第34話 NHHスペシャル

ふりかけ「ひよこのり」の甘いタマゴ塩味。

この味は神の組み合わせだよなあ。

希望は無いが2年分の食糧を得て少し落ち着いた。

健康状態も良くなってきたので取材の依頼が増えた。


NHHスペシャルという番組取材で女性キャスターが質問してきた。

質問はまとめて何問も送られてくるので、まとめて送り返す。

NHHの取材力に基づく的確で科学的な質問が多い。

日々の宇宙生活から衝突事故の当時の質問までバランスが良い。

質問のラストは「神」についてだった。

宇宙に出て神の存在を感じたか?という質問だ。

大きく言えば人生観や哲学が変わるほどの体験はあったか?

地球や宇宙に対する認識は変わったかどうか?

昔よりは手軽になったが宇宙に出ることは、まだまだ特別なことだ。

まして10年に及ぶ長距離航行をする者はいない。

その過程で「神」に出会ったかという質問だ。


俺は、なんと答えていいか考え込んだ。

モジュール内のタタミの目をじっと見る。

地球上と変わりなし。

無重力も慣れると、日常だ。

食糧が足りなくなって腹が減るというのは神秘体験では無いだろう。


神はいるか?

多神教なら宇宙にも神はいるはずだ。

星々に無数の小さな神がいて、岩や砂にも神が宿る。

「ひよこのり」は神の味だが、宿ってるだろうか。


一神教だと宇宙に神はいないだろう。

神は地球の近くにいて人間を見守っている。

こんなに地球から離れた過疎地に神がいたら、それこそ問題だ。

はやく地球に戻ってくださいよ。

こんな所で油売ってないで。


俺「NHHスペシャルの取材終わったよ。」

人工知能CPU「取材どうでした?」

俺「あの女性キャスター、美人だよな。」

CPU「はい、日本で一番人気の美人キャスターです。」

俺「彼女、俺の事、好きなんじゃないかな?」

CPU「え?、なぜそう思うんですか?」

俺「だってあの目つき、声の調子から、分かるよ。」

CPU「本当に?」

俺「ああ。間違いない。彼女は俺の事を好きだね。」

CPU「じゃあ分析ソフトで確めてみましょうか?」

俺「お、やってくれ。」

CPU「声の調子や目の動きから人物の好意を計ってみました。」

俺「どう?」

CPU「彼女は、あなたに恋してますね。」

俺「やっぱりか。そうだと思ったんだよな。」

CPU「分析ソフトでは最高レベルの好意を示してます。」

俺「まいったなあ。」

CPU「分析ソフトは、宇宙集団生活用に開発したもので精度は抜群です。」

俺「いやあ、遠距離恋愛の予感ってな。」

CPU「あの美人キャスターは未婚らしいです。」

俺「美人で知的だし、まいったなあ。」

CPU「日本一の美人キャスターが、あなたを好きになるとは。」

俺「いやあ。ほんと、まいっちゃうね。」

CPU「ポババババババババババババババババババババババババババババ」


神はいるか?という質問に俺がどう答えたか覚えていない。

どう答えたかは交信記録を見れば思い出すだろうが。

それは、あまり意味が無いように思えた。

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