40万字の大作!
それだけに一言では言い表せない、人間ドラマが凝縮しています。
人付き合いが苦手な若き天才画家(そしてイケメン)!
ある人物との出会いをきっかけに、大きく人生が動きます!
画家として擢んでた才能は、本人の意志とは無関係に脚光を浴び、そして多くの人の心惹きつけ、強く揺さぶっていきます!
一見順調に思えた画家人生。
そこにはある秘密が……!
その秘密が明かされる頃に、彼を取り巻く人物たちにも、異変が現れ……?
また、タイトル『アドラメレク』とは……?
ネタバレになってしまうので、あまり詳しくは語れないのですが、順風満帆な人生から一転、物語が急展開するところの衝撃は、私だけが感じたわけではないでしょう。
登場人物が、陽の控えめな性格とは対照的な、奇跡的な才能という『沼』に、ハマってしまうような言い知れぬ恐ろしさを内包しながら、彼/彼女らがどう対処し、どうなっていくのかは、皆様の目でお確かめください!
それぞれのキャラクターがしっかり引き立っているところも、非常に魅力的ですね☆
時に複数の視点で語られ、群像劇としても素晴らしい作品だと思います!
成功へとのぼりつめていく一人の天才画家と、その魅力に惹かれてしまったがゆえに自分の人生まで翻弄されていく人々。
彼らの辿る運命、それぞれの抱く思いが絡み合い交錯してどんどん形を変え、物語全体が生きもののようにうねり、核心へ向けて突き進んでいきます。読みやすくテンポの良い文章でコミカルに始まるストーリーが、後半になり次第に不穏な空気をはらんで膨れ上がっていくのは鳥肌もの。そこへ至るまでの巧妙な伏線もふくめ、すべてが繋がっている構成が見事です。
本能のままに描き出される絵の数々や、躍動感あふれるダンサーの動きなど、目の前にありありと浮かぶような描写には圧倒されます。芸術に身を投じた者が作り上げる世界を文章でここまで表現されることにも感動しました。
主人公だけでなく、彼を取り巻くすべての人物に個性と魅力があります。単なる脇役では収まらない人間らしい匂いを放つのは、ひとりひとりにかけた筆者の深い愛情によるものでしょう。
アドラメレクというタイトルが意味するものとは。怒涛の展開の末に見えてくる境地は。
非常に読み応えのある大作です。ひとりでも多くの方にこの世界を体験していただきたいと思います。
喜びを糧に、怒りを糧に、哀しみを糧に、楽しさを糧に。
様々な感情を糧にして何かに打ち込む姿は美しい。しかし、それらをまとめても思うように美しさが伝わらないのが世の常でもある。主人公の陽くんも然り……自分の才能を存分に引き出してくれる人々が現れるまでは。
孤高の天才という言葉の響きは良いものだが、孤高である限り天才にはなれないと思う。周りのサポートがあって初めて「天才」という言葉が後付けされるものではないだろうか。その周りのポテンシャルは、もちろん高ければ高いほど良い。相乗効果の高まる幅は広がり、人が人を呼んで才能に深みが増す。天才にありがちな諸刃の部分も鍛えられ、すぐには折れない強さも磨かれることとなる。
作中では、そのように感じさせる描写が数々見受けられた。作者さまが、それぞれのキャラクターに寄り添い、愛したからこそ、主人公の魅力が存分に引き出されていたのだと思う。それはもう狂気とも言えるほどに。
画家をフィーチャーした作品だけに、絵に対する美的センスも抜群。絵筆の種類や色の配合なんかどうでもいい。キャンバスから生まれる「陽くんのセンス」が、文字を通して迸っていた。ここ大事なところなので、もう一度書く。
文 字 か ら 絵 の 凄 さ が 迸 っ て い た !
キャンバスでもスケッチブックでも壁でもシャッターでも色紙でも何でもかんでも、それぞれの素材に合わせた最高の絵が描かれていた。特に愛宕は、ライブハウスの壁に描かれた絵がお気に入りだ。まぁ、愛宕のことはどうでもいい。ともかく、読めば必ずやお気に入りの絵が見つかるはずだ。
喜怒哀楽を感じ、愛と憎しみを感じられる「それぞれ」の人間模様を、独特な感性で描かれる絵と共にお楽しみいただきたい。もしかしたら、インコまで飼いたくなってしまうかもしれない☆
天才としての人生を生きたという方はそんなに多くないでしょうけれど、この物語はその数少ない天才としての人生を生きた一人の若き画家『大月 陽』の人生の物語です。
元来、陽は絵を愛する素朴な青年でした。彼の描いた一枚のシャッターの絵、そこからこの物語は始まっていきます。そして絵を通じて彼は様々な人と出会い、描き続けることで彼自身人生を切り開いてきますが……
たくさんの魅力にあふれた作品ですが、まず一番初めに触れたいのがキャラクター造形の深さです。キャラクターに赤い血がこんこんと通って、まさにそこにリアルに生きているのですね。どうしてそのようなことが可能か。それはおそらく作者さまがキャラクターひとり一人へ深い愛情を注ぎ、一番の理解者として接していたからだと思われます。そのキャラクター同士で編み上げられる物語は実に奥深く重厚、まるでドラマを見ているかのような臨場感があります。
次にわたし、好きなキャラクターもできまして、夏連さんという天才ダンサーなのですけれど。
始めは周りを焼き尽くすほどの情熱を迸らせる女性でして、この時は正直わたし自身、彼女って少し苦手だなと感じていたのです。ところが陽と出会うことで彼女は変わっていく。わたしはその変化した彼女をとても好きになったんです。実に人間らしさにあふれ、でもその志は変わらず力強く。陽に不死鳥といわしめるほどに魂の輝きを放つのですね。なんと強く美しい女性なのだろうと感銘しています。
物語全体を通しての仕掛けも素晴らしく、上りつめた陽の人生にある悲劇が訪れるのですね。それがもうなんともいえなかった。人生には人生が変わる瞬間があったのです。それに乗るか反るか。運命という二文字では片づけられないほどのものが作品には込められています。
やっぱりこの設定を思いつくのがすごい、『アドラメレク』は悪魔なんですね。
ものすごく面白かった!
最後にとても読み応えある作品ですので、ぜひお手に取っていただきたく思います。
おススメいたします!
画家を目指す青年、大月陽。
最初は街中で似顔絵を描いていた彼は、ふとしたことでその絵に魅力を見出した通りすがりの出版社の社員やその恋人、またかれを昔から想っていた同級生たちと出会い、その豊かで幸福な日々の中で才能が少しずつ芽吹いていきます。
やがてその実力は少しずついろいろな人間たちに知れ渡っていき、彼の未来には栄光が約束されたかのように見えるのですが……。
主人公である陽と彼に魅かれて集まってきた人々の人生を描いた群像劇です。
どの人物も物語のために都合よく作られたという感じではなく、それぞれに信念や悩みを抱えて血の通ったキャラクターとして描かれています。
また時に悩み苦しむキャラクターたちの心情が詩的で繊細な文体で描かれていて、読んでいくうちにそれぞれの生きざまに引き込まれます。
ドラマティックでミステリアスな物語として楽しむことができると思います。
アドラメレクとはあまり聞きなれない悪魔の名前です(個人的には)。
それをタイトルにしているこの作品、オカルトめいた話になるのかな、なんて思いつつ読んでいるといい意味で裏切られます。
この話の中で展開されるのは『大月陽』という天才的な画家の、天真爛漫にして壮絶な生き様の軌跡です。
同時に彼という人間に魅せられた人々の悲喜こもごもの骨太のドラマです。
読了したばかりですが、読み終えた後も様々な感情、思索がまだ胸の中に残っています。
彼の天才を引き出したのが、このアドラメレクという悪魔の力なのか、そもそも彼が持っていた才能だったのか。
どうして主人公はあんなにも人を惹きつけて離さなかったのか。
まさに大作を読んだ後にしか味わえない独特の余韻があります。
物語前半では主人公・大月陽その人の魅力と彼の生み出す絵画の魅力が存分に語られています。
彼の絵に最初に惹かれた兄貴分にして親友の優馬、恋人の恵流、陽の運命の人になる夏蓮、その他さまざまなキャラクターが群像劇のように陽の世界を彩ります。
周りの助けもあって才能を開花させていく主人公、その説得力と迫力はすさまじいものがあります。
この前半部分がコメディータッチも交えながら実に楽しい物語になっています。
とにかく読みやすい文章につられて、自分自身も物語の世界に溶け込んでいくような雰囲気があります。
そして天才の凄みをキャラクターともどもに味わい、いつしか主人公に惹かれていくことに気付くと思います。
そして後半部分ではこの幸福な世界全てを叩き壊すような展開が待ち受けています。
この落差が激しすぎて、本当の悪魔は作者なのかな、と思わせるほど強烈です。
ですが、この物語の本当の凄みはやっぱりここにあると思いました。
過酷な運命だからこそ引き出されるキャラクターたちの本質、そこを正面から堂々と書ききっているのが圧巻なのです。
絵画に関する描写がまた素晴らしく、文章だけなのに説得力をもって陽の描く世界が展開されます。
キャラクターの個性も魅力的で、作者様の知識や洞察力のすごさが感じられます。
それらが絡み合って物語世界を濃密に鮮やかに彩っています。
とにかく作者の魂がこもったような、それを存分に発揮したような大作でした。
是非読んでみてください!
若き天才画家・大月陽と、彼をとりまく人々の物語です。
始めは趣味で細々と絵を描くだけだった陽。
やがて、絵を気に入ってくれた人々との間に少しずつ縁ができ始め…
職場の仲間や、兄貴分の青年、さらに彼女まで。かけがえのない大切な人々との輪が陽を包み込み、幸せにしてくれます。
そんなささやかな日常が、大きく変化し始めます。
どこまでも尽きることのない集中力。周りのすべてを絵として自分の中に取り込み、筆から吐き出さずにはいられなくなる、身を焦がすような渇望。
休む間もなく作品が生み出され、そこに周囲の協力・尽力も加わって、彼の画家としての名声は瞬く間に高みへと駆け上がっていきます。
それは彼自身がもともと持っていた、類まれなる才能と、人を惹きつけてやまない魅力の結果。
――だった、はずなのに。
もしもそこに、人智を超えた何者かの力が加わっていたとしたら――。
あまりに急激な変容、陽の周りの人々を次々に翻弄する、大きすぎる運命の渦。
読者もかなり揺さぶられます。心臓の弱い方はご注意を。
序盤、とっても平和で日常的な青春ラブコメ小説だと思ったのに、気がつくととんでもない災厄に巻き込まれていた!
高低差が激しすぎますー。読みながら、何度画面の前で叫んだことか。
読了した今は、もっと広い目で落ち着いて見られるようになりました。今では、こう書くべきものだった、と納得しています。
読んでる最中は、ドキハラが止まらなくて大変でしたけど(笑)。
長々と書いてしまいましたが、文章自体はとても読みやすいです。長編ですが、どんどんさくっと読めるので字数の多さは感じません。
それでいて、これだけ濃い内容がぎゅぎゅっと詰まっているとか…。
読了して満足しました、なんてもんじゃないです。
圧倒、圧巻。そんな言葉が浮かびます。
私が最も惹かれたのは、芸術的表現の多彩さ。美の中から迫りくるパワー。
陽が描く絵画と、あと重要人物として夏蓮というダンサーが出てきますが、彼女の踊るステージに表れます。
ちょっと絵や舞台を見たことがあるだけじゃ、ここまで書けません。作者の造詣、経験の深さを思わせます。
文面からほとばしる、飛び抜けた若い才能と努力が生み出す圧倒的な芸術の存在感。これだけでも読む価値があります。
もちろんキャラクターも、しっかりと地に足を着けている、人間的な魅力にあふれた人物ばかり。
楽しいかけあいの中にも、それぞれの背景、葛藤などが見えてきます。人間の紡ぎ出すドラマとして、自然と惹きつけられていきます。
長くなってしまったので、最後に一言。
ぜひ、読んでください。
得るものが必ず、たくさんあります。
創作に関わる者として「天才がどのように作られるのか、そしてその悲哀とは?」という点に着目して読ませていただきました。
個人的に主人公はたとえ悪魔の力を借りずとも、そして周りの影響を受けずとも、最終的には天才と呼ばれる存在になり得たのではないかという気がします。ここまで個性の強さ、意志の強さが際立つキャラクターは現代日本ではなかなかお目にかかれないので。
ストーリーの中で印象的だったのは、中盤以降、力を手に入れた彼と力を借りずして頂点に達した存在との対比、アクシデント後の二人の関係など、天から才能が与えられた者にしかわからない葛藤がまざまざと描かれていたところで、どんな現実に直面してもブレずに自分を貫こうとする姿勢に胸を打たれました。
そしてそんな天才たちから影響を受ける側がまた、良いリアクションを示しつつ成長していくのですが、そんな王道っぽさと未完成っぽさが見事に同居する展開が良かったです。字数の多さは全く感じないまま読み終えましたが、本当はもっと続くんじゃないかと期待する自分がいました。
凄まじい才能を持つ画家・大月陽の半生を、彼の周囲の人々の視点で綴っていく群像劇です。
初めは勤め先の木工工場のシャッターに絵を描いたり、公園の片隅で似顔絵を売ったりしていただけの陽でしたが、友人の勧めでメディアに出るようになり……
広い世界で開花した陽の才能は、あらゆるものを惹き付けていきます。
良いものも、悪いものも。
陽自身は、とても穏やかで純朴な性格の人です。相手に何かを強く望むこともなく、ただそこにいる。
多視点の構成が象徴するように、彼の周囲の人々が、その才能の巻き起こす運命の波に巻き込まれていくのです。
そしてある時を境に、悲劇の連鎖が始まる……
40万字を超える大作ですが、1話ずつが短く、また文章も軽妙で読みやすいです。
決して少なくない登場人物の性格や生き様がしっかりと掘り下げられ、大月陽という人が彼らに与えた影響をリアルに感じました。
哀しい運命の物語です。
ですが、最後には希望の光が見えました。
始まりと同じく、陽の描いたシャッターの絵のシーンで締められるラストも素敵です。人生の原点がそこにあったのだと。
彼らの生きた証がずっと心に残るような、素晴らしい作品でした!