第57話 GO

探査機「はやふさ9号」に大気圏再突入能力は無い。


探査機を人工衛星のように地球周回軌道へ乗せるために色々準備作業をした。

今後の予定は、こうだ。

まず探査機「はやふさ9号」第6モジュールで火薬を爆発させる。

その反動で第6、第8モジュールが減速する。

第6モジュールを切り離す。

減速後の姿勢制御は第8モジュールの飲料水を放出して行う。

探査機が地球周回軌道へ乘ったら、宇宙ステーションに回収してもらう。

細かい準備作業はあるがメインは火薬に点火するタイミングだ。


手作りの火薬の性能についてはリスクが多い。

もしも減速効果が少ないと周回軌道に乗れず太陽系外へ飛び出してしまう。

その場合、回収手段が無いため帰還は絶望的だ。

また、減速効果が高すぎると大気圏再突入をしてしまう。

この場合、断熱圧縮によりモジュールが加熱、分解、破壊される。

仮に破壊されなくてもパラシュートなどが無いため地表に激突する。

(都市部に落ちる前に戦闘機によって撃墜されることになっているから”安心”だ。)

結局ピタリと減速して周回軌道に乗らないと俺は地球に生還出来ない。


現在、俺は寝袋に潜り込みながらJASA管制室と音声通信をしている。

俺「こちら探査機はやふさ9号、地球周回軌道投入の準備できました。」

サトウ所長「みんな準備良いな。さあ、やろうか。」

サトウ所長「GOかNOGOで答えてくれ。」

「通信チーム?」「GO」

「姿勢制御?」「GO」

「軌道計算?」「GO」

「電源系?」「GO」

「外部連絡?」「GO」

「監視班?」「GO」

「人工知能担当?」「GO」

「心理担当?」「GO」

「生命維持?」「GO」

「推進系?」「GO」

「搭乗者?」俺「GO」

サトウ所長「はやふさ9号、地球周回軌道投入ミッション、カウントダウン開始。」


長い秒読みの後、火薬の爆発音が聞こえて俺は意識を失った。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る