第11話 アリス外にでる


 私は、地球征服を決めたが方法が分からない。

 ちょっとリリスに聞いてみよう。


「ねえリリス、手っ取り早くリリスの武力で地球征服はできる?」


「私が武力を使う時は絶滅させる時、武力で征服するような面倒な事はしない。戦うなら全て殺す、後の面倒事がない」


 過激な意見頂きました。

 確かに武力で制圧しても管理できないし。武力独裁による圧政政治では、文化の尊重と認められないからライ連に入れない。


「聞いた私が馬鹿でした」


「私やアリスを守る為や、調査や捜査のための個別に必要な武力行使は問題ない。将来、人類の国に接触する時、必要に従いある程度の武力を見せることも有る。これは、交渉のための物で制圧や征服ではない」


「それに、アリスや私の体が破壊されても、すぐに絶滅ではない。これは、探査や調査のユニットが壊れた扱いに近い。全面的な戦いになれば、即絶滅」


「うーーん、そうすると、影でこっそり征服準備や、指導層に働きかけて暗躍、時には力を見せて交渉。戦争したら滅亡フラグ。

 む、難しい……」


「頑張れアリス、アリスは人類からライ連への窓口。

 所謂人類大使、人類の未来はアリスの肩に掛かっってる」


「む、随分人事の様に言ってますね、もっと協力してください」


「私が出ていくと大事になる、まだ出る時ではない」


 確かに私が決めたことをリリスに押し付けるのは間違っている。

 それに、まだその段階ではないのは正しい。

 滅亡の期限が目前でもないからゆっくり考えよう。

 そして、リリスは「まだ」と言っている。

 いつかは出る必要を理解しているようだ。


「分かりました、まずは私が動きましょう、私が決めたことだし」


 少し下を向いて考え始める。

 うーーん、あれから80年、世界がどうなってるか分からない。

 まずは外の状況を調べないと。

 まて、まずは此処はどこ?


「リリス、此処ってどこ?」


「日本の岐阜県の山奥、地下300メートルに有る」


「地下なのか! 外に出られる?」


「出られるが課題がある。今着ている服だが織り物の布ではない、私が作ったもの。人類技術ではないから外に残せない、人類技術の服が必要」


 体から力か抜ける、最初からつまずいている気がしてきた。


「外に残さなければ問題ない、残しても回収すればい。アリスにその事を理解してほしい、力による強行も有る。


 既に、世界中に調査端末や潜入端末がある。見つかった場合、秘密裏に回収している。その時多少の武力も使う時が有る。人を殺害はしていないが、多少強引な回収は有る」


 動作が固まった。

 すでに、武力行使してましたーー、爆弾発言頂きました。

 リリスは意外と過激で行動派でした。


「生存・安全確保・調査・準備には必要なこと、問題ない」


 さすが、第一級調査船の発言が半端ないです。

 まて、ライ連技術で秘密裏に強引に回収、それって。


「秘密裏に回収、それって世界中に有る不思議現象はリリスが原因?」


「かもしれない」


 不思議現象製造機リリス、世界は君の活躍を期待している。

 私もきっとそうなるかも。


「とにかく、明日朝一で外に出よう。現在を知らないと何もできない」


「了解」


 部屋に戻り、80年前の仮想パソコンを立ち上げ、メモ帳に今後予定を書き始める。


「はあーー、これもめちゃ古いんだよね」


 技術趣味全開な私は、最新パソコンを触って見たい。

 パソコンが有るのか?

 いやその前に、ライ連の未来技術をふんだんに使って、未開のパソコンをシミュレーションして使う。

 なんとも残念な使い方だった。



★★★★★


 翌日の朝、8時過ぎに目が覚めた。

 昨日夜遅くまで、パソコンを触ったり、明日の外出を考えたりして、なかなか眠れなかった。

 だから起きるのが遅くなってしまった。


「リリス、おはよーー」


「おはよう」


「さっそく外に出たい」


「了解、こちらに来て」


 と言ってリビングの奥に有る入ったことのないドア行き、開けて隣部屋に入る。

 部屋は大きく20畳ぐらいで高さが4メートルほど、乳白色の壁と木の床、家具も何もない四角い部屋に入ったドア以外の3方向に大きな両開きのドアが3つ有った。

 その片隅の天井に縦横3メータの穴が有った。

 穴に近づき上にのぞいてみると、遥か上まで垂直の立坑と照明があった。

 壁は白っぽく平で階段も何もない。


「これ、どうやって登るの?」


「アリスは飛んだことは有る?」


「飛行機なら」


「では最初は私が飛ぶ、アリスも飛び方覚えて」


「私も飛べるの?」


「体の中に重力空間制御ユニットがあるので飛べる」


 慌てて自分の体を見て触る、柔らかくて人肌の感触だった。

 どこにも機械らしい物がない。


「びっくり、正にオーバーテクノロジー」


「では、捕まえる」


 と言って私を背中から手を回して抱きつく。

 リリスの翼がバサリと全開した、全幅は2メートルぐらい、部屋に居る時は小さくしているか背中にたたんでいる。


 そして、何の音も出ずに少し浮いた。

 わ、浮いてる、リリスに腕で支えられてない、まるで無重力になったように浮いてる。

 足がブラブラする、髪の毛が浮遊する。

 後ろから支えてないと空中でふらふら回転しそう。


「浮いてる、浮いてるよリリス、まるで空中遊泳みたいに」


「私たちの周りに長方形の空間を設定し、上向きに1Gの重力をかけた。だから、私たちは今無重力状態に近い。これがライ連の推進方法。

 次に、同じ空間内に横方向に重力を足す。これで進行方向に進む、とても簡単」


 二人は穴の下にゆっくりと移動した。

 そして穴の下に止まり、上向きに移動しはじめる。

 移動というより、上に向かって落ちてる気がする。

 周りには壁と照明が流れていく。

 そして上に向かって加速しながら落ちていく。

 周りに何の作用も見えないし聞こえない。

 噴射とか風とか、電磁力場とか、何もないのに移動している。

 リリスの翼も羽ばたいてない。

 ライ連の科学技術すごすぎ。


 上を見てみると穴の終わりが、どんどん近づいてくる。


「リリスぶつかる!」


「大丈夫」


 上に落ちていたのが、下に重力がかかり急減速した。

 そして、穴の横に10畳ぐらいの部屋が有リ、立坑の終わりで横に移動して部屋の中央で足が床に着く。

 地球の重力が戻ってきた。


「これは何というか、飛行というより、常に落ちてる感じ。結果として飛んだかな?」


「そう、主観的には進行方向に落ちるか、減速のために逆に落ちる。これがライ連の移動方法」


 遥か未来の技術だと分かる。人類は重力なんて操作できない。

 重力は物質が勝手に作るもの、装置で自由に作れない。


「重力ってどうやって作ってるの?」


「作ってはいない、人類の言う所の多くの平面宇宙の重力が5次元時空に拡散している、その重力をこの時空に借りた。それ以上は聞いても理解不可」


「ふふふ、技術馬鹿を舐めないで、何となく分かる。平面宇宙に拡散している重力を借りた?」


「そう、後は重力の強さとベクトルは自由にできる。そして指定の空間内だけ重力が5次元宇宙から出て、空間を抜けると元に戻る。だから、指定空間外に重力が影響しない」


「重力を自由に出入りするライ連技術、恐るべし」


 部屋の先に有る自動ドアを開けると、そこは薄暗い洞窟だった。

 後ろを見るとドアは洞窟の土壁そのもので、ドアと分からない。

 洞窟の先には、草や木や蔦が絡まり僅かに外の光が見える。

 秘密基地に相応しい出口だった。


 その、出口に歩いていき、蔦を分けて外に出る。

 外から見ると洞窟が有るように見えなかった。

 周りを眺めると山の中腹辺り、そこは鬱蒼と木々が茂る森の中。

 アリスになって初めて外にでる。

 深呼吸をする、森の匂いがした。

 さあ、80年後の世界を見よう。

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