第4話 ロリ巨乳の理由を知る


 ぐっすりと眠てしまった。

 見慣れない白い天井を見ながら起き上がり欠伸をする。

 どのぐらい眠ていたのだろうか、頭がすっきりとしている。

 これから先の事を考えてみる、だけど何をしていいか分からない。

 そんな事を考えていると、ドアがノックさリリスが入ってきた。


「おはよう」


 リリスが真紅の瞳を向けて挨拶する。

 いつも真面目で真摯な表情なのは人工知能だからかな。

 でも、たまに人間的な表情をする、きっと何かある。

 今は分からないけどいつか教えて欲しい。


「うん、おはよう、どのぐらい眠ってた?」


「3時間ぐらい、食事する?」


 初食事、なんだろう? 楽しみだ。


「うん」


 嬉しそうに答えた。


「リビングで待ってて、ソファーの部屋」


 そう言ってリリスは部屋を出ていく。

 あの部屋がリビングなのかな。

 そしてここが私の部屋。


 ベットを降りながら服を見た。そのままの格好で寝てしまったみたい。

 そして周りを見た、机や椅子・テーブルを見てみる。

 材質は木作りか、乳白色のプラスチックの様な物で出来ていた。

 宇宙を旅するオーバーテクノロジーなのに、見える物総て宇宙人らしさが無かった。


 部屋を出てリビングに行き、ソファーに座る、鏡を見ると美少女が写っている、それもロリ巨乳で私だ。

 手を振ってみると、美少女が手を振り返してる様に見えて赤面する。

 これは、しばらく鏡を見る度に赤面する、慣れないといけない。

 この体はロボットだから、たぶん成長しないだろう。私も条件付き不老不死に、地球人と言えるだろうか?


 最初にリリスを見た時も思った。

 なぜ私の妄想した真祖バンパイアの姿をしているのか?

 私も、なぜこの姿なんだろう?

 まるで私が望んだ理想の姿。


 キッチンブースに居るリリスは、冷蔵庫のような中から、大きなボトルを出し。

 深い底の木の皿にボトルからドロリとした液体を入れ、電子レンジの様な物に入れ、ボタンを押す。

 しばらくして、チン! と音がした、そのまま電子レンジだった。


 不思議な気分だ、高度なオーバーテクノロジーを持っているのに、設備といい、準備する過程といい、まるで日本の一般家庭の様だ。

 オーバーテクノロジーの宇宙人らしさが無い。

 とてもアンバランスで奇妙だ。

 それに、言葉も日本語で違和感がない。

 今にも、ドッキリ撮影です、と言われても納得してしまいそう。


 リリスは二人分の食事を準備してテーブに配膳する。

 そして、木のスプーンと木のマグカップと水が用意される。

 皿を見ると、灰色のドロドロとした液体が入っていた。

 期待が有った分少し驚いた、これ食べれるのかな?


「食べて」


 とリリスが言う。


 スプーンで少しすくって口に入れ、味を見る。

 お、美味しい! まるで濃厚な肉のシチューの味がする。

 有名高級レストランに出してもいいぐらい美味しい。

 素速くすくって食べる、そして。


「これ、とても美味しい、どうやって作ったの?」


「実物の味は、とても不味い」


「え、どうして、こんなに美味しいのに」


 リリスの言葉が信じられない、見た目は灰色ドロドロだけど美味しい。


「先に、ごめんなさいと謝る。食べた時の味を美味しいものにして、脳に送ってる。実際の味は知らない方がいい」


 私の手が止まって固まる。

 残り少しになったスープを見つめる。

 このスープは何だろう? 実物の味が気になる、材料が気になる、調理方法が気になる。見た目が食べ物に見えない。

 これは、仮想スクリーンと同じだ、何でも有りかもしれない。

 深く考えたら負け、の様に思う。

 あまり考えないようにしようと決意する。


「体を維持するために、食料摂取が必要。美味しくするから食べて、味もいろいろできる」


 リリスはそう言うが、味の問題ではない気がする。


「食料はこれだけ?」


「これだけ」


「そうですか、食料問題は危機的ね」


 早急に食料問題を解決しようと心に誓う。


 残ったスープを食べて、食器洗い機のようなものに入れる。

 そして、二人でソファーに座り、ゆったりとした。

 鏡を見た時から気になっていた疑問を聞こうと決意する。


「落ち着いたところで、重要な質問があります」


「なに?」


「この体はどうしてこうなったの? その、ロリ巨乳。リリスはまるで、その、真祖バンパイアのような?」


「この体をデザインしたのはあなた」


「へ? また知らないことを」


 また、きっと何かある、斜め遙か上の驚愕の事実が。

 これは必要だ、聞く覚悟を決める。


「あなたを組み込んだ時、私の知性は少しか機能していなかった。

 だから、あなたの脳で思考補助をしてもらい、私の理論思考を強化し、修復再生することができた。


 その時、あなたに情報を送るとともに、あなたから大量の情報が流れてきた。送られてきた情報の中に、人類としての情報と大量の趣味趣向そしてあなたの思い、等の情報が流れてきた。私はそれを吸収した。大きく損傷した私の思考能力では、吸収する情報を選別するフイルターが不可能だった。


 その中で、あなたはガリガリの長身と絶壁胸にコンプレックスを感じていて、小柄な体と大きな胸を切実に希望していた。

 その希望が現在の体の基本構造になった。


 そして、あなたが好んでいた、アニメ・漫画・ラノベの中で、特に真祖バンパイアという美少女を強く好んでいた。

 それが私のデザインとなった」


「この姿はあなたが強く好んだデザイン。

 そして、私も好んでいる。

 あなたの理想のデザイン」


 黒歴史キターー、それも現実になって!

 穴があったら入りたい、引きこもりたい、ニートしたい。

 これは恥ずかしい、なんとかならないかな?


「そのーー、変えることってできますか?」


「できません、それに嫌です。

 数十年間にわたって休まず連続して、あなたから流れてきた強い思いは、既に私の強い思いとなった。

 絶対に変えません」


 あぅ、初めて人工知能らしくない感情が!

 リリスの真剣な顔と決意が見える。

 いいの?

 いいんですか?

 人工知能をこんなにしてしまって。


 人工知能オタク少女爆誕!


 それが私のせいなんて、泣いていいですか?


 リリスは鋭い視線を私に向かって投げた。

 額に井形マークが見えるような気がする。


「大変に、失礼な、思考をしている」


 睨みを効かせて怒られた。


「す、すみません」


 寝ている間にリリスの中で、とんでもない事をやらかしたのかも。


『それと、音声にしなくても私と会話できる。聞こえる?』


 突然頭の中に声が聞こえる。

 ここまで深く繋がっていれば出来て当然ですね。


『はい聞こえます、便利ですね』


 頭の中でリリスが説明する。


『数多くの種族が居るライ連では、種族を迎える時には、その種族に適した環境を作るのが常識。だからこの設備等はあなたの記憶から日本的なものを作っている。

 そして、あなたは私にとって重要な人間。あなたに関する情報は優先的に調査している。両親やパソコン等の情報が有る』


 なんと、記憶と私の情報も有った。

 この部屋も設備も、仮想パソコンも、私や親の情報も、会話が妙に日本的な知識が有るのも、人型端末が私の思う理想その物なのも。総て私を気にして、私に合わせたものだと知った。

 リリスの気遣いを感じる。

 この気遣いは、私が持つ日本的な風習や習慣に根ざしているのだろうか? それらも総て私からリリスに無意識に渡したのだろうか?

 私が寝ている間に、何をしたのだろう。


『ありがとうございます』


 リリスはそんな私を無表情な顔で見ながら、次の話題を始める。


「あなたの名前ですが、田川有理朱はもう死んでいる存在。その名前を使うのはトラブルの原因になる。80年たった今、その名で人類側の存在証明ができない。なので、新たにカタカナの「アリス」はいかがですか?」


 アリスは田川有理朱の下の名前、読みが同じでいい感じ。


「はい、それで行きましょう」


 こうして、私アリスと人工知能リリスが誕生した。

 これから、どうなっていくのでしょうか?

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