第39話 ゴーサイン

少し気分を変えて「おかゆ」状にして白米を食べた。

給水器からの湯を多めにしてフリーズドライをふやかせれば完成だ。

ふりかけ「ひよこのり」をかけて頂きます。

頭を使うと腹が減る。


俺が思いついたアイディアを地球のJASA本部に検討してもらった。

無重力空間で火薬が作れるか?

宇宙ステーションのラボでの結果待ちだが、一応ゴーサインは出た。

理論的には可能なので、さっそく火薬を制作し始めることになった。

ラボでの実験結果を待っていると時間切れになる恐れがある。

そのため出来る準備はもう初めておくというわけだ。

JASA本部からのアドバイスに沿って、こちらでも再検討した。


まず火薬は酸化剤を含んでいるので真空中でも燃える。

火薬の玉のようなものを作って点火する。

モジュール6のイオンエンジンを改良すれば点火出来るだろう。

ロボットアームでイオンエンジンに火薬玉をセットして点火。

この爆発の反動でモジュール6と連結したこのモジュール8が進む。

複数の火薬玉を次々爆発させながら加速する。

このあたりは核パルス推進と同じだ。

核爆弾の代わりに火薬玉を使う。

進む方向はモジュール6の角度などで状況を見て調整する。

俺が乗っているモジュール8のイオンエンジンでは爆発させない。

爆発の衝撃で穴が開いたり故障するリスクが大きいからだ。


おっと、肝心の「火薬」作りについてだな。

黒色火薬の原料は硫黄、木炭、硝石だ。

硫黄は、生命維持装置の触媒からも生成できる。

木炭はモジュールの内装で木材も使われているので、なんとかなるだろう。

問題は硝石だ。

硝石の製造方法は「培養法」をむこうのモジュール6で行う。

「培養法」は土、草、糞尿を混ぜ合わせて数年間待つ。

ときどき混ぜあわせる必要はあるが基本的に放置だ。

バクテリアの働きでアンモニアが亜硝酸に変わる。

最後にそれらを煮詰めて硝石を作る。


土は土壁を壊して使う。

草はタタミを解体して使う。

糞尿は、モジュール6の壁裏のタンクに保管されている。

2年分の大量のウンウンがすでに保管されている。

無意味に保存されていたウンウンが、こんな利用のされ方をするとはね。

尿は毎日こちらで作って、向こうのモジュールへ送る。

ウンウンは送らなくても量は足りるだろう。

俺は毎日快便なのだがJASAの試算ではもう充分だそうだ。


「核パルスエンジン」の「核」の代わりに「ウンウン」を使う。

だから「ウン・パルスエンジン」と名付けられた。

JASA本部のひとりのスタッフが言い出したのが定着したらしい。

ユーモアも大事だが、こっちは命がかかっている。

まったく。

この「ウン・パルスエンジン」で地球へ絶対に帰還してやる。





































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