第44話 減速

「はやふさ9号」は加速に失敗した。

失敗といっても加速しすぎて止まれないわけだが。

奇妙なことに人工知能CPUがアイディアを提案してきた。


CPU「このまま3発目の火薬玉でさらに加速しましょう。」

俺「そうすると短期間で地球に到達できるな。でも止まれないんだろ?」

CPU「スイングバイを使います。」

俺「スイングバイ?」

CPU「惑星に探査機が近づくと重力で増速します。」

俺「さらに加速してどうするんだよ。」

CPU「いえ、減速スイングバイを使いましょう。」

俺「スイングバイで減速できるのか?」

CPU「はい、惑星の進路の後方で接近すると減速できます。」

俺「へえ。地球周辺だと木星があるな。」

CPU「はい、木星の他にも使えそうな天体はあります。」

俺「それを今、一瞬で考えたわけ?」

CPU「はい、おおまかな軌道計算まで行いました。」

俺「スゴイな。」

CPU「ただし、火薬玉の効果が予測出来ないのでリスクはありますが。」

俺「それでも、このアイディアが最も地球帰還の可能性が高そうだ。」

CPU「はい、さっそく3発目の火薬で地球方向へ加速しましょう。」

俺「ああ、そうだな、4発目は使わないのか?」

CPU「4発目は減速スイングバイの後に使います。」

俺「減速スイングバイだけでは止まれないから?」

CPU「はい、ラスト4発目で減速して探査機を地球周回軌道へ乗せます。」

俺「ラスト4発目は最後のブレーキの役目だな。」


「探査機はやふさ9号」に大気圏突入能力は無い。

このまま突入すると熱でこのモジュールが破壊されてしまう。

だから当初から地球帰還時は、まず周回軌道へ乗せる予定だった。

人工衛星のようにグルグル地球を周回する軌道に乗る。

その後、宇宙ステーションとドッキングして俺が乗り移る。

そして宇宙ステーションからロシアの宇宙船などで地球へ降りる。

「探査機はやふさ9号」の積んできた資源は、後から補給船などで降ろす。

まあ、今回は資源回収は出来なかったのだが。


減速スイングバイについては全く知らなかった。

航行は完全に人工知能にまかせているからな。

今回は奇妙なことに人工知能CPUがアイディアを提案してきた。














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