第19話 リリス軍事基地に侵入
昔の自宅跡地から失意と決意を胸に抱き基地に帰った。
その結果、今後の目標が明確になった。
実際に何をやるか、行動方法、行動の場所、安全の確認、危険の予測等々を、数日に渡って検討し計画を考えていた。
それ以外にも、仮想パソコンの使い勝手の向上に、昔つかっていたアプリケーションを入た。
確かに80年も古い化石ほどだが、使い慣れたソフトはやはり良い。それに、最新を入手するお金も手段もない。
ライ連では、このような情報処理は秘書AIが行う、私の場合リリスになる。
でも、リリスが情報を集めプランニングして提案では、私が納得できない。私は私の手でやりたい、だから80年も古いパソコンを使う。
しかも、仮想パソコンの機能拡張は行っている。
既に、パソコンのスクリーンが変化し、私の周りに仮想スクリーンが幾つも出ていた。まるでSFアニメの様に。
そのスクリーン間をマウスのポインターが空中を移動している。
だがしかし、キーボードとマウスの操作は変わらなかった。
視線誘導もいちいち見て指示が必要だし。
画面タッチでは腕を動かすのが遅い。
簡単に使うのは楽だが、情報を入れたりプログラムしたり、データーの操作には遅すぎた。
キーボード、マウス最高! と思う。
………………
色々計画した後、休みながらリビングでゲームソフトを遊んでいた。
いや、遊戯は重要ですよ! 気分転換に暇つぶし良い。
つくづく思う、なぜ? リリスの中に私が持っていた総てのソフトが有ったのか。
問い詰めたい小1時間問い詰めたい。
「調査のためにパソコンソフトも収集していたのは良いけど、なぜ私の趣味のソフトまで有るんですか?」
と独り言を言ってしまう。
そこにリリスがトアを開けて入ってきた。
思わず睨んでしまう、その瞳を澄ました顔で見つめたリリスは。
「アリス、アメリカ連合の軍事基地に潜入調査していたユニットが捕獲された。回収に行ってくる」
リスはまるで散歩に行くように気軽に話した。
今度は軍事基地だと、それも潜入調査、リリスの活動範囲広すぎ。
今度聞いてみよう。
「軍議基地、大丈夫?」
「問題ない」
「そう、そのうち私も行っていいかな?」
「問題ない、アリスも私が何をしているか知るべき。人類大使として現在の状況を理解すべき。
私はライ連の基本理念とルールに従い行動している。しかしそれは、宇宙の現状を知らない人類国家とって拒否したいことだろう。
しかし、人類も未知の生命体が見つかった場合調べるのが普通。ライ連が人類を調査するの安全保障上当然だ。
アリスはそれを見て実感し、その上で人類の架け橋を考え、行動する必要がある」
人類大使………… 責任重大だ。
しかし、人類は生存を掛けた戦いに触れてしまった。
現実を理解し、最小の被害で切り抜ける必要がある。
理想だけを考え、夢を見ながら絶滅は嫌だ。
目的のためにクールになろう。たとえヤクザを脅しても。
あれ、ちょっとレベルが低いかも?
気にせずやろう。
「わかった、その時はよろしく」
「では、行ってくる」
と言って装備を整えるリリスに。
「ちょっと待ってーー、この前から此処に居る鷹は連れてかないの?」
「アリスが気に入ったみたいだから、ずっと居る」
なんと! ほんとにペットになった。
嬉しいかもとニコニコして。
「リリスありがとう、名前付けないとね」
「アリスが付けて、では行ってくる」
「名前考える。行ってらっしゃい、気をつけて」
リリスはポーチ付きのベルトをして、基地出口に向かっていった。
***** アメリカ連合 軍議基地 リリス視点
今は午後4時頃、潜入調査ユニットがある軍事基地の上空5キロに着いた。夜でないのが残念だがユニットが調べられても困るので早くに回収する。
上から基地の詳細を観察する。
大きな基地だ、長い滑走路があり駐機場には戦闘機が並んでいる。
管制センターのビル、事務所のようなビルに多くの兵舎、そして体育館の様な倉庫が並んでいる。全体が塀と柵で囲まれている基地だ。
対空ミサイルも装備しているだろう、しかし私のバリアの脅威にはならない。対空砲もレールガンも問題ない。可能性が有るのはレーザー兵器、だが私の飛行を追尾し当てるのは無理。一瞬当たっても問題ない。
幾つかの強力なレーダー波を検出している。横方向の探知範囲内に5キロ近づいたら、私の中にある重力空間制御ユニットの金属部分がレーダー波を反射し検知される。
しかし直上の検知範囲は短いく、問題ない。
光学探知及び歩哨目視の近距離は発見される可能性がある。
しかし、基地に入れば見つかるので問題ない。
脅威になる物はないと判断できる。
回収作戦を考える。
レーダーの範囲外の真上から急速降下着陸、ユニットの位置は、およその方向が分かる、降りたらユニットに向かって進む。
武力は壁を壊すのとバリアパネルが隙間を作って周囲を囲む形で良い。完全に囲むと音が伝わらないし触ることができない。
回収したら、外に出て垂直上昇で離脱、私の飛行スピードに着いて来る兵器はない。以上。
単純だが問題ない。
「作戦を開始する」
急速降下を開始する、風切りの音が私の耳を叩く、地面に着く前に減速し静かに降り立つ。
レーダーに一瞬写った筈だがもう遅い。
光学監視と歩哨は気がついただろうか?
大きな倉庫が並ぶ間の3メートル幅の隙間、ここには誰もいない。
隙間の道をユニットの方向に歩き始める。
倉庫の出口に出て周りを見る、周りには、各種機動兵器と兵士の一団と数人が各所に居るのが見える。気にしても仕方がないのでそのまま歩く。
遠くの兵士が私を見つけたようだ。
「おい、あれはなんだ?」
その声に周りの兵士が気が付き私を見る。数人がバラバラと速く歩いてくきた、これはいつものパターンか?
大柄の男が声をかける。
「お嬢ちゃん、ここは進入禁止の場所だ。親御さんが連れてきたのかい?」
挨拶は大事だ、挨拶をしよう。
振り返って兵士たちを見つめ、澄ました顔をして。
「こんにちは、お邪魔してます」
集まった兵士たちが動揺している。きっとこの外見のせいだ。
黒い翼は全開にしている。
大柄の男が、誰かの連れ子の迷子だと思ったのだろう?
「何処の子だい、名前を教えてくれないか?」
やはり、挨拶でだけでは無理か。
「この先に用事が有るので行きます」
少し遠く、丈夫そうな灰色の3階建てのビルを指す。
「いや、勝手に歩いちゃ困るんだが」
会話は終わった目的に向かおう、そのまま建物に歩き始める。
「お嬢ちゃん、ちょっと待てって」
そう言って、手を伸ばし私を捕まえようと近づくる。
大柄の男に顔を向けて一言。
「触ると危ない」
大柄の男は、一瞬何を言っているのか訝しんだが、そのまま近づき、バリアに手が触れた。一瞬手が止まったようになり、急いで手を引っ込める、大柄の男は手を見て唖然とする。
僅かに内出血している手を凝視していた。
「お前、今何をした!」
真剣な表情で問いかけ、腰から警棒のようなものを取り出し、探るように近づいてくる。そして何か壁のようなものに止まり警棒は進まない。そして、何もない空間に押すと押し返してくるような奇妙な間隔に言葉が出ないようだ。
それを見ていた周りの兵士も、事態の異常性に気が付き、緊張した顔で周りに集まる。
「おい、お前ら近づくと危ない、離れて囲め」
「「「イエッサー、ボス」」」
その場に居る兵士全員で周りを囲む。有る者は警棒のような物、無手の者、何かの工具を構えた者がいた。
このままでは進めない、かと言ってバリアでは重い怪我をしかねない。進む先にいる兵士を1G加速で横に飛ばす。
私は大きな声で前に居る兵士に宣言する。
「近づくのは危険、横に飛ばすので受け身をして」
そして、前に居る兵士が左右に飛ばされ転がる。怪我は無さそうだ。そして歩き始める。
それを見た大柄の男は、携帯通信機を取り出し連絡する。
「スーキル隊のリゲルです。A 12格納庫前に危険人物を発見、確保しようにも不明な力で抵抗され確保できません。確認と支援、必要にしたがい武力使用の指示を願います」
そして、幾つかの会話が聞こえる。これは想定の範囲内、気にせず進む。
しばらくして大きな音で基地中にサイレンが鳴る。そして武器を持った兵士が走ってくる。
私の50メートル前に並び武器を構える。拡声器から硬い声が響く。
「その場所で止まれ、止まらない場合は攻撃する」
そのまま前に進むも気もない、横を通る方向に変え歩く。
「おい、上に威嚇射撃しろ」
リーダーと思わしき人物が近くの兵士に指示する。
パンパンパンと3発、上に威嚇射撃をした。
しかし気にせず歩く。
「進行方向に移動しろ!」
リーダーの指示で、兵士が進行方向に移動して来る。相手に怪我をさせるつもりはない。もう一度大きな声で注意する
「近づくのは危険、横に飛ばすので受け身をして」
1G加速で横に数人飛ばす。移動を始めた兵士たちにぶつかり転がる。今回も怪我は無さそうだ。
それを見ていた兵士は、移動は困難と考えリーダーを見ている。
リーダーが困惑した顔をしていた。
たぶん少女の私を見て撃つのを躊躇ているのだろう。
「お前、あれの横を撃って、当てるなよ」
とリーダーの指示が聞こえる。隣の兵士が銃を構えて私に向け、パンパンパンと3発撃った。
銃弾はバリアに弾かれ、兵士の上を風切り音を立てて通り過ぎていった。
怪我を誘発しないようバリアは少し斜め上にして、上空に反射するようにした。これで、反射による被害も軽減される。
「リーダー、何かに反射されて通りません」
これ以上の攻撃は怪我を誘発する。大きな声で事態を話し注意を促そうと、前方のリーダーに向けて宣言する。
「バリアが攻撃を反射する。危ないので攻撃を控えて。肉体が触ると怪我をする、注意」
リーダーが緊張と呆れた顔を混ぜて。
「はあーー、バリア? そんなもの有るか?」
「しかし、反射してます」
と、狙撃した兵士が言う。
説明は終わりだ、以後回収に入る。
建物に向かって進み、前を塞ぐものは1G加速で横に飛ばす。
注意はしたが単発的に何度も撃たれる。
きっとバリアの確認と性能の調査だろう。
敵意はあまり感じない。
ビルの入り口に来た。ドアは壊す。
ドアが進行方向かって引き千切れていく、そして大きな音を立てて倒れ、床に潰れていく。
翼を少し畳み小さくして、壊れたドアの上を歩いて進む。
通路は横幅3メートル程度で両脇にドアが並んで部屋が有る。
先に進むと分厚い扉が有った、強い重力を掛ける ギチギチギチと軋むが壊れない。より強い力を掛けては内部も破壊しかねない、仕方がないので横の壁を2回ほど壊す。ドアほどは強くなく壊れる。
中には縦横20メートル高さ5メートルの倉庫のようだ、その中程に重そうなコンテナが机の上に乗っている、この中に潜入調査ユニットが有った。
周りを見る、横には分厚いガラスの向こうに多くの機材と白衣の女性が居た。その前のテーブルにはユニットの破片が有った。
回収しよう。
コンテナを軽く片手で持つ。
白衣の女性が大きな目を開けて私を見ている。
開けた穴に戻り隣の部屋のドアを壊す。
中に入ると、女性は恐怖で顔が引きつっていた。部屋の角にピタリと張り付いている。テーブルに進み、ポーチから大きめの袋を出しユニットの破片を入れる。
白衣の女性の方を見て聞く。
「他に残っていますか?」
白衣の女性は顔を横に激しく振り、無いことをアピールする。
事実は不明だが回収は終了する。問題はワームホール通信機と重力空間制御装置だ、これだけは人類に渡せない。
通路に戻ると多くの兵士が幅3メートルの通路に居た、そして銃口をこちらに向けている。この状態で無傷の排除は無理と判断し。コンテナが有った部屋に戻る。
兵士が全員着いて来る。
部屋に入り中央に行くと、壁の穴から兵士が出てきて穴周りに兵士が展開し銃口を向ける。そして後ろから、
「ここはもう逃げ道はない、投降しろ」
兵士たちに振り向き周りを見渡し、先に進める道がないことを確認する。
仕方が無い、後ろの壁を5メートル四方ほど吹き飛ばす。
大きな音とともに壁が崩れ、外から光が入ってくる。
兵士達は突然の大きな音と外の光で、銃を構え今にも撃ちそうだ。
「撃つな、今撃つと反射で味方に当たる。撃つな」
と大声がかかる。
私は重いコンテナと袋を持って外に歩きだす。
兵士たちは、付かず離れず付いて来る。
十分に広い場所に出た、空が明るい。
私は兵士たちに振り向いて正面に見る。そして、全員を一回り見てから。
「お邪魔しました」
と挨拶して少し頭を下げ礼をして、戻す。
しばらく皆を見つめた、攻撃の意思は少なそうだ。
翼を全開にして垂直に急上昇する。
これで回収任務が終了、死亡者もいない、問題なし。
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