第36話 捕獲作戦


★★★★★ アリス主観


 今は夕暮れ私達の部屋の中。

 リリスから潜入調査ユニットが発見された事が伝えられ、高速で荒野に有る周りに民家がない軍基地に運ばれていると聞いた。状況から考えてリリス捕獲作戦が実行されたらしい。


 とうとうアメリカ連合の1個師団の最新兵器と戦う時が来た。今までは防御と通り道の排除だけをしていたリリスが、相手の武器を破壊する攻撃を行なう。

 巻き込まれて死人が出る、仕方が無いこれは戦いだ。リリスにとって通り道を塞ぐ物を退かす程度の攻撃だが、相手にとっては最悪だろう。


 リリスいわく、これは政治的武力行使、それ以外の意味はない。使う力も個人武力程度の力。私はそれを見て実感しよう。


「リリス、準備はこれでいい?」


 私の姿を見て確認する。何時もと同じ白ゴスだが、今日はリリスと同じポーチ付きベルトをしている。それも白だ、リリスのこだわりがブレない。

 ベルトに付いている2センチの球10個は、防御攻撃レーダーと多彩な機能を持っている。それが10個半端ないです。

 そして、ポーチ内にはアメリカ連合に渡す会談申込みの封書。


「問題ない、では行こう」


 部屋のドアを開け廊下に出ると裕二がいた。


「おっ、今日はおめかしして何処かにお出かけか?」


「うん、アメリカ連合に行ってくる。遅くなると思うので気にしないで」


「ア、アメリカ連合か。気いつけて行けよ」


 やっぱり引くよね、仕方が無いこれが私達だ。

 手を振って廊下を歩く。


「行ってきます」


 庭から垂直に飛び立つ。成層圏に入ると上に人が見えた。近づくとリリスが9人居た増えてる…… 全員同じ姿で私にも区別がつかない。


「あれ、回収は3人じゃないの?」


「確実を期すために、同じ時間に封書を10箇所に渡す」


 なるほど、10箇所に渡すのか。それはアメリカ連合も驚く、さすがリリスさん半端無いです。これも政治的判断だろう。


 11人で成層圏をアメリカ連合に向かい飛ぶ。

 アメリカ大陸に着き、7人が別れる。残り4人が回収場所に向かう。回収場所に到着後リリスが言う。


「下より、レーダー波を幾つか確認、すでに到着を補足された。光学望遠鏡で画像も見られていると考えられる。アクティブ重力空間波レーダーでは、各種戦闘機、警戒機、基地から離れて囲うように各種機動兵器を確認する。ミサイル、レーサー兵器、粒子ビーム兵器、物理兵器を多数確認」


 おおーー、驚きと関心が声となって出る。

 アメリカ連合軍は本気だ。


「予定通り作戦を開始する」




★★★★★ 黒羽の少女捕獲作戦本部 (三人称)


 異物が設置された基地からを囲うようにある、包囲網の更に外に有る司令部。大型トレーラーが5台横に連結され一つの部屋になっていた。その周りには電源車やレーダーや各種観測車両がある。

 黒羽の少女捕獲作戦本部。

 中央には大きなテーブル、そのテーブル面には各種電子機器やスクリーンが配置された作戦本部中央司令所、周りの椅子には数人の上級軍人が座っている。その中でアメリカ軍元帥はゆっくりと周りを見渡していた。


 テーブルの周りには、各種電子機器とスクリーンを操作するオペレータが20人以上居た。室内には電子音、ファンの音、人のざわめきが溢れていた。


 時間は午前11時、オペレータの一人が大声を上げる。


「西12より高速飛行物体を確認しました。高度はおよそ30キロ成層圏。光学監視をレーダーと連動して向けてください」


「了解、光学監視向けます………… 速度が早く追尾できません」


「目標、減速しています」


「追尾成功、画像出ます」


 大型スクリーンに画像が出る。そこにはぼやけた黒い点が3つと白い点が1つ見え、画像が大きく揺れて固定されない。

 元帥が叫ぶ。


「もう少し鮮明に出ないか?」


「目標静止、画像鮮明になります」


 画像が止まり、目標にズームしていく。画像には3人の黒羽の少女と1人の白い少女が分厚い大気の影響で揺らめいて写っていた。一人のオペレーターが目大きく見開きこぼす。


「あの高度、あの速度で、生身のまま…… 信じられん。

 減速の慣性圧で人が潰れるほどの力が掛かるのに……」


 司令室の全員がその画像を見ていた。

 参謀が我に返り。


「捕獲作戦を開始する。全軍に伝えろ、直ぐにだ!」


司令室が一気に慌ただしくなり。各オペレータが司令を出す。


「目標発見作戦を開始せよ、目標発見……」

「目標詳細情報をリアルタイムで送る、連動して対処」


 元帥はにやりと笑う、黒羽の少女を捕獲又は撃墜できると自信の笑いをする。

 しばらくして、画像の4人が別方向に別れる。


「目標黒3が3方向に分かれて急速降下。目標白そのまま」


「黒い少女を目標A,B,Cとし、白い少女を目標D とします」


「戦闘機隊に指令、追尾して撃墜しろ。

 レーザー、粒子ビームは10キロを切ったら発砲」


「了解、戦闘機隊に連絡、目標A,B,Cの攻撃を開始せよ」


「待機中の戦闘機も出せ!」


「了解! 待機中のブルー隊他、作戦に従い発進せよ」


 慌ただしく、参謀の指令とオペレータの声が響く。

 メインスクリーンは4分割され、4目標を追尾するが白い少女以外追尾できす。ズームアウトされて黒い点がスクリーンの中を動いている。


「間もなく戦闘機と目標Cが接触します。目標AとBは急速降下の速度に戦闘機が追いつきません」


「スクリーン右下が目標Cです。目標C回避行動に入ったようです。いえ、目標Cの移動がランダムで高速になり、戦闘機が全く追尾できません」


 右下スクリーンには、黒い点がランダムで高速に動く。それに比べ戦闘機は急速旋回をしても、直線的に見えるほどゆっくりに見えていた。黒い点はそんな飛行機の周りを飛び、ときに戦闘機の近くで相対速度0で一瞬停止する。


「戦闘機より連絡。接近した瞬間、強力な電磁パルスのようなものを受け。電子機器がブラックアウトし、レーダー等の外部センサーが故障する」


「スクリーンを見てください、数機の情報リンクが切れ失速します。乗員の脱出を確認!」


 スクリーンには数機のジェットエンジンの光が消え、慣性に従いゆっくりと落ちていく。そして乗員の脱出が写っていた。


「戦闘機隊より、機能に障害が出た戦闘機の離脱許可願いが来てます」


「離脱を許可する……」


 目標Cは周りの戦闘機が消えた後。近くに飛んでいる情報機やレーザー兵器を搭載した飛行機を次々と、作戦不能や飛行不能にしていた。



 一方地上では。


「目標A,B 高度10キロを切ります。地上からの攻撃を開始します。目標A、B回避運動に入りました」


 スクリーン右上に目標A、左下に目標Bが写っている。10キロを切った辺りから、まるで踊るように上下左右と移動し始めた。

 参謀が聞く。


「レーザーは何故撃たない?」


「レーザー隊から連絡、レーザー照準のスクリーンに全く映らないと」

「粒子ビーム隊からも、同様の連絡が来ています。照準にかすりもしないので撃てないと」


 しばらく、スクリーンを見ていたが何も起こらない。


「レーザー隊から考察が来ています。聞きますか?」


「なんだ?」


「これほど照準スクリーンに映らないのは、敵が照準方向を何らかの方法で検知しているのではないか、と考察がきてます」


「そんなことが可能なのか?」


 指令室に答えることが出来るのは、誰も居なかった。

 参謀は気を取り直して指令する。


「ミサイルを撃て」


「了解!」


 ミサイル発射の指令が各場所で響き渡る。

 遠くから横に基地を見た望遠の画像に、地上からミサイルの発射が映る。

 そして、目標AとBを映すスクリーンを見ると。遥か手前でミサイルが潰れて落ちていくか、その場で爆発する。目視では300メートル以上離れた場所で破壊されていた。


 オペレーターの声が大きく響く。


「目標AB、地上に接近!」


 大型スクリーンに映る目標A.Bの画像は、上空追尾画像から、遠方からの横方向望遠追尾画像に変わり、下に大地と地上軍が映り、上空を黒い点が動いている。


 地上100メートルから200メートルの間を黒い点が2つ飛び回る。

 そして、黒い点の通過場所の下では。

 10台程度の大きな機動車両が浮き、180度回転して裏向きになり、3から5メートル上から落ちる。

 上に有る機器や装備や兵器が自重と落下で潰れて、動かなくなる。

 中には爆発する車両が有る。

 塹壕に設置された兵器も同じように浮き落ちる。


 20分程度で軍事基地の数キロ範囲にある重兵器が裏返る。

 すでに、携帯兵器以外の重兵器は機能していない。

 目標Cは、上空数キロに滞空し、接近する飛行機を無力化していた。

 目標Bは、基地の上空100メートルぐらいに滞空し、地上兵器の無力化を行っていた。


 目標Aが基地に侵入し、回収作業を行っている。基地は自動の兵器以外無く、散発的にいろいろな捕獲の罠が動作するが、捕獲できなかった。


 回収が終了して、目標A,B,Cが上空へ飛び、成層圏に戻り目標Dと合流、作戦が終了す。


 指令室では、救助の指令が飛び回り、開始以上に喧騒の声が飛び交う。しかし、指令室中央作戦テーブルは静かだった。声を出すものは一人も居なかった。作戦全体を映すスクリーンを見ているだけだった。

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