第35話 トースト後藤

トースト後藤「相方が今、宇宙人に捕まってましてね。」


今日はお笑いコンビ「トーストパンダ」との対談を受けた。

「トーストパンダ」は若手二人組の人気お笑い芸人だ。

後藤と山田のコンビ芸人だが相方の山田が3年前から「行方不明」である。

だから今回は後藤との対談になった。

「トーストパンダ」は何でもズバズバ言うスタイルが人気だが敵も多い。

政治家もイジル。

セレブもイジル。

マイノリティも当然イジル。

相方の山田が行方不明なのは大物マフィアをイジッたからという噂もある。

ちなみに後藤は失踪した山田の事も自己紹介のギャグにしている。

今回の対談も質問をまとめて送ってもらう形式だ。

こちらとの返信を数度繰り返した。


トースト後藤「相方が今、宇宙人に捕まってましてね。」

トースト後藤「今日はよろしく。早速ですが、地球帰還の見込みは?」


俺「よろしく。帰還は正直、無理かなあ、と思ってますよ。」


トースト後藤「なんで、そんなに冷めてるの?自分のことでしょ。」


俺「マヒしてるのかな、俺。それにしてもズバズバ聞いてくるねえ。」


トースト後藤「はやふさプロジェクトの過去の死亡事故の話なんだけど。」

トースト後藤「前回の8号で帰還中に搭乗員が自ら命を絶ってますよね?」


俺「記録は読んだよ。おれは死ぬつもりは無いけどね。」


トースト後藤「怖くは無い?強がってない?同じような状態とは考えない?」


俺「地球との通信が落ちた時は怖かったけど。」

俺「生きるのに必死で、それどころじゃ無かったというか。」

俺「ずっと怖いと言えば怖いし、怖くないと言えば怖くない。」

俺「正直、恐怖感の有無は分からない。」


トースト後藤「税金を大量に使っているプロジェクトの失敗については?」

トースト後藤「資源回収が失敗に終わるわけだが、その責任については?」


俺「法的責任は無いだろうが、まあ責められるだろうね。」


トースト後藤「ずいぶん他人事だ。何兆円のプロジェクトだと思ってんだよ。」


俺「言っておくが、予算規模を考えたら乗るやつなんていないよ。」

俺「一生かかっても払いきれない責任を負うとしたら誰も乗らない。」


トースト後藤「宇宙生活について。一般的な生活とは違うと思うが。」

トースト後藤「世間から取り残された、という感覚はある?」


俺「人生においての、あせりというか、時々は感じる。」

俺「もし無事に帰っても自分が浦島太郎になるんじゃないかって。」

俺「社会常識とか経験とか地上とは違うと思うから。不安だ。」


トースト後藤「もう帰って来いよ。」


俺「はあ?燃料が無いんだよ。燃料が。」


トースト後藤「それは知ってる。ごたくはいいから帰って来い。」


俺「言われなくても努力してる。黙ってまってろよ。」


トースト後藤「心配しないで、とにかく帰って来い。」


俺「うるせえよ。毎日考えてるよ、帰還方法は。」


トースト後藤「帰れないなら、俺が行ってやる。」


俺「来れんのか?面白い、来てみろよ。」


トースト後藤「居場所は分かってんだよ。そこは5年で行けるんだろ?」


俺「俺の食糧が持たねえよ。あと2年でオダブツだ。」

俺「だいたい後藤、お前じゃ適性試験に受からねえよ。」


トースト後藤「言ったな、この野郎。とにかく帰って来い。」


俺「待ってろよ。絶対、地球に帰ってやるからな。」


トースト後藤「必ず生きて帰って来い。分かったか、この野郎。」


「トーストパンダ」は若手二人組の人気お笑い芸人だ。

後藤と山田のコンビ芸人だが相方の山田が3年前から「行方不明」である。



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