第27話 ベーカー街

ここ数日、映画も見ずに人工知能と(会話)ばかりしている。


俺「ハッチは開けられないが、とりあえずドッキングは可能か?」

CPU「はい、ドッキングだけは出来ますが。」

俺「ドッキングすると水や電気のラインを共有出来たよな?」

CPU「よくご存じですね。」

俺「自分の命にかかわることだから勉強しただけ。」

CPU「ドッキングすると2つのモジュールの生命維持ラインがつながります。」

俺「通常ならば、つないで時間をかせぐ間にハッチを開けて乗り移ると。」

CPU「はい、そうです。」

俺「でも今回は故障して出入り口のハッチが開かない。」

CPU「はい。」

俺「そこでだよ、ワトソン君。」

CPU「誰ですか?ワトソン君って。」

俺「ベーカー街のあいつ。いや、話つづけるぞ。」

CPU「?」

俺「ドッキングすると飲料水をモジュール8からモジュール6に送れるんだよな。」

CPU「まあ、そうなりますが、こちらのモジュール6の水は足りてます。」

俺「水に白米を溶かして向こうから送れば、食糧を得られるぞ。」

CPU「・・・」

俺「まず向こうのモジュール8のハッチを開けてロボットアームを突っ込む。」

俺「アームで白米をお湯で溶かして、給湯器から逆流させて水タンクへ。」

俺「ドロドロの、おかゆを生命維持ラインを通じて、こちらに送るんだ。」

CPU「おかゆ・・JASA本部にアイデアを提言してみます。」

俺「おかゆ作戦で生き残ってやるぞ。」

俺「必ずやってやる。」

寝ないで考えた、おかゆ作戦だ。

JASA本部のエンジニア達も驚くぞ。


8時間が経過して地球から返答が来た。

俺「おかゆ作戦どうだった?」

CPU「JASA本部も実機シミュレーターで真剣に検討したようです。」

俺「それで?」

CPU「・・・開始2分で水の配管が詰まりました。」

俺「ハハハ。つまったって?ハハハ。」

CPU「・・・」

俺「ハハハ。おかゆ作戦だけにノリノリだったのにな。」

CPU「・・・」

俺「バカみたいだな俺は。ハハハ。」

CPU「・・・」

俺「もとから、つまらんアイデアさ。配管は、つまったけども。ハハハ。」

CPU「・・・」


CPU「あまり気を落とさないで、名探偵。」

俺「ああ、・・ずいき汁とかの戦国の保存食はもう無いよな。」

CPU「はい、全て消費しました。」

俺「この城も、ついに落城か・・・。」

CPU「もうやめましょう。そういうのは。」

俺「ハハハ。」

CPU「・・・」

俺「・・・」


CPU「ここはベーカー街221B、名探偵の下宿ですよ。」

俺「ということは、向こうのモジュールにはハドソン夫人が住んでる、か。」

CPU「はい、あの下宿の女主人は美味しい朝食を作って待ってますよ。」

俺「ハハハ。」

CPU「ポブブブブブ。」


ベーカー街221Bの住所は実際のロンドンには存在していない。

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