第27話 浪人生…

 自分のデビュタントの事はす~っかり忘れていたニーナ。


「え、デビュタントって16歳だけじゃないよね?

事情によってはちょっと遅れての社交界デビューでもいいのよね?」


 ミラに確認するニーナ。


「いいですけど、ほとんど、いやほぼ16歳ですよ?

お嬢様だけ年増になってしまうじゃないですか!」


(いやいや、すでに精神年齢は大年増なのよ。50歳なんだから)


「ふふっ年増って。デビュタントの時だけでその後の社交界ではもう年齢関係ないのよね?1年くらい大した差じゃないわ。


まだ会社設立したばっかりで領地に残ったなけなしのお金を元手に

して支出ばかりで収入にはまだ繋がってはいないのよ


利益がちゃんと出て、私がいなくてもちゃんと回るようになるまでは王都に出ている場合じゃないと思うのよね」


(今からデビュタント用のドレスを頼んでも間に合わないしね)


「それに社交界デビューしたところで、舞踏会だのお茶会だので、デビュタント用のドレスとは別にお茶会用のドレスも買わないとでしょ?」



 そう!今あるドレスは流行遅れというのもあるのだけど何よりも縦はつんつるてんで、横幅はブッカブカとどうにもならないのだ。


 前に穿いていたズボンを穿いてみたらウエストがめちゃくちゃ余って『こんなに痩せました』のビフォーアフターの胡散臭いネット広告のようになっていたのだ。


 つまり、今着れるドレスが無いという現実。なんだったら靴のサイズも変わってしまった。足にも贅肉ってついていたという衝撃の事実に驚きは隠せなかったわ。まぁ、靴だけ履けてもズボンじゃ意味ないよね。


 お金は全て会社設立のために使ってしまっているので新しくドレスを作るお金も無いのである。


 私のために使うお金があるのならアーロンの学費のために使いたい!のである。

辺境伯だからといって田舎者と言われないようにしてあげたい。オバチャンの母心である。


 この領地の跡取りだもの。しっかりと勉強をしてきてもわらないと!!これはある意味投資。


 一応、淑女教育は受けたから踊れるしお茶のマナーも分かるけれども!

他の貴族子女と腹の探り合いの話しを楽しめる気がしない……


(面倒くせぇ)


 その一言に尽きる。とはいえ、中世の男装女子の活躍したアニメ世代としては舞踏会はちょっと、ちょっとだけ興味はあったりするんだけどね。とりあえずデビュタントは一年遅らせる事にしたという手紙を父には出した。


『そちらにテッドという優秀な騎士がいるそうじゃないか。

王への馬2頭の輸送の際にアーロンもこちらに引っ越してくる予定だが

彼も王都に2頭の警備も兼ねて送って欲しい』


とデビュタントに対しては返答の無い父から返事が来た。


(あぁ、きっとこの間の馬の交渉の際に早めに王都からの使いを迎えに行って王都へ戻してほしいというお願いもしていたのね。

貴族出身の騎士がこの辺境地のしかもただの小娘の専属護衛なんて確かに分が過ぎるわ)


 手紙を机に置き、ドアの前に立っているテッドに


「テッド、王都に戻れるわよ。良かったわね」

 寂しい気持ちを隠して笑顔で言った。


「はぁ、マジか。年貢の納め時かぁ」

 予想を裏切ってショックを隠し切れないテッドを見て


(王都に戻りたかった?訳じゃなかったのか?)



          ※

 あっという間に出発の時が来た。


「ニーナ、元気でね。頼れる男になって戻ってくるからね。待っててね」

「ふふっ、それは楽しみだわ。手紙も書くからたまには返事ちょうだいね」


アーロンは涙を目にいっぱい浮かべてハグしてくれる。やっぱり肩に顎が乗るくらいに成長して骨ばってきたことに違和感と成長への寂しさを感じる。


「じゃニーナ、元気でな。俺にも手紙くれよ」

「ふふっ了解」


 両手を広げるテッドにハグ?はニッコリお断りのスルーをして右手を出して握手した。


「ちぇっ」


 舌打ちするテッドにへへんとドヤ顔をするアーロン。

 帝王のための馬車、皇后のための馬車の二台と、クロネコ宅急便にアーロンの荷物、最後にアーロンとテッドがそれぞれの馬に跨って後ろについていく。


 領土の端まではクロと一緒にお見送りに行った。最期は二人がずっと手を振ってくれて、こちらも見えなくなるまでずっと手を振り続けた。


 

 一気に食卓が寂しくなった。

セバスチャンとミラを誘うも断固として断られてしまった。

寂しい……


 帝王が馬車を使い出すと我も我もと各領地から馬の貸し出し依頼がやってきた。王が2頭なので各領主は1頭までとし、御者と馬車も各領地にはレンタルという形にした。

 御者も馬の世話と領主が馬に変な事をしないかという監視も兼ねさせていただいくために、ラウタヴァーラの人間を使う事を約束させたのだ。その準備と人選に追われる日々が続いた。


そんな日々が落ち着いたかなという頃。タウンハウスから手紙が届く。その手紙には父であるオニールが倒れたと書かれていた。


(そんな!)


 ニーナの小さい頃に優しかったお父様との思い出が脳裏を巡って何もできずに立ちすくんでいた。セバスチャンが


「お嬢様はすぐご準備ください!執務に関しましてはチャーリー!できますね?」

「は、ハイ!」


 ピッと立ち上がって返事をするチャーリー。


「ミラは荷物をまとめて、クロウマ宅急便に一緒に乗せてもらってお嬢様を追う!いいですね?」

「ハイ!」


 すぐ執務室を出て準備に向かうミラ。


「お嬢様!!」

「ハイッ!」


 もう一度声高に言われて思わずニーナもチャーリーのようにピッと立ち上がって返事をした。


 すぐクロと一緒にラウタヴァーラを後にし、王都へと向かい走り出した。



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浪人生といえば…


未亡人◯子さんとのドタバタコメディの五◯君!


あの惣一◯さんの顔の影で見せない画力をマジで尊敬してます。

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