第54話 映画

土壁が壊れて銀色の外壁が見えた。

白い豆腐のような人工知能があるべき場所はガランとしていた。


俺「ありませんでした。何も。ぎぎ銀色しか。」

サトウ所長「大丈夫だ。心理担当チームが来ているから安心しろ。」

俺「はい。で、でですが、そんなこと、あるあるあるんですか?」

サトウ所長「心理担当チームによれば、ありうる事だ。」

俺「何年間も、ひとり二役で会話しし、し続けるなんて。」

サトウ所長「ストレスに対する防御反応だ。」

俺「ス、ストレス?」

サトウ所長「孤独や、仕事のストレス。任務の重圧を忘れるための心の反応だ。」

俺「ス、ストレス。孤独。」

サトウ所長「ああ、誰にでも起こりうる心理反応だ。」

俺「仕事と言われましたが、俺、何か、し、仕事してたんですか?」

サトウ所長「探査機の保守点検から各種訓練などやっていたよ。」

俺「全く記憶に、ありません。」

サトウ所長「ウンパルスエンジンの火薬玉作りも君がやったんだ。」

俺「俺が。」

サトウ所長「そうだ、君がロボットアームを動かしてやった。」

俺「全く覚えていません。」

サトウ所長「軌道計算と修正もソフトを動かして君がやった。」

俺「操縦についても俺が・・・。」

サトウ所長「自動化されている部分はあるが、事故後は特に君が主導している。」

俺「俺が自分で操縦を。」

サトウ所長「まだ信じられないか?」

俺「は・・はい。」

サトウ所長「分析チームから映画視聴データの件が来ている。」

俺「映画は良く見ていましたが。それが?」

サトウ所長「特に何度も繰り返し見ていた映画は無いか?」

俺「いえ、まんべんなく見ていたと思いますが。」

サトウ所長「●●●●●●●●という映画に覚えは?」

俺「●●●●●●●●は、好きだったので、たしかに何度か見た記憶はあります。」

サトウ所長「手元のノートPCで君の映画の視聴履歴を検索できるな?」

俺「はい、どの映画を何回見たか、検索できます。」

サトウ所長「●●●●●●●●を検索してくれ。」


映画●●●●●●●●を検索した。

その視聴回数は3000回を超えていた。

これは同じ映画を7年間、毎日1回以上見ている計算になる。






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