第60話 未来予想図
ラウタヴァーラの砦に来た。夕日に照らされ明暗がハッキリとして重厚さが浮き彫りになる。ラウタヴァーラを守ってくれている感じがしてこの時間の砦は朝陽の時と同じくらい好きだ。
(懐かしい…)
ここでテッドを背負い投げした事を思い出す。
「テッド!迎えに来たよぉ」
「ありがとう!」
テッドの車椅子をシルヴィオが押して出てくる。
「シルヴィオ、テッドの相手ありがとう」
「おい!相手って俺は子供かよ」
「はははっ」
シルヴィオが笑う。あぁ、この無邪気な笑顔好きだなぁって見惚れてしまう。
「こらっ!ニーナ!シルヴィオに見惚れるな!」
テッドが車椅子から手を伸ばして視界を遮ろうとする。
「いいじゃぁん」
「だぁめ!ニーナは俺だけ見てればいいの!」
そう言うとテッドがフンッと力を入れて立ち上がった!ゆっくり、ゆっくりと片足を引きずりながらゆっくりとニーナの方へと歩いてくる。
こちらの医学が遅れすぎていて歩けなくなるかもと思っていたので感動して喉の奥の方がギュッと締められたようになって何も言えずテッドを見つめる事しかできない。
「はい、到着ぅ」
ニーナの前に着いたテッドはぎゅぅとニーナを抱きしめた。その瞬間、堰を切ったようにニーナの眼から涙が滝のように流れ出た。
「ふぐっ!ふぐっ!」
しゃくり上げてしまってもう何も言えない。テッドはぎゅっと抱きしめたままニーナの頭を撫でた。ニーナはテッドの背中に腕を回しぎゅうっと服を掴んだ。
「ニーナ、ありがとね。歩けるようになったよ」
無言でテッドの胸の位置で頷くのが精一杯だった。
(良かった…よがっだよぉぉぉぉ)
「でさ、『元気になったら…』って言ってたよね?…気持ち聞かせてくれる?」
テッドはニーナを抱きしめながら頭を下げてニーナの耳元に口を近づけてすがるように優しく囁いた。
「ふぐっ!ふぐっ!あ゙…ふぐっ!い゙…ふぐっ!ぢ…で…ふぐっ!る゙っ」
「ふふふっ。俺も愛してる」
ニーナとおでこタッチをしながら、すごい幸せそうにテッドが笑って言うから余計に涙が出て
「う、うわぁあぁぁぁんっ!」
ニーナはついに大泣きになってしまった。
シルヴィオはやれやれと荷馬車を近くに寄せてくれ、二人をベリッと剥がし、ニーナとテッドをそれぞれ持ち上げて御者席に乗せる。最後に荷台に車椅子を乗せてテッドに向かってシッ!シッ!とやった。
「ありがとう!」
テッドは手綱をもってシロに荷馬車をスタートさせた。
小さくなっていく荷馬車をシルヴィオは見送りながら二人の出会いからを思い出してふっとやっぱり笑ってしまった。
屋敷に戻るまでの間に夕日は沈んで紫からピンク色のマジックアワーになっていた。まだニーナの涙が止まらない。テッドは心配そうにニーナの顔を覗き込むとチュッと唇にキスをした。
「ッ!」
「涙…止まったね…」
「~~~~~ッ!」
ニーナは驚きで言葉にならない!空に負けないくらい顔がピンク色になる。
「かわいい」
またチュッとキスをされた。気付くと何度も何度も帰り道で隙を見てはキスをされた。
(中身は全然年下なのにっ!イヤじゃない自分もまた悔しい!)
ニーナの心境は複雑だった。
「で、結婚は?してくれるかな?」
ニコッと爽やかな笑顔をテッドが見せてくる。もう絶対結婚できるという確信を持っている顔だ。
「うん、しない」
「えっ!な、なんで?」
まさかの答えにテッドは驚きを隠せない。
「結婚という形にこだわらなくてもいいのかなと」
「え、もう
「うん、命の心配じゃないのよね…」
「う…ん?」
「テッドの事は好き、大好き!でも大好きだったら結婚しなくちゃいけないのかな?結婚ってなんだろう?」
「ずっと一緒にいるっていう約束?契約?」
テッドが答える。
「ずっと一緒にいる約束をしても裏切る人はいるよね?気持ちが変わっちゃう人もいるよね?」
「まぁ確かに裏切る人もいる。でもみんながみんなじゃないでしょ?」
「うん、そうなんだけど…愛し合った
「まぁそれが普通だから?結婚して子供を作って家族になる」
「普通…結婚しなくても子供は作れるよね?それに結婚しているのに他所で子供を作る人もいる…結婚って何だろうって思っちゃって…」
「えぇぇ?」
「テッドの事は好き、大好き!だからこそ結婚しなくてもいいかなと…」
「えぇ?意味が分からないよ」
「結婚することで役割に縛られちゃうような気がして…」
「役割……?」
「テッドの奥さんだから、
「縛られなきゃいいんじゃない?俺たちは俺たちだもん」
「そうなんだけど、今はそんな洗脳に負けてしまいそうで…変に妻らしくしようって思ってしまいそうだから結婚はしない!でもテッド無しでは生きられない!」
「だったら…」
「うん、だから結婚してもお互いが自分らしくいられる自信がついたら結婚しよう?それまでは婚約って形でどうでしょう?」
「どうでしょうって…」
「もし子供ができたとしても、私一人でもう育てられる自信はあるし…」
「それはイヤだよ!俺も一緒に育てるよ」
「うん、ありがと。『母親は何もしなくても母親だけど父親は父親をしないと父親になれないっていうしね」
うんうんと力強く頷くテッド。
「それに…人の心は変わるでしょ?今は
「分かった!じゃ俺が一生かけてニーナへの愛が変わらないって証明するよ!」
「よろしくお願いします」
そういって今度はニーナからテッドにキスをした。
「もう!こんな勝手に付き合えるのも本当に俺だけだからね!」
テッドがほっぺをぷくっと膨らませて拗ねてみせるも喜びが全身から溢れ出ていてしまっている。
「ありがとう!二人で幸せになろう!」
「うん、二人で!ね」
おでこでおでこをゴツンとされる。段々口が近づいていって今度はどっちからという事もなくキスをした。
こうしてテッドとニーナは婚約を交わした。オニールはテッドを小さい頃から見守っていたので息子のように思っていたし、アーロンも兄のように慕っていたので大喜びしてくれた。
テッドは仕事復帰して、テッドの王室の丘は一般に公開された。お手入れ代としてささやかに入場料をいただいている。今では癒しのピクニックプレイスとして大人気だ。
田中は宣言通りすぐにリズをバラーク王国へと連れて行ってしまった。今は王妃教育を頑張っているとリズから手紙が届いていた。結婚式には招待してくれるというので楽しみだ。
陛下も今回は腹をくくって
ニーナの王宮の前の角地は一等地なだけに良い家賃を生み出してくれている。ラウタヴァーラのクロウマ宅急便も王都全体に拡大しておりラウタヴァーラの株から配当金も毎年少しずつではあるが増配している。
リスク分散としてまた何か投資できないか模索していたらラウタヴァーラ株式会社の話を聞きつけた領主たちが自分達の領土でもできないかと相談される事が増えた。もちろんミスターXとしてお答えしている。相談料としてラウタヴァーラに報酬もしっかりいただいているし、その内何割かでいただく株はニーナの名義にちゃっかりしている。
いつか全体で株の売買ができる取引所を作りたい!そう!株取引所だ!リスク分散は『くうねるあそぶ』生活には必須だ。
結局いつまでたっても忙しい。でも、毎日が充実している。いつでも仕事を辞めて『くうねるあそぶ』ができるという経済的自立が心のゆとりを作ってくれているんだろう。
そして今日もニーナの首には馬の蹄のチャームとプロポーズの時の指輪が光っている。
ん?プリシラ?プリシラは2学年に上がってから恋に落ちる。相手はバラークから帰国してきた
これはまた…別のお話…
了
~~~~~~~~~~~
立った!立った!クラ◯が立ったぁヾ(*'∀`*)ノ
という事で無事終わりましたε-(´∀`; )
60話お読みいただきありがとうございました。
初めての小説です。拙いところもたくさんあったと思います。
拙作を最後まで読んでいただけたというだけで
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました(⋈◍>◡<◍)。✧♡
ささ!そのまま下にスクロールすると★をつけるところに行きますのよ♡
ニーナ頑張った!
テッドよく立ちあがった!
この世界気に入った!
そう少しでも思っていただけたなら是非!
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ポチッポチッポチッと3回やっちゃってくだせぇ!
そしてレビューなんて書いちゃってみなさいよ
この馬鹿は踊り狂って、またお話書いてみようかなって調子乗るかもですぜ
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
明日からは現代を舞台に『全力ペダル』短編全8話を毎日更新!
良かったら見てやってください<(_ _)>
Lv50の異世界転生は『くうねるあそぶ』を目指します!【㊗完結】【全60話】 Minc@Lv50の異世界転生🐎 @MINC_gorokumi
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