概要
今回の獲物は錬金術の奥義が書かれているという<エメラルド・タブレット>。
古代遺跡へ潜り込んだ彼は、そこで探し続けていたものを見つける。
*柴田恭太朗様が過去に開催された自主企画【三題噺 #27】「地図」「タブレット」「ブドウ」のお題を拝借しました。
*「三題噺ショートショート集」に入れようとしたら、思いのほか長くなったので独立させました。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!魂の錬金術、あるいは人間性を取り戻す物語
古代の錬金術師たちが追い求めた「変容」の秘法は、実は私たちの心の中にあったのかもしれない。荒廃した戦地で「分捕り屋」として生きる主人公が出会ったのは、エメラルドの瞳を持つ不思議な少女。その選択の瞬間に、魂の錬金術が始まる。
物語は現代の戦争という暴力の只中で、人間の本質的な価値を問いかける。高価な石板か、見捨てられた命か。
その二択の前で主人公は、自身の人間性を取り戻すための選択をする。緑の輝きを放つ少女の目は、まるで私たちの良心の象徴のようだ。
錬金術の「下なるものは上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとし」という格言が、予想外の形で現代に蘇る。物質的な価値を超えて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!口笛吹いてる 男の美学
こちらの作品、『ルパン三世のテーマ』が脳裏に流れて仕方がなかった。
アニメのあの絵ではなく、頭の中には相当なイケメンがイメージとして登場していたのだが、テーマ曲はルパンだった。
黄色い太陽。カッパドキアのような奇岩のひしめく無人の荒れ地。
戦後、日本人骨抜き政策によって、弱体化した男が愛好する対象は不二子のような妖艶な美女からパジャマ姿の幼女へと移行、刃は何かを守って強い者に立ち向かう為ではなく、弱い者をうっぷん晴らしに刺して回るためのものに成り果てた。
背中で語れる大人の男など絶滅危惧種だ。
そんな中であっても、やはり人はどうしようもなく野生味に魅了され、豪快な英傑の生きざま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!もしかしたら、世界は錬金術と共にあるのかもしれない
紛争地などで混乱に乗じて文化遺産を盗み取る、いわゆる裏稼業の主人公。
今回の狙いは、錬金術の奥義が書かれているという“エメラルド・タブレット”……。
『錬金術ってあの、石を金に変えるヤツか?』
主人公の言葉です。
私も錬金術に対して、そういった認識しかありませんでした。
ですが、何かをより良いものに変えようとしていくのが錬成であるのなら、世界は錬金術と共にあるのかもしれない…この作品を読ませて頂きながら、そんなことまで考えてしまいました。
何かを捨てて何かを得る、その選択を迫られた時、主人公が選択するのは…。
まるで、一本の映画を観たような満足感を得られる短編。
その読後感の良さと共に…続きを読む