ以上の戦闘を望んでいない。そして、これ以上私達の力を測るのを止めませんか? その為に会談をしたいと、言っていました。私も、武力は止めるべきと考えます。次の武力衝突は敵国認定して力をセーブせずに攻撃をすると言っています。会話を強く勧めます。ホワイトハウスの対空設備も把握されていました。何かを試すのも止めましょう。会話が最もアメリカ連合に利益があります」
ラリー大統領も、情報顧問の意見に賛成の顔を向ける。
そして、会議メンバーの顔を一通り見て、軍部以外その意見に賛成するよう頷いている。
「そうだな、勝てない相手に喧嘩を売るのは馬鹿だ。これからは武力ではなく会話をメインにしよう」
そして、ラリー大統領は少し考え。
会議室全員に聞く。
「会談の目的、内容は何だと思う?」
全員が悩み始める。情報省のTOPが発言する。
「まず、整理してみましょう。
1つ、戦闘はこれ以上したくない。
2つ、異物は今後も回収する。
3つ、人類大使の地位が有る人物が向こうに居る。
4つ、試すのは止めてほしい。これは、調べるなと取れる」
続けて話す。
「1つめの、戦闘はしたくない。これは、今まで人を傷つけることを避けていた事から。これ以上の戦闘になると人を殺すことになる。それを避けたいと考えているからが、一番しっくり来ます」
「2つめ、異物は回収する。回収しなければいけない理由が有る」
「3つめ、人類大使。この存在が武力衝突回避及び力のセーブの原因ではないかと考えます」
「4つ、試すな。これ単純に調べるなではないかと」
情報省TOPはアイザック大佐のコンタクト情報を詳細に知っている。その結果、この発言により会議の方向性をコントロールしたいと考えていた。
その後、対案の意見や評価、提案が喧々轟々と行われた。そして会議は続き、大枠として情報省の意見が支持される。
そして、この人類大使アリスがアメリカ連合のキーパーソンになる重要人物と評価される。
その後、会談を行なうことが決定された。
会談前に出来る限り情報を収集する必要が発議され。
情報省や軍部にその指示が出される。
特に、軍部は武力衝突してはならないと強く指示された。
そして、情報顧問から提案される。
「3日後に来た時、会議場所の案内や食事の招待をしてはどうだろうか、その時の会話で情報を少しでも入手しては? 私が総て対応するのでどうでしょう?」
その提案はラリー大統領にとって、とても良い提案であり。情報顧問に向って笑顔で話す。
「その案はとても良い。少しでも会話してアメリカ連合に良い印象持つようにしてくれ。友好の第一歩になる。何を使ってもいい、頼むよ。それと相手は2名だから、こちらも2名ではどうかね? 特に黒羽の少女に詳しい人物で友好的な人を」
情報省TOPが手を上げる。
「情報省の異物及び黒羽の少女対策本部のリーダー、アイザック大佐が一番詳しい情報を持ち適任です。推薦します」
「情報顧問どうかね?」
情報顧問は少し考えて。
「問題ないと思います。では2名でエスコートをしましょう」
こうして、会談前のエスコートが決定された。
★★★★★
会議終了後の次の日、情報省TOPから情報顧問に個別の連絡があり。アイザック大佐が既に一度2名に会っている話をした。
情報顧問のシュミットは驚いたが、事情を聞いて納得し。後日アイザック大佐と打ち合わせをする事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます