春秋戦国時代の秦国を「眞」に、嬴政は「凌政」に、そして李斯は「李昰」というメインとなる視点人物として、韓非子を巡る史実が一つの考察のように物語として綴られています。
しかしこの物語には、単なるフィクションとは言い切れない奥深さ、勉強になるほどの細かな人物背景の描写があり、読み始めれば惹き込まれる魅力を感じました。
〝讒訴〟……それは他者を貶める告げ口のようなもので、また讒言とも呼ばれ、歴史においても奸計に陥れられ命を落とした者が実在するほど。事実、中国史には多いですし、史実においても韓非子が被ったとされています。
しかし、なぜ自らも厳粛な法家のはずの李斯(ここでは李昰)が、讒言など弄したのか。韓非の才に心酔する主君に、何を思っていたのか……。
ある種、自らの行いで「性悪説」を証明してしまったような、李斯と韓非という二大法家の間に起きてしまった大事件。
個人的にもとても興味深かった出来事なだけに、この物語を読ませて頂き、
「こういう考え方もあるのか!」「こういう描き方もあるなんて……!」
と手を叩いて感嘆させて頂いたほどです。
とても興味深く、何より面白かったです!
また骨太な筆致が、歴史小説ならではの重厚感を底上げしており、読み応えも抜群でした。
是非ともご一読をおすすめ致します!
読み終えた時、高校の授業で読んだ日本文学の傑作を連想しました。
中島敦の『山月記』です。
古代中国を舞台にした心理劇。格調高く、難語をふんだんに用いた文体。
それでいて、すぅっと軽やかに文意が染み込む心地よさ。声に出して読みたい日本語。
美麗な文章が暴き出すのは、抗い難い心の暗さ、浅ましさ、卑しさ。
そして、そんな心の暗部を恥じて苦悩する、人間精神の気高さなのです。
本作を読んだ後、青空文庫で中島敦の『山月記』を再読しました。
読後感は、本作とそっくりでした。驚くほどに。
何も分かっていない素人の戯言かもしれませんが、言わせて下さい。
本作は、Web小説界の中島敦です。