第42話 大統領と会談 それは事実ですか?


 ソファーに座って待っていたらシュミットがやって来た。


「待たせてごめん、再開いいかな?」


「はい、行きましょう」


 シュミットの後について会議室に入る。そして先程と同じ席に座り、シュミットも座り再開する。


「リリスとアリスお待たせしました。聞いた話をこちらで検討し、幾つか質問が有ります。いいですか?」


「問題ない」


「まず、私達には先程の話が事実か検証が出来ません。それを証明する何かは有りませんか?」


「ふむ……」と言ってリリスは考える。


「具体的に何を聞きたい?」


「そうですね、まず宇宙船は何処に有りますか?」


「太陽系内に幾つか、太陽系外苑部オールトの海の外に1つある」

「その座標を教えていただけますか?」

「不可能だ、あなた方の信用が足りない」


「分かりました、次に人類を絶滅する方法は?」


「初期に作られた物がある、数百メートルから数キロの小惑星96個に推進機が付けられている。それを地球衝突軌道に載せる。3G加速の回避機動が可能」

「その証明は?」

「幾つかの小惑星を動かして地球から観測する。その座標を知らせる」

「なるほど、証明も検証も可能ですね」


 続いてシュミットは質問する。


「ライトリング銀河連合の場所は?」


「秘密」


「あなた方の技術を教えていただくのは?」


「地球人がライ連技術を入手した時点で、最優先で絶滅が決定される。これは止めることが出来ない。安全保証上の最優先ルール。誰かが技術入手を試みた場合、それを回避・妨害・回収に総ての武力が使用可能になる。最も危険な行為」


「分かりました、他に私達が検証できるものが有りますか?」


「3名ほど地球1周か、月まで行って帰ってくることが出来る。これで、宇宙航行の証明が出来る。ただし光速を超えた飛行はだめ。手持ち程度の観測機材を持って行ってみるか?」


「なるほど、それは魅力的な提案です。それは宇宙船でですか?」


「私の持つ搭載艇は総てロボット船、人が乗る場所はない。私とアリスが連れて飛んでいく」


「生身ですか?」


「月までなら数時間、酸素と食料水は必要、服又は搭乗用のカプセルが有ったほうがいい。危険はないがあなた達の判断に任せる。飛ぶ時空気もまとめて運ぶが、体積はあまり多くない」


「分かりました。そうだ、あなた方は地球上に基地をお持ちですね。それを見せていただくのは?」


「不可能、基地を見せる事とライ連技術を見る事は同じ。無制限の武力で攻撃する」


 シュミットはまとめに入る。


「以上ですか、他の方で何か聞きたいことは有りますか?」


 軍部の大将から質問が出る。

「異物につい聞きたい」


「どうぞ」


「異物はわが軍の内部に入り情報を取っている。アレは敵対行為ではないのか?」


 リリスは大将に向いて真紅の瞳で正面から見る。


「貴方は、未知の生物、未知の知性体に遭遇した場合。何も調べず、防具も武器も付けず普段着で「こんにちわ」と言って近寄っていくのか? そんな馬鹿な知性体は生き残れない。未知の調査は知性体の常識だ」


「我々のルールでは敵対行為と判断する」


「あなた方が他国に無断で調査をしている事を知っている。だが、この場で私の調査がルールに合わないと非難する。その矛盾した二面性を重要な会談で披露する。稚拙で原始的な政治システム。

 あなた方は、ルール・人道・正義・多文化共生等の言葉の中に有る矛盾した二面性をわざと放置し、あまつさえ権力者が利用している。そのような政治システムが絶滅対象種族の判断に積み上がっていく」


 リリスはひっそりと目を閉じ、一呼吸置いて目をゆっくりと開け、大佐を今にも殺さんとする瞳で睨みつける。テーブルがギシギシと重力を受け悲鳴を上げる。


「よかろう、あなた方のルールを全面に押すなら。ライ連と理解し合えない。今ここから戦おう」


 大将は青ざめて震えていた。会議室全体がリリスの威圧に押される。シュミットが正気に戻り、立ち上がって両手を双方に出し、止める。


「まてまて、戦わない。今のは無しだ。大将もいいな」


 大将は首を立てに振るしか出来なかった。

 それを見て、リリスは威圧と重力を消し。無表情に戻る。

 場が落ち着いたことを理解してシュミットは座る。

 会議室の緊張した空気が弱くなっていく。

 しばらくしてシュミットが聞く。


「非難ではなく理由を聞きたい、異物の調査目的は?」


「普通の調査も有るが、アリスの道を探す為に調査を行っている。惑星上に国家が分裂している国を地域国家という。このような文明が原子力を持つのは普通。


 しかし、多くの文明がピークを迎え滅亡するか衰退する。地球はまさにその途上にいる。何処かの国が暴発すれば終わるだろう、人類の生きる道に塞がる最短の問題が核兵器、それを詳細に調査している。

 調査を止めることは無い」


 そして一息ついて、大将に向き瞳を見つめて。右手の空いた席に手をかざし。


「もし隣の席に、アメリカ連合最大の核兵器が有リ、爆発しても私たちは死なない。暴発しないよう注意していただきたい」


 会議室全員が息を詰め、その言葉と視線に驚いていた。

 大将はまるで図星を突かれたように硬直した。


 しばらくして、リリスが大統領を見て落ち着いた声で話し始める。


「最初に軍事基地の回収をしたその後の回収に、アメリカ連合は情報収集をメインに行動していた。その理性的な対応にアメリカ連合を評価している」


 そして続ける。


「捕獲計画も、威力偵察と考えれば理性的である。私は威力偵察に対し政治的武力行使を行った。武器を破壊し、こちらの力示すことで、その後の武力衝突を抑えたいと考えた。そして、会談を申し込み、この場を作った。理性的な対話を期待する」


 会議室全体が静かになる、物音一つ聞こえない。

 そして、シュミットが休憩を提案する。


「みなさん、少し休憩しませんか? その後再開で」


 ラリー大統領が「それがいい」と賛成する。

 他のメンバーも頷いている。


「リリス、アリス休憩しよう」


「はい」「問題ない」


 そして、シュミットに案内され応接室に行く。


★★★


「飲み物は自由に飲んでいいから、のんびりしててね」


 と言って急いで部屋を出て行く。

 シュミットも大変だとつくづく思う。

 相変わらずリリスの話は半端ない、グサグサ相手を突き刺していた。最初の歓待が嘘のように動揺し青ざめ怒りと顔色が変わっていた。

 リリスも少し怒ったように感じた。でもあれはきっと怒ったポーズだ。リリスの政治力が半端ない。


「リリス、半端ないね」


「政治の場だから」


 と何気なく答える、そして仮想会話で話しかけてくる。


『アリス、ここ監視盛りだくさんだから、あまり話せない。仮想会話で行こう』


『了解、アメリカ連合も半端ないなーー、私の出る幕は無さそうで少し安心』


『アリスそれは間違い、これからアプローチされるから、気を引き締めて。それと、アリスが基地の場所を言ってもいいけど、それで大勢死ぬから言葉には覚悟して』


『それは怖すぎ』


『アプローチされて困ったり、会話に迷いが有ったら仮想会話で相談してみて。何を言ってもいいけど、その結果もアリスは知る必要がある』


『怖いです』


『人類大使だし、頑張れアリス』


『他人事のように言って、リリス意地悪』


『アリスの道は険しいのです』


『あぁーー、普通の女の子に戻りたい』


『体作り直して、仮想も総て止めて、日本の何処かに行けば、0から普通の女の子を始められるけど、する?』


『いや、ここまで知ってしまったらもう無理。覚悟します』


『頑張れアリス』


『所で、作り直すって、ガリガリ長身で胸ペタ?』


『アリスが望むなら、私は人生終了したように泣き叫んで後悔しながら作る。完成したら、絶望のあまり人類とともに絶滅を……』


『リ・リ・スーーーー、やめて!』


『冗談です』


 などなど、仮想会話で雑談をしていた。

 会議が始まるまで時間掛かりそうだった。

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