第20話 ボタン

照明がチカチカ消えるリズムに法則性を見つけた俺は、声をあげた。

短い点滅は10回以内。

長い点滅は5回以内。

これは「ひらがな」の横と縦の個数だ。

例えばサ行ならアカサタナのサで短く3回。

「ソ」ならサシスセソの5個目で長く5回。

その規則で照明の点滅のリズムを文字に直すと

「トイレノ ホタンヲ オセ」

「トイレの ボタンを 押せ」

やはり人工知能CPUは壁の裏で生きている。


俺はトイレユニットを開けて吸引ボタンを文字信号にして押した。

俺「リカイシタ」

CPU「リョウカイ」

(以降は漢字交じりに直して表記する。)


俺「食糧無し」

CPU「地球と対応を検討中」

俺「他のモジュールに移りたい」

CPU「ハッチの故障につき検討中」


出入り口のハッチ故障?

はやふさ9号の各モジュールには、それぞれハッチが一か所づつ設置されている。

ドッキング時はその1つのハッチを向かい合わせに使って接合する。

もしドアが一つしかない部屋で、ドアが故障したら・・

ハッチが壊れたら出られない

どうするんだ

食べ物も無いのに


CPU「ノートを有線せよ」

俺「有線とは?」

CPU「型番●●●● 有線 で検索せよ」


せよ せよ ってお前は何時代の人工知能なんだよ。

検索するけども。

なるほど、手元のノート型PCは有線するコネクタがあるんだな。

珍しい。

しかし原始的だな。

直接、コードをつないで通信するとか。

昔は皆こんな事やってたのかな。

今では電源さえ有線は珍しいのに。


トイレユニットのメンテナンスパネルを開けるとコードがあった。

これはメーカーがテスト用に使っていたものだろうか。

そのコードをノートPCに直接つないで、やっと「有線」した。

モニター画面に文字が来て「会話」可能と分かった。

CPU「これから現状報告をします。」


現状報告によると地球のJASA本部とも通信出来るみたいだ。

判明したのは、モジュール室内への無線設備は全て故障していること。

もともと、この探査機は無人用に開発されたものだ。

もし室内の無線設備が壊れても自動ドッキングで乗り替えるだけ。

室内の無線設備の耐久性は少ない。


ひとまずJASA本部と人工知能が付いていれば安心だ。

CPU「では、今回の衝突事故の詳細を報告します。」














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る