第30話 タキシード〇面様ぁ!
デビュタントの朝…
私の進学が急に決まった事もあり準備のためミラがまだラウタヴァーラ辺境伯領から到着していない。ラナの代わりにメイドが3人もテッドの依頼でタウンハウスにやってきた。入浴に始まりマッサージから保湿とまな板の鯉状態。
そんな扱いはシーナの時からされた事が無いから幸せすぎてマッサージを受けている時はヨダレを垂らして眠ってしまった。恐ろしい指パワー!天国に逝ってしまいそうだったわ。
今までにないくらいに髪も肌も艶々になってこんなに自分に対してお手入れをしたのは初めてで自然とテンションが上がる。また上手に3人のメイドが褒め称えてくれるのだ。
「髪も亜麻色でサラサラで綺麗!一つにくくっているだけなんてもったいない!」
「肌もプリプリで綺麗!ファンデーションいらないんじゃなぁい?」
「もぉ!なんでこんな綺麗なお胸をサラシできつく巻いちゃうの!」
「形が崩れちゃうでしょ!」
「乗馬するのに乳が邪魔なんだもん」
(『走る時は垂れないように乳を押さえる!』ってグラドルが言ってたしね♪)
「こんな綺麗なのにもったいない!」
人生で一番「綺麗」という言葉を浴びせられて鵜呑みにしてしまいそうで怖い。もうこんな人達から営業を受けたらなんでも契約しちゃいそうな危険を感じる。
ドレスを着せてくれるだけじゃなくヘアメイクまでしてもらってもう鏡の中の自分が自分じゃないようだ。
「本当に背もお高くてスッとしていて女神のようですぅ」
ドレスはシンプルなエンパイアラインの上にケープで作ったドーリス式キトーンが巻いてあり確かに有名なあの頭と腕が無くって羽が生えたルーブル美術館といえば!の勝利の女神ニケのようなドレス…そんな褒められちゃった日にゃもぉ!いくらでも袖の下をあげたくなっちゃう!!
(残念ながら無い物は無いのでいくろ袖の下を振っても二の腕の贅肉しかないのだけどね…)
でも昔に比べたら二の腕も引き締まってそんなに揺れることは無くなったと自負している。
身長もすごく伸びた。やはり成長期の運動、そしてよく食べて良く寝る!というのは背をすごく伸ばしてくれる。ちゃんと帽子被って長袖着て日焼けはしないように努めていたので肌は白いよ。ホント頑張った。
髪もいつもなら一つにまとめるだけなんだけど今日は少しカールをしてくれ月桂樹を模したヘアアクセを絡めながらホホシュテック・フリズーアというアップヘアスタイルにしてくれた。
髪をアップにしてスッキリさせているのでピアスは揺れるタイプの物となっており濃い青色の宝石が入っていた。ネックレスもその色の宝石をちりばめた物になっている。
(綺麗…高そうだけど…レンタルよね?騎士って給料ってどれくらいなのかな
辺境伯の領土のみんなはそんなに高くないって言ってたけど貴族出身の騎士と平民出身の騎士とではそもそも給料が違うのかもしれない…ドレスも短期間で用意できたし…)
準備が整い、1階に降りていくとお父様が感極まって目頭を押さえる。
「ミーナにも見せたかった…」
(やだ、嫁に行くわけじゃないのだけど)
「そうね。でもきっと上から見てくれていると思うのよ」
そのお父様は言葉にますます感極まったのか指だけでなく今度はハンカチを目に押さえる。
(歳を取ると涙もろくなるものね。分かるよ…分かるよ…私も凛の成人式には涙がホロッとこぼれたものぉ。そこでもヒロが号泣して泣けなかったのよねぇ…)
もう会えない家族を思い出す…
「ボクが本当はエスコートしたかった!
ねぇ今からでもデビュタントやめて2年後にしない?」
アーロンが可愛くおねだりする。
「それは困るなぁ」
気付けばそこにテッドが立っていた。ホワイトタイに黒の燕尾服に白い手袋姿のテッドは騎士だけにいい感じに胸筋が鍛えられているせいでとても似合っている。
(ま、眩しい!イケメンは何でも似合う!)
「それではお姫様、私めに会場までエスコートをさせていただけますでしょうか?」
片足を引いて右手を前にしてお辞儀する。
セーラー服で戦う女子戦闘物アニメの主人公のピンチになると助けにで来るキザなタキシードに仮面姿のキャラクターを彷彿させ思わず興奮してしまった。
握手をするように手を持ったかと思ったら手の甲を上にされチュッとキスされた。オペラグローブ越しとはいえ恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
むぅぅぅっとなるアーロン。
「もう行くなら行けよ!はい!これ!」
差し出されたのは座布団…
「牛車で座る時に使えよ」
(お尻の皮が剥けてて座るの痛いのを分かってるぅ!)
「ありがとう!アーロン」
アーロンをぎゅっとハグする。
「へへっ」
ドヤ顔でテッドを見るアーロン。テッドは意味が分からないって顔をしている。ありがたくふかふかの座布団を牛車に載せて王宮へと出発させていただいた。
「テッド今日は本当にありがとう!」
「まだ始まったばかりだよ」
ふっと笑うテッド。
「すごく綺麗なドレスにアクセサリーありがとう。レンタルよね。汚さないようにしなくちゃね」
「ふっ、レンタルじゃないよ。プレゼントだよ」
「えっ!このアクセサリーも?」
「そうだよ。全身身に付けてる物全てプレゼントだよ」
「ちょ、ちょっと待って!全身?!」
「よく似合ってるよ」
余裕の笑みで頷くテッド。
(いやいやいや、なんぼよ。なんぼなんでもなんぼよ?)
訳が分からなくなるニーナ。
「さ、さすがにいただく訳にはいかないわよ。事業が落ち着いたら…」
「いや、プレゼントさせて。男のメンツをつぶさないで」
首をちょこんと横にかしげてテッドに言われたら可愛すぎて思わず手を口に当てて何も言えなくなる。
(あざとい!あざと男子か!)
「わ、わかった。ありがたくいただきます。ありがとう。でも良かったの?大丈夫?」
「大丈夫だよ。実は俺もまだ舞踏会に出た事がなくってさ、男女ペアが基本だし渡りに船だったんだよね。だから助かったのは俺なんだよね」
「テッドも舞踏会は初めてなのね?嬉しい」
「うん、だから怖いから離れないでね」
「ふふっ。わかった」
笑みがこぼれて緊張がほぐれる。初めての王宮に舞踏会。
(おら!わくわくすっぞ!)
宇宙人の戦闘アニメの主人公のセリフが自然と出てくるくらいわくわくしてきた。その時にはもうすっかり学園にいたいじめっ子3人も当たり前だが同じ歳なのだから今年のデビュタントに参加するという事が頭から抜け落ちていた。
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月に代わっ〇おしおきよっ!
筋斗雲の主人公は小さい頃にやっていた性別判定
『パンパン』が結構衝撃的だった。
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