第6話 トイレユニット

新しいトイレはプラスチックの甘い匂いがした。

モジュール2に移動してきてトイレユニットを初めて使う。

探査機「はやふさ9」は有人機なのでトイレユニットも当然ついている。

室内の「ふすまドア」を横にスライドさせると太いホースとボタンがある。

ホースに尿をすれば吸引してくれるというわけだ。

吸引ホースの先端のカップは取り換え可能。

大きい方をするときは、それ用のカップを付ける。

尿はリサイクルしてキレイな水となる。

大きい方はフリーズドライにして壁の裏のタンクに保管される。

断熱のため四方の壁裏には空間がある。

内壁と外壁の間は、生命維持装置や廃棄物タンクのスペースとなる。

さてトイレとくれば次は風呂だ。

しかし「はやふさ9号」各モジュールに風呂は無い。

風呂無しトイレ付きの10戸の四畳半が宇宙空間を飛ぶ。

(10個のモジュールは数キロの距離を保って必要な時にドッキングする。)

風呂もシャワーも無いのでお湯を染み込ませたタオルで体をふく。

10年間も風呂に入れないのは残念だが、俺は気にはしない。

身の回りの生活を気にしないのも宇宙に必要な才能か。

ヒゲは電気カミソリ。

髪は電気バリカン。

爪は安全つめきりを使う。

・・・そう、ここにはハサミやナイフが無いのだ。

ハサミやナイフは体を傷つける可能性がある。

特に頭部や手首などを深く傷つけると生命にかかわる。

本人に傷つける気が無くてもヒューマンエラーというのがある。

「はやふさ9」はヒューマンエラーを極限まで排除した有人機だそうだ。

だから俺は操縦も機器の修理もさせてもらえない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る