第21話 国防省対策会議
軍事基地での会議から数日後。
国防省の緊急会議が開かれた。
これは国家安全保障会議前に行う準備会議となる。
ここは、5角型のビルの中、横20メートル縦30メートル高さ5メートルの大会議室。窓はなく、正面に巨大スクリーンが有り。立ち台が有る。全長20メートルの巨大な楕円形テーブルと多くの革張りの椅子が有り、テーブル内はくり抜かれ中央の下に幾つものスクリーンが配置されている。
防音設備が完備された会議室に、席は満席に埋まり後ろに人が立っていた。一人一人は静かに話していたが、人が多いためざわついていた。
事件が発生した基地の情報部大佐が書類を持って立ち台に歩いていく。全員の視線が大佐に向き、話し声が消え衣擦れの音がする。そして説明を待つ。
大佐は立ち台に書類を広げ、小さな咳をして、説明を始める。
「説明は大きく2つあります。初めに事件の時系列に従った状況推移の説明。次にその後分析によって判明した内容と推察です」
大佐は僅かな沈黙と会議室全体を見渡してから、巨大スクリーンを指しながら説明する。
「X月XX日に事件は起こりました。最初にXX:XXに…………
……………………
……………………
……………………
……………………
……………………
という経緯で事件は発生しました」
約30分ほど、写真と映像を示しながら説明する。
常識では測ることの出来ない、動画の映像と説明。事前に資料を見ていたが、当事者の説明と映像には説得力が有る。
全員が言葉を出すこと無く聞き入っていた。
「次に、その後の分析結果から判明した内容と、推察を説明します」
そう言って、一つずつゆっくりと区切って説明する。
「まず基地侵入の目的ですが、コンピュータールーム内の異物を回収するためと判断できます」
「次に、わが軍に対し敵対的目的はありませんでした。なぜなら、破壊されたのがドアと壁のみ、兵士の被害は投げられた時の擦り傷程度の微小な傷。そして何度も危険性を大きな声で話し、怪我が出ないように配慮しています」
「これについては、今後の対応を考える上で、十分に考慮すべきです」
「次に、飛行、バリア、攻撃に使われた技術について。映像の分析と破壊の分析から、重力の様な物体に均一に力が掛かる物を使用していると判断。その分析班からは重力を直接操作し使用しているのではないかと意見が出ています。
人類の科学技術では出来ないと」
「分析数値ですが、垂直上昇には上向きに約4Gの重量加速、兵士を投げるのは横向きに1G加速。次が最も脅威の数値で、バリアには少なくとも数10Gの外向きの力が働いていると分析ています」
「そして、わが軍からの攻撃、主に携帯兵器ですが、総てバリアに跳ね返され効果がありません。侵入者も当方の攻撃を何も気にしていませんでした」
「次は推察ですが、ここで説明したいと思います。もし相手に攻撃意思が有った場合、わが軍事基地は簡単に制圧されると予測できます。飛行は戦闘機やミサイルより速く、飛行機道も自由です。もし攻撃に数10Gを使用したら戦車も壊れ、内部の人は潰れます、防御ができません」
大佐は沈黙し会議メンバーの反応を見る。
「したがって、対応には慎重にする必要があります。もし敵対的に出た場合、わが軍に大きな損害が出ます」
情報部大佐は情報が行き渡るように、会議室をゆっくりと見回す。
皆の顔が緊張に包まれている。
「次に進みます」
「コンピュータ室地下に有った異物ですが、何らかの情報を外部に送っていたと推察できます。なぜなら、発見から7時間30分で回収に来ました。発見が送信されたと判断します」
「この異物ですが、当軍事基地以外にも設置されているのではないかと考えられます。慎重な対策が必要です」
「最後に、異物が僅かに残っていた物を遺伝子解析しました。初めて見る遺伝子構造であると報告されています」
「以上、説明を終わります。質問はありますか?」
会議室がにわかにざわつき始め騒然となる。
皆が皆、所属内でどの部分に関係しているか検討を始める。
一人の手が上がる。
「どうぞ」
「研究部門のチーフですが、ちょっと言いづらいですが、使用された技術が地球以外の技術と考えていいですか?」
「今有る技術では想像も出来ない技術が使われていると判断できます。したがって、その可能性は高いです」
答えを聞いた研究部門のチーフは、何か考えるように口を動かす。
そして話す。
「これは、最高の物理学者に意見を聞く必要を感じる」
対策本部の暫定議長が声を上げる。
「まず対策を考えよう、他の場所にも異物が有るのかの捜索。発見した場合の対応。侵入者の捜索等々、一つ一つ片付けよう」
続けて議長は、議題を出す。
「まず最初は、異物の捜索だ」
壮年の軍服を着こなした男が発言する。
「国防軍元帥だ、軍事情報が外部に出ているのは問題だ。直ぐにでも捜索して見つけ回収する」
議長が元帥を睨み問いかける。
「回収後、黒羽の少女が来たらどうすのかね?」
「捕獲する」
周りが一斉に元帥の顔を見る。その顔には今までの話を聞いていなかったのかと。議長が代表して問う。
「話では、捕獲は困難に思うが?」
「それを考え実行するのが軍の任務だ、相手が攻撃してこになら人的被害もない」
「何時攻撃する分からないのに?」
「やってみなければ、分かるまい」
「わかった、たしかに捜索は必要だ。しかし、捕獲は極秘で慎重に行ってもらいたい。戦闘が起こっても人的被害が最小になるように計画する。普通の基地や一般人が居るところではダメだ。いいかね?」
「わかった」
「それと、当面は極秘だ。死人が出ても公開できない。それでも大丈夫か?」
「問題ない」
議長は結論を出す。
「この件について、最終決定は国家安全保障に問い合わせる。
他に、この対応に意見の有る人は居るか?」
そう言って議長は、一人一人の顔を見る。
皆静かだった。
「では、異物の捜索と捕獲は決まった。次に黒羽の少女に関する捜索や手がかりを見てける作業」
「情報局が担当しよう」
「次に、現在の資料とこれから出る資料や情報の分析、未知の技術の分析」
「情報局の研究部所が行う」
こうして、それぞれの作業分担が決められていく。
「議題の最後に、極秘捕獲作戦以外で黒羽の少女に出会った時だが、情報収集や話をしてもいいが、武力衝突は避けてほしい。無闇に敵対的関係を構築したくない。いいかな?」
議長が全員の顔を見渡す。
元帥以外皆、静かに頷いている。
議長は元帥を睨み。
「元帥、捕獲計画以外の衝突は無しだ、いいかね?」
「わかった」
元帥は表情を変えなかったが、どんな事をしても捕獲してやると、顔に書いてあった。
議長による会議の終了が告げられる。
「以上で会議を終了する。10日後に経過報告と対策会議を行う。国家安全保障会議も今回の件は注目しているので、慎重に対処していただきたい」
こうして、黒羽の少女の捕獲計画が秘密裏に計画される。
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