第7話 ライ連 緊急災害対策会議
ここは、ティア星系に有る人工惑星アイリッシュ。
アイリッシュの最奥に作られた緊急災害対策本部会議室。縦横30メートル高さ5メートルのVR(仮想現実)会議室である。
リアルな会議室には、VRでアクセスした多くの会議メンバーがそろっていた。
大きな扉がある以外の3方の壁は全てスクリーンが有り、各種データや映像と共に現場オペレータや技術者が映し出されている。
直径10メートルの丸い輪状テーブルが中央に有り、その中には各種スクリーンと、立体映像でワームホールの全体像が映し出されている。
立体映像には、通常であれば直径5キロのドーナッツ状のワームホール制御の巨大ユニットが見えるはずが、グシャグシャにつぶれ、所々に有るエネルギープラントが熱を持って淡い光を発していた。
その隣には、ワームホールゲートを管理するベースが3D拡大表示され、制御もなくゆっくり自転しながら浮遊している。ワームホールゲートより直線の距離メモリが有リ、数値は約50キロを示している。そして少しずつ数値が増えいるため、離れてい行くのが分かる。
いまだ、ワームホール制御巨大ユニットが重力空間嵐により型を変えている。変形の境目では、ひび割れのように変形圧力を受けて細い糸のように赤い光を出す。
既に多くの人がそろい、ざわめきが会議室を埋めていた。
テーブルには30人ほどが座り。周りを関係者が予備テーブルや椅子に座りパーソナル端末を操作したいた。座る席もなく立って機器を操作する人も居る。
正確な現場情報を集めるためと情報を共有するため、多くの関係者が集められていた。
その中、中央テーブルの一つに安全保障局ジーリアクリフ局長が座り、その後ろの予備テーブルと椅子に調査船総括部ティアナ部長がいた。
緊急災害対策本部の議長が声を上げる。
「今より、巨大ワームホール崩壊災害の緊急災害対策会議を行なう。災害対策本部の専用秘書AIより、現状報告をする」
中央スクリーン横に写っている秘書AIが一礼して報告する。
この秘書AIは情報収集能力と解析力が一般の数百倍を誇る政府所属の専用AIである。
「かしこまりました。
XX:XX時にワームホールゲートベースから緊急警報が出され、その後通信が総て途絶しています。
ワームホール崩壊の余波により、近くに有った総てのワームホールは消滅しました。そのため通信も移動も出来ません。
現在巨大ワームホールは消滅しましたが、その消滅余波が周囲100キロ圏に空間異常を発生させ、接近が出来ません。
100圏内では通信・輸送等の総てのワームホールが不安定になり、内部に入ると2次災害の危険が有ります。
ワームホールベースは初期の避難移動で外に向ってゆっくり動き、約8時間ほどで圏外に出ると予測されます。救出はその時まで困難と思われます」
続けて秘書AIは崩壊原因について話す。
「巨大ワームホール崩壊の原因について、各部所の報告からまとめた結果を出します。
ワームホール運行管理及びワームホール専門の技術者集団から。何らかの原因で出口側のワームホールが崩壊したため、巨大ワームホールの作成に蓄えられた膨大なエネルギーが短時間に開放された。
その一部がこちらに逆流し、ゲートの安定限界の負荷を超え、制御ユニットが壊れた。その後周囲に空間異常が発生し、現在の崩壊に至ったようです。
しかし、巨大ワームホールに蓄えられたエネルギーの99%は出口側で開放されたと分析しています。
なぜ、出口側が先に崩壊したかの原因は不明です。
出口側は未調査領域であり。付近に有った探査プローブ船も崩壊の余波で通信が途絶し確認が出来ません。
この宙域を調査するには、再度宇宙船通れる超長距離ワームホールを作る必要があり。1周期程の時間がかかると報告されています。
以上、報告を終わります」
専用秘書AIの報告が終わると議長が発言する。
「現在の状況は報告の通り。まずは、ワームホールゲートベースの救出計画の報告を」,
連合宇宙軍救出部隊の総括が話す。
「宇宙軍救出部隊の総括です。ワームホールベースの救出のために、空間異常ギリギリに最高度の救出船が1隻待機する。後方安全圏に救出部隊の50隻が待機している。救出船にはワイアーが長距離で取り付けられ、万一の2次災害に対処する。
また、予備の救出船を3セット準備している。
圏外まで出て来た時に救出船がベースをキャッチし、救出船の推力でベースを安全圏に移動する、以上が救出計画です」
議長が発言を受け、周りに聞く。
「以上が救出部隊の作戦だが、他に何か意見や提案はあるか? なんでもいい言ってくれ」
運輸省が聞く。
「ワームホールベースに居なかった人はどうするのですか?」
救出部隊総括。
「残念だが、空間異常が収束しないと救出部隊を送れない」
「どのぐらいで収束できますか?」
秘書AIが答える。
「分析データーでは35時間後に弱くなると出ています」
「できるだけ速く救出できるようお願いする」
「現地でリアルタイムで観測をしている。安全になりしだい救出部隊を送る。よろしいか?」
「お願いする」
その後救出計画がより詳しく議論され、救出計画と方針が決まる。
それを受けて議長が次の議題に移る。
「ワームホールが崩壊した原因について、総ての可能性について検討を始めたい」
ワームホール運行管理部が発言する。
「ワームホールが崩壊した時、1隻のみワームホールを通過していた。その報告を聞きたい」
安全保障局局長から目で指示され、ティアナ部長が立つ。
「調査船総括部ティアナ部長です。XX月XX日完成の新造船、第一級調査船リリスZA100943はワームホール崩壊とほぼ同じ時間に常時接続回線が切れ、以後総ての通信が途絶しています。
回線が切れるまで、調査船から異常信号は出ていません。
遭遇した場所はアルファ285宇宙域に出る10分前でした」
議長が聞く。
「所在不明なのかね?」
「そうです。現在ワームホールの崩壊に遭遇した場合の状況をシミュレーションしています。詳細はまだ不明ですが、ワームホール崩壊と共にエネルギーに分解され消滅した可能性が高いと出ています」
「脱出できた可能性も有るのかね?」
「今出来ているシミュレーションでは、極低い数値で船体の一部が脱出する可能性が出ています。より細かいシミュレーションが必要です」
議長が局長を見て。
「安全保障局として、行方不明の調査船の対処はどうするのかね?」
ジーリアクリフ局長が緊張した顔で答える。
「重大問題と捉えています。出現する可能性の宇宙域を捜索及び通信の回復を最優先に行います。もし通信が繋がり帰還も回収も不可能な時は、自己消滅命令を送り消去します」
ワームホール運行管理部が発言する。
「要塞規模の新造調査船に不具合が発生して、ワームホール崩壊原因になる可能性は有りませんか?」
ジーリアクリフ局長が答える。
「その点も含め、開発部門・製造部門共に詳細に調査を行っています」
議長が。
「ライ連最新技術を投入した要塞規模の調査船が行方不明は、ライ連の安全保障に最も脅威になる。連合宇宙軍及び安全保障局は、この船を速やかに発見し回収するか破壊して頂きたい」
連合宇宙軍のTOPが答える。
「連合宇宙軍、安全保障局の総力で調査船を捜索し、回収又は破壊する」
その後もいろいろな議題が議論され対策が出る。
そして、緊急災害対策会議が終わる。
会議終了直後、安全保障局局長と調査船総括部部長が深刻な顔を突き合わせ、話していた。
連合宇宙軍が乗り出した以上。調査船リリスの運命は決定したと。
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