第33話 詰み
昨晩は騒ぎすぎたので声が枯れている。
白米を食べ過ぎて小ゲロを吐いた天井を掃除した。
食糧の尽きたモジュール6から食糧満載のモジュール8へ来れた。
これで2年分の食糧が手に入った。
今は、だいぶ落ち着いたので地球への帰還方法を考えている。
人工知能CPUと(会話)して良いアイディアがあればJASAへも送る。
俺「食糧は2年もつが燃料が全く無いんだろ?」
CPU「はい、救助船が5年後に来ますが、間に合いません。」
俺「戦国の保存食も数週間分しかないよな。」
CPU「はい、残念ですが。」
俺「タンクの底に残った燃料でイオンエンジンを吹かすのはどうか?」
CPU「姿勢制御が精いっぱいで、推進には不足です。」
俺「だめか。」
CPU「現在、地球のJASA本部も色々考えてくれてます。」
俺「近くの小惑星に燃料や食糧を探しに行くのはどうだろうか?」
CPU「真っ先に検討しましたが、燃料食糧のある小惑星はありません。」
俺「未知の小惑星とか、近くにあるんじゃないか?」
CPU「いえ、ここまで来る過程で未知の小惑星は調べつくしました。」
俺「そりゃあ、探査機だから当然か。」
CPU「はい、はやふさ9号は実質的に資源回収船ですが探査機能もあります。」
俺「それ聞いたことがあるぞ。」
CPU「ええ、資源回収船に、あえて探査機と名付けています。」
俺「そう、もし資源回収船なら手ぶらで帰ることは許されない。」
CPU「はい、探査機なら探査活動しただけで一応ミッション成功ですからね。」
俺「大人の事情というか予算を取るための便法というか。」
CPU「まあ、世間は資源回収船だと皆思ってますがね。」
俺「ハハハ。」
俺「ああ。話がそれてしまったな。地球への帰還方法だよ。」
CPU「現状では少しでも進んで救助船を捕まえるのがベストです。」
俺「そうだな。2年間で救助船の所まで進めれば勝ちだ。」
CPU「イオンエンジンで3年かかる距離を2年で進めれば勝ちです。」
きついねえ。
まず通常3年かかる距離を進まないと食糧補給は出来ない。
つまり食糧は2年分しかないので2年進んだ後に餓死してしまう。
これは燃料が充分にあったとしても、餓死が待っているという話だ。
現実の燃料タンクは残量ゼロで全く進めない。
たぶん、このままじっとして2年後にここで餓死するだろう。
もし燃料が残っていても救助船に届かず2年後に餓死。
現実は燃料ゼロだから、ここで2年後に餓死。
燃料の有無にかかわらず2年で死ぬな。
詰み。
この将棋は、だいぶ前に詰んでいるのではないか?
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