概要
あの夏、あの日、あの場所で、私は愛を知ったのです。
お盆が近づく夏。オカルト誌の記者である真那は次の記事のため、故郷へと戻っていた。待ち合わせ場所へ辿り着くと、一人の少女が彼女を出迎えた。そして二人は、目的地へと向かう中で、あの夏について語り合う。
それは、かつての記憶。美しき音色が静かに語る、一夏の御伽噺である。
それは、かつての記憶。美しき音色が静かに語る、一夏の御伽噺である。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!孤独な少女を包み込む夏の出会いの物語
本作を読み、まず印象に残るのはその優しい筆致でしょう。
夏の涼しいそよ風に、孤独を与える雨。そういった夏の田舎町を丁寧に描写することで、とある少女の目線がまざまざと思い浮かべられます。
彼女は心に深い悲しみを宿しており、そんな彼女の心を繊細なタッチで描くことにより、物語の展開はより印象的に、より深みを増して展開していく。
そして彼女を捉える複数の眼差しはその少女時代を象徴的に照らし出してくれるのです。
登場人物一人一人の心にそっと触れるような形で、本作は「孤独」や「不幸」といった普遍的テーマに立ち向かう作品のように思われました。
また随所に散りばめられた異空間のような明晰夢の描…続きを読む - ★★ Very Good!!愛は静かに横たわる
前編のラストまで読了させていただきました。情景や心情の描写がとても美しい文言で描かれています。しっとりとした繊細な文体は、作者様の持ち味ですね。特に、前編のラストシーンは読ませます。素晴らしいと感じました。
主人公の祈李の抱える“闇”と、それを知っている周囲の人々の複雑な感情がリアルで、“愛”と“哀”、“憎”がなんとも言えないバランスで共存しています。この感覚はかなり独特だと思います。
ストーリーは、真っ直ぐではなく、ゆっくりじわじわと円を描くように進んでいきます。
全体的に、どこからか不安や哀しみが滲み出てくるようで、思わず読み進めるのを躊躇ってしまうような、そんな雰囲気があります。
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