烏丸千弦

南太平洋、タックス・ヘイヴン（租税回避地）として栄える島。 亡国の特殊部隊の狙撃手だった男と、かつて武器商人だった日本人の女は、その島でひっそり暮らしていた。だが、その暮らしはあ…

幕末から明治にかけて活躍した河鍋暁斎の生き様。

『蓮華荘首切り殺人事件』のニュースで世間が騒然とする中、長瀞で新たな遺跡が発見された。遺跡の横穴墓から出土した人骨は東郷国立博物館に運ばれる。そんなある日、復顔師生吹希の研究室に…

ドイツは多分、日本より時間に余裕のある国。そう。スローライフなはずなのに、彼女はいつも息切れしている。ドイツで生活することになった子育て中の透田理恵子と、彼女を取り巻く人々との、…

プラハの国立マリオネット劇場である演目が世間の話題をさらった。 『魔女の火刑』 チェコ国内で大ヒットした新人作家ヤン・エポカ原作のミステリー劇である。 一夜限りの饗宴にプラハ…

※間接的ですが性暴力の表現があります。描写は童話的ですが後味の良い話ではありません。ご注意ください。 旅の途中、おばあちゃんは語り始めた。 ボヘミアのとあるお城に、月色の髪のお…

准看護師の資格を取得し、静岡県内の刑務所の医務課に配属された刑務官の鮎京は、無期懲役の受刑者、青山に出会う。青山は若い女性を殺したあとに臓器を摘出した猟奇的な殺人犯であるにも関わ…

度重なる攻撃で荒廃したサーチブレスの町で豪商・ゴーベールの“所有物”として男娼の仕事をしているイルネスは、不治の病に冒されながらこの日も客の相手をしていた。 夜が明け、ゴーベール…

小学生の子供を持つ主人公の幸子は、地元では人気店である「海鮮ゆきちゃん」で働くパート主婦。 ある日、飼い猫が、外から首輪に手紙のようなものをつけて帰ってきた。 その中に書かれて…

KAC20231のお題を７７７文字縛りで書いた短編集を加筆修正して『大渕堂書店の閉店』にまとめました。 地元で唯一あった書店が昨年閉店してしまって。それがとても寂しくて思いつい…

17世紀、有名な「セーラムの魔女裁判」事件の直後に、アメリカ辺陬のとある村で起きた、陰惨でうしろ暗い顛末。 ラヴクラフトの短編小説『名状しがたいもの』の独自解釈をもとにした、前日…

タティン王国は、蓮の精霊を祖に持つ、と言われる王家が治める国。 平和に暮らしていたが、ある時、大陸の皇国が攻め寄せてくる。 柴田恭太朗様の自主企画【三題噺 #50】「喧嘩」「紋…

ニッチな分野で他の追随を許さない凄腕の殺し屋。 世界は、そして人々の営みは、彼の目に如何に映るのか――なんてハードボイルドに語っていますが、基本は旅日記です。 ４つの旅で、計６カ…

長距離旅客機が完全自動操縦化し、パイロットが空を飛ばなくなった近未来。 最後まで自分で飛ぶことに拘ったルークは、時代に波に呑まれながら、拗れた息子との関係を思う。 柴田恭太郎さ…

軌道エレベーターが実用化された近未来。宇宙安楽死葬を希望する顧客の、とある要望に奔走するスタッフたちがいた。 三題噺「指輪」「最速」「桜色」に参加した作品です。 https:/…

【まえがき的なやつ】 『半実話あやし奇譚』の一部（13話ぶん）を書籍化してもらいました。 本作は前編、後編の続きものもいくつかありますが、基本的に一話完結の短編集です。書籍化され…

フィレンツェの旧市街で大学教授が殺された。身分証明書には他人の名前。捜査が進むにつれ、被害者のもうひとつの顔が浮かび上がる。同僚、学生、離婚した妻、ギャングたち――関係者の秘密を…

16世紀のフィレンツェ。彫金師のジャンニ親方は裁判官に任命され、殺人事件の捜査を行うことになった。しかし行く先で正体不明の男に襲われ、工房からはルビーが紛失し、ついには裁判官をク…

主役のない物語であり、 ヒーローやヒロインのいない物語であり、 なにもかもが欠けている物語であり、 完全性から遠い物語であり、 なんでもない、 名前のつけようのない短編集です。 …

「猫は幽霊を見ていると言わているが、実際のところ何を見ているのだろう。猫は私達には見えない不思議な世界を見ているのかもしれない。それがどんな世界かは見当もつかないが、きっと素敵な…

　2000年代、山あいの小さな町に暮らす、さまざまな年齢、さまざまな立場のひとびとの、五つの短い物語。

夜陰は全てを見せぬことと引き換えに、真に見るべきものを見せてくれる。昼の陽の眩さは全てを見せることと引き換えに、人々の双眸を誑かす。何より眩し過ぎると結局何も見えない……などと嘯…

Joker Bullet #01：高２、春。 ショッピングモールで爆弾騒ぎが起こり、直後すべての出入口が封鎖された。閉じ込められた客と従業員たち。犯人の目的も正体もわからないま…

コードネーム『スピア』は、冷酷な殺し屋である。 今日もいつものように仕事を終え、次に殺すターゲットのもとへ向かおうとするが、不覚にも警察官と遭遇してしまう。 しかしその女は彼を確…

父王殺しの疑いで、神明裁判にかけられることになった王女。神に助けを求めたとき、目の前に黒衣の青年が現れる。「僕に調査と弁護を依頼するのなら、この手を取れ」――神に裁かれる王女を、…

【まえがき的なやつ】 『カクヨムWeb小説短編賞2022』への参加作品です。 最近はちょくちょく昭和初期から中期の話を書いてます。この作品もそんな感じの話で、川が舞台で、月をちょ…

キッパータックは大庭主。砂の滝が自慢の庭園がありながら、庭仕事そっちのけで清掃業に精をだし、なんにでも変身してしまうペットの蜘蛛の世話に追われる毎日。ほかにも、130歳の高齢大庭…

30代の会社員・真二郎は、昇進祝いにと錦糸町のおかまバーに連れて行かれる。だがそこには思わぬ再会が待っていた。女装して出迎えた「ママ」は、15年前に家出した双子の兄、礼一郎だった…

　イギリスの古物商、アントン家の一人息子に生まれたロジャーは、六歳の夜に占い師に予言を受ける。 「ルーヴルに行ってはならぬ」 「古物商を継いではならぬ」 「この子は銃弾で死ぬ」…

基本、拙作『罪の女の歌を歌おう、コカ畑の木陰で、カリブの波間で』を読んでくださった方へお届けする番外編ですが、これを読んで興味を持ってくださった方が本編にお越しいただけるなら、そ…

美貌の若き青年画家。彼には溢れる才能と人を惹きつける魅力があった。彼に惹かれ集まった人々との関わりの中で、その才能は大きく花開き育ってゆく。全ては順風満帆かに思えたのだが、ある出…

　19世紀後半、ヴィクトリア女王治世下、産業革命以来空前の栄華を極めたイギリスは、今まさに世界の覇権を握らんとしていた。 　英国中部の町ノッティンガムのガレット伯爵家に生まれ、シ…

宮澤悠は作家志望の青年だった。しかし憧れていた文芸部の先輩、久高美咲との肉体関係が始まってから、彼はいっさい文章を書くことができなくなってしまった。小説の書けなくなった男と、小説…

身の周りにルーズな娼館の女主人。テーブルの上の大金がなくなり、娼婦の一人が失踪する。 KAC20224参加作品です。お題は「お笑い／コメディ」。 拙作『罪の女の歌を歌おう、コ…

魂の牢獄、青春の霊安室、夢の墓場、諦観のカテドラル。 緩やかな破滅に向かう、地方都市の群像劇。

1920年代アメリカは史上最低の法律――禁酒法の制定によって狂乱の時代の幕を開けた。 渇望と熱狂が入り混じるニューヨークの街に、ニューオーリンズ生まれのコルネット奏者――ビル・ダ…

ふと手に入った一週間の休日。ゴートラスタ島で、心を休ませ、遊ばせながら、作家Ｙの不思議な作品に思いを馳せる主人公。

1972年、ベトナム戦争。娼婦の母親に去勢された日向有栖は、両性具有の河川匪賊である白ウサギ、春野華子に恋をする。 --- 出典・引用： 讃美歌461番『主われを愛す』 唱歌『…

犬とオオカミの間 (entre chien et loup)： 日没のひととき・黄昏 パリのこと、フランスのこと。日常の風景。思ったこと。 そういうのを短い文章にしたものです。…

１話完結ひと口サイズの映画紹介です。 ネタバレあり。

僕はモーパッサンが大好きです。だからあなたにも好きになって欲しいのです。 フランス文学？興味ない。 そんなことを言わず、どうか僕の読書感想文につきあってください。 取り上げる作品…

読んだ本の感想や、考えたことをオチや纏まりもなく書いていく。私の読書の割合が小説:学術書 3:7くらいの比率なので偏ったものになること必至。 文学から社会問題まで書けるだけ書いて…

1892年、フランスのオルレアン。山羊飼いのジュールは森の中で行き倒れになり、ブルジョワの子息ヤンに救われる。悲しい過去を持つ大人しく従順なジュールと奔放な明るさを持つヤンは、生…

幼稚園をとある理由で解雇されたラムカは、呆然とする中、公園でレイと名乗る不思議な少年と出会う。ラムカの親友ベティ、ベティに片思い中のポールの二人も、同じ日にレイと不思議な出会いを…

南国の太陽の照りつける市場。盗みの嫌疑で捕まった少女ふたりを警官から救ったのは、絶世の美女だった。彼女は、娼館の女王で、麻薬カルテルの若きボスの愛人。気が強くて、自由で、情が深く…