概要
彼らは主人公の発する禍々しいまでの魅力に我知らず翻弄され、自ら望んでその運命に巻き込まれてゆきます。それを知った主人公は苦悩の果てに決断を下します。
若き芸術家が真に欲したものは、何だったのか。そして、アドラメレクとは? というお話。なのですが。
…ほんわかパッパなラブコメ調に始まるものの、主人公の波瀾万丈な人生の如く、物語は二転三転。
めまぐるしく変わる視点、胸やけ寸前の色々エグい登場人物、かと思えば一見マトモなアイツがかなりヤバかった、とか……挙げ句、オカルトなの?
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!若き天才に魅せられ絆され狂わされ。鬼才の画家を取り巻く人物たちの群像劇
40万字の大作!
それだけに一言では言い表せない、人間ドラマが凝縮しています。
人付き合いが苦手な若き天才画家(そしてイケメン)!
ある人物との出会いをきっかけに、大きく人生が動きます!
画家として擢んでた才能は、本人の意志とは無関係に脚光を浴び、そして多くの人の心惹きつけ、強く揺さぶっていきます!
一見順調に思えた画家人生。
そこにはある秘密が……!
その秘密が明かされる頃に、彼を取り巻く人物たちにも、異変が現れ……?
また、タイトル『アドラメレク』とは……?
ネタバレになってしまうので、あまり詳しくは語れないのですが、順風満帆な人生から一転、物語が急展開するところの衝撃は、私…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青年画家の栄光と苦悩、それを取り巻く人々の人間模様
成功へとのぼりつめていく一人の天才画家と、その魅力に惹かれてしまったがゆえに自分の人生まで翻弄されていく人々。
彼らの辿る運命、それぞれの抱く思いが絡み合い交錯してどんどん形を変え、物語全体が生きもののようにうねり、核心へ向けて突き進んでいきます。読みやすくテンポの良い文章でコミカルに始まるストーリーが、後半になり次第に不穏な空気をはらんで膨れ上がっていくのは鳥肌もの。そこへ至るまでの巧妙な伏線もふくめ、すべてが繋がっている構成が見事です。
本能のままに描き出される絵の数々や、躍動感あふれるダンサーの動きなど、目の前にありありと浮かぶような描写には圧倒されます。芸術に身を投じた者が作り上…続きを読む - ★★★ Excellent!!!現代神話の新たな主役が降臨! 重すぎる枷を耐え抜く力強さが伝播する☆
喜びを糧に、怒りを糧に、哀しみを糧に、楽しさを糧に。
様々な感情を糧にして何かに打ち込む姿は美しい。しかし、それらをまとめても思うように美しさが伝わらないのが世の常でもある。主人公の陽くんも然り……自分の才能を存分に引き出してくれる人々が現れるまでは。
孤高の天才という言葉の響きは良いものだが、孤高である限り天才にはなれないと思う。周りのサポートがあって初めて「天才」という言葉が後付けされるものではないだろうか。その周りのポテンシャルは、もちろん高ければ高いほど良い。相乗効果の高まる幅は広がり、人が人を呼んで才能に深みが増す。天才にありがちな諸刃の部分も鍛えられ、すぐには折れない強さも磨かれ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!天才の人生を生きた一人の青年の物語、アドラメレクとは……
天才としての人生を生きたという方はそんなに多くないでしょうけれど、この物語はその数少ない天才としての人生を生きた一人の若き画家『大月 陽』の人生の物語です。
元来、陽は絵を愛する素朴な青年でした。彼の描いた一枚のシャッターの絵、そこからこの物語は始まっていきます。そして絵を通じて彼は様々な人と出会い、描き続けることで彼自身人生を切り開いてきますが……
たくさんの魅力にあふれた作品ですが、まず一番初めに触れたいのがキャラクター造形の深さです。キャラクターに赤い血がこんこんと通って、まさにそこにリアルに生きているのですね。どうしてそのようなことが可能か。それはおそらく作者さまがキャラクターひと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!若く美しい青年画家、彼の描く絵は人の心をひきつけ運命をも狂わせる
画家を目指す青年、大月陽。
最初は街中で似顔絵を描いていた彼は、ふとしたことでその絵に魅力を見出した通りすがりの出版社の社員やその恋人、またかれを昔から想っていた同級生たちと出会い、その豊かで幸福な日々の中で才能が少しずつ芽吹いていきます。
やがてその実力は少しずついろいろな人間たちに知れ渡っていき、彼の未来には栄光が約束されたかのように見えるのですが……。
主人公である陽と彼に魅かれて集まってきた人々の人生を描いた群像劇です。
どの人物も物語のために都合よく作られたという感じではなく、それぞれに信念や悩みを抱えて血の通ったキャラクターとして描かれています。
また時に悩み苦しむキャラク…続きを読む - ★★★ Excellent!!!キャラクターたちの想いが胸をうつ大作でした。
アドラメレクとはあまり聞きなれない悪魔の名前です(個人的には)。
それをタイトルにしているこの作品、オカルトめいた話になるのかな、なんて思いつつ読んでいるといい意味で裏切られます。
この話の中で展開されるのは『大月陽』という天才的な画家の、天真爛漫にして壮絶な生き様の軌跡です。
同時に彼という人間に魅せられた人々の悲喜こもごもの骨太のドラマです。
読了したばかりですが、読み終えた後も様々な感情、思索がまだ胸の中に残っています。
彼の天才を引き出したのが、このアドラメレクという悪魔の力なのか、そもそも彼が持っていた才能だったのか。
どうして主人公はあんなにも人を惹きつけて離さなかったのか。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!才能と渇望の果てに。内から噴上がる焔は、筆を通してその身を灼き尽くす
若き天才画家・大月陽と、彼をとりまく人々の物語です。
始めは趣味で細々と絵を描くだけだった陽。
やがて、絵を気に入ってくれた人々との間に少しずつ縁ができ始め…
職場の仲間や、兄貴分の青年、さらに彼女まで。かけがえのない大切な人々との輪が陽を包み込み、幸せにしてくれます。
そんなささやかな日常が、大きく変化し始めます。
どこまでも尽きることのない集中力。周りのすべてを絵として自分の中に取り込み、筆から吐き出さずにはいられなくなる、身を焦がすような渇望。
休む間もなく作品が生み出され、そこに周囲の協力・尽力も加わって、彼の画家としての名声は瞬く間に高みへと駆け上がっていきます。
それは彼自身…続きを読む - ★★★ Excellent!!!力が欲しいか?
創作に関わる者として「天才がどのように作られるのか、そしてその悲哀とは?」という点に着目して読ませていただきました。
個人的に主人公はたとえ悪魔の力を借りずとも、そして周りの影響を受けずとも、最終的には天才と呼ばれる存在になり得たのではないかという気がします。ここまで個性の強さ、意志の強さが際立つキャラクターは現代日本ではなかなかお目にかかれないので。
ストーリーの中で印象的だったのは、中盤以降、力を手に入れた彼と力を借りずして頂点に達した存在との対比、アクシデント後の二人の関係など、天から才能が与えられた者にしかわからない葛藤がまざまざと描かれていたところで、どんな現実に直面してもブレずに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!若き天才画家の運命の奔流に翻弄された、彼が愛した者たちの人生の行方は
凄まじい才能を持つ画家・大月陽の半生を、彼の周囲の人々の視点で綴っていく群像劇です。
初めは勤め先の木工工場のシャッターに絵を描いたり、公園の片隅で似顔絵を売ったりしていただけの陽でしたが、友人の勧めでメディアに出るようになり……
広い世界で開花した陽の才能は、あらゆるものを惹き付けていきます。
良いものも、悪いものも。
陽自身は、とても穏やかで純朴な性格の人です。相手に何かを強く望むこともなく、ただそこにいる。
多視点の構成が象徴するように、彼の周囲の人々が、その才能の巻き起こす運命の波に巻き込まれていくのです。
そしてある時を境に、悲劇の連鎖が始まる……
40万字を超える大作ですが…続きを読む