第42話 チャムする?
「そういうのは良くないと思います!」
そう言って立ち上がったのはリズだ!いつも大人しい彼女が何かを誰かに言うのを初めて見たのでビックリしてニーナは固まってしまう。
「えぇ?プリシラさんがやりたい!って言ったんですよ!ねぇ?」
「え……えぇ…」
二人に睨まれ頷かざる得ない状況のプリシラ…
「でも!でも!レポートはグループのものだから3人でちゃんとやるべきです!!」
リズはそれでも一歩も引かない。
「エリザベスさんはぁ、関係ないですよねぇ?」
語気を強く言い返してきた。ふと見るとリズの手が震えているのに気が付いた。
「君たち!いい加減にしたまえ!君たち自身も参加しなければ身に付かず君たちの損失でもあるんだよ?一人に丸投げして恥ずかしくないのか?」
「損失ぅ?女性が男性に尽くすのは当たり前だろ?」
「はぁ、情けない人達だな。女性だ、男性だの前に人間としてやるべきことをやれ!って言ってるんだよ。誰に尽くすかは本人が決めることだ!」
「いいぞ!田中!」
ニーナは思わず拍手をしてしまった。それを見た田中ははぁ…とため息をついて親指と人差し指でメガネの奥の眉間を揉んた。
「素晴らしい!」
そういって上田先生も拍手をしながら入ってきた。このやりとりを見ていたようだ。
「うん、君たちはちょっと…いらっしゃい…」
そういってプリシラのグループの男子2名を引き連れて教室を出て行った。
「エリザベスさん、大丈夫?」
「え、ええ…」
田中はエリザベスを気遣って着席させていたが、その流れがとても自然なエスコートでニーナは田中を見直す。
(リズは小動物のようにか弱く見えるのに芯は強いのね…)
翌日には彼らはB組へとランク落ちし、B組からトップ2名がA組へとやってきた。彼らはプリシラ一人にレポートを押し付ける事はなかったので安心した。
そしてB組へと落ちた彼ら。B組は女性が半分くらいなので、女性に仕事を押し付けようと企むが
「さっすが元A組!頭いい!」
「しらなかったぁ」
「すごぉい」
「センスあるぅ」
「そぉなんだぁ」
とうまいことさしすせそで女性達に逆に使われているらしい。
※※※※※※
目の前には中学生の凛がいる。
「ねぇ!いいでしょお?〇〇ちゃんとお揃いにしようって言われたんだもん!お願い!」
「お願い!ってこの間▽▽ちゃんともお揃いにするって何か買うからってお小遣いせびったよね?」
あ、|前世≪シーナ≫の声だ。
「うん、でも〇〇ちゃんもしよう!って言ってくれたんだもん」
「いやいや××ちゃんともお揃いって何か買ってなかった?」
「そうだよ。お揃いにしよって言われたんだもん」
「もぉ!キリがないじゃん!このチャムめが!」
「チャム?」
「そう!チャム・グループ!思春期の成長期の一つでな、同性の友達と共通のモノを持って友情を確かめ合いたいやつぅ。成長としては嬉しいけどさ、多すぎない?」
「……」
むぅぅっとする凛にため息をつくシーナ…
「今回は分かった。出すよ…でもさ、チャムるのもいいけどさ、お小遣いでできる範囲でやってくださいよ…」
「だってもぉお小遣いないんだもん」
「うん、お金は計画性をもって使ってください!
何よりもまず制服っていうチャムがもうあるじゃん!」
「制服は仲良しじゃなくても同じなんだもぉん!」
※※※※※※※
目が覚めた。
昨日プリシアがお揃いのモノが欲しいと放課後に街で買ったものだ。
うん、正にチャムった。凛に散々言っていたくせに自分がチャムった。これが意外に特別感?ってヤツでなんか嬉しかった。年齢的にはもう個々になっていくピア・グループに移行していく年齢なんだけど、ギリ!OK!ってことで!
ニーナは準備をして食堂へと移動する。最近は前ほど仕事に追われていないようでテッドが朝は早く出勤するという事がなくなって一緒に朝食が取れるようになった。大体、ニーナとテッドが先に食べ始めてアーロン、オニールの順で食堂で朝食を取る。
テッドは上司に家でまで会いたくないせいで多分早いとニーナは思い込んでいる。
「朝からご機嫌だね。どうしたの?」
「うん懐かしい夢を見たのと学校の子とお揃いのチャームを昨日買ったんだよね」
カシャーン!
テッドがフォークを落とし固まっている。メイドが新しい物を用意してくれる。
「テッド?大丈夫?」
「はっ!学校の子って?男?女?」
「女の子だよ。リズとプリシア…あ、あと男の子だけど田中」
「田中?」
「そう、女の子だけじゃ危ないからってついてきてくれたの。護衛もいるっていうのにね」
その時の田中のガチガチになりながらも譲らない姿勢を思い出してニヨニヨする。
「へ、へぇ~」
「チャームを買う時にさ、リズが田中にも買ってあげてさ、渡された時田中真っ赤になっちゃってさ、ありゃもうリズの事好きなんじゃないかな」
「ふ~ん…あ、あのペン使ってる?」
「あ!ペン?使ってるよ。ありがとうね、とっても使いやすいよ」
「良かった。あれ俺のとお揃いだから!ずっと!肌身離さず使ってね!」
そう、実は前にアーロンの文房具を買いに行った際に密にテッドもニーナに文房具を買ってくれていてプレゼントしてくれたのだ。
「ペンで肌身離さずはしないかも…」
カシャーン!
またテッドがナイフを落とし固まっている。
「大丈夫?」
「…大丈夫…」
「おっはよぉ!」
アーロンが元気よく食堂に入ってきた。
「おはよう!」
「おはようニーナ!このペン!すっごく使いやすね!」
ペンを出すアーロン
「なんで持ってるの?」
「えぇニーナがくれたんだもん。肌身離さず持ってるよ」
屈託のない笑顔のアーロン。ジト見でテッドがニーナを見てくる。
「いや、ペンは…肌身離さず…ってのは違うんじゃない?かなぁ?」
冷や汗を流すニーナであった。
放課後リズが窓辺に隠れるように立っていたので
「リズ!」
声をかけたがリズは外を見て固まっていた。ニーナもリズが見ている方向を見る。サラサラ金髪の男性の後ろ姿。その向かいには女子生徒がおり木の下でなんともいい雰囲気を醸し出していた。
(えっ?アレクサンダー王子?)
思わずニーナはしゃがんで窓の下枠から外を覗く。
トントン
「ん?何?」
右を見たら目の前に田中の顔!田中もしゃがんでこっちに来ていたのだ。
「うぉっ!びっくりした!いや、シー」
ニーナは自分が声を出したくせに田中に静かにするように言う。そのままその人差し指で外を指差す。田中もコクンとそろ~りと外を見る。王子を認識し釘付けになる。
「な~にしてんのっ?」
「「シッ!」」
ニーナと田中にすごい形相で言われヒッとなったプリシラだったが同じようにそろりそろりと窓の下枠から外を覗く。
「ハッ!」
息を飲むプリシラ。段々と
(ダメダメダメダメ!)
3人は思わずリズと
いよいよ、渦中の
(あぁあぁあぁあぁ…)
~~~~~~~~~~
女性の褒め方「さしすせそ」を調べていたら
男性の「かきくけこ」も出て来た。
「かわいいね♡」
「綺麗だね♡」
「口説いてもいい?♡」
「結婚っていいよね」
「こっちおいでよ/子供っていいよね」
えぇぇ?言われたら怖いっ!って思うのは私がデブスで言われた事ないからなだけ?
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