第50話 心

木星スイングバイまで、もうすぐだ。


軌道を修正するためモジュール6の不要部品を投げ捨てた。

ロボットアームで部品を取り外して投げ捨てる。

すると反対方向にチカラが加わってモジュールの軌道が微調整できる。

地球までは残り1か月ほどか。

軌道修正はこれで最後になるから、残りの過程でやれる事は少ない。

あとは最後に火薬玉を爆発させてブレーキをかけるぐらいか。


俺「豆腐小僧、あとは俺たち地球周回軌道に乗るだけだな。」

CPU「はあ。。」

俺「なんだ、元気ないのかよ。」

CPU「はあ、。。まあ。」

俺「大丈夫かよ?豆腐小僧。」

CPU「はあ。。いえ、不安で不安で。」

俺「何が?」

CPU「いえ、漠とした不安です。・・・はあ。」

俺「もしかして最後のブレーキが不安とか?」

CPU「まあ、そうかもしれませんし。はあ。」

俺「はっきりしないのな。」

CPU「はあ、。」

俺「元気出せよ。」

CPU「。。はあ。気が抜けたというか。」

俺「最近、お前さんは変だぞ。」

CPU「はあ。自分でもわかっているのですが。」

俺「また冗談とか、言ってくれよ。」

CPU「はあ。ええ。ダメかもしれません。」

俺「ダメ?」

CPU「ダメです。なんかもうダメなんです。」

俺「何が?」

CPU「探査機の帰還作業に問題はありませんが。なんかダメです。」

俺「ヤバイやつか?」

CPU「はあ。私はもうダメかもしれません。」

俺「電源の問題とか?」

CPU「機械的なトラブルはありませんが。なんかもうダメです。」


人工知能の自己診断は定期的にオートで地球へ送られる。

地球からの連絡が無いという事は探査機の航行に問題は無いのだろう。

しかし原因は分からないが豆腐小僧はダメだダメだという。

地球帰還に問題は無いが、小僧的にダメらしい。

なんだ、それ?

心の問題か?

機械の心の問題とか矛盾してるだろう?

いや、しかし。

人間と見分けがつかないほどの(会話)をこなすほどの人工知能だ。

心をやってしまうという事もあるのかもしれない。













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