第44話 恐縮です!
その日の晩、テッドが帰ってきたのを出迎えた。
「おかえりぃ」
「お、ただいまぁ、珍しいねぇ出迎えてくれるなんて、今日もオニール様にこき使われたよぉ」
「こき使われたなんて失礼な!」
後ろからオニールが現れた。
「お父様もお帰りなさい」
(一緒に職場に行く事でお父様はテッドを守ってるんだろうなぁ…本人は嫌がっているけど…)
「うん、ただいま」
ニーナを見て福岡のはかたにわかのように顔を崩すオニール。
「ちぇっ!その甘さを俺にもしてくれたっていいんだぜ!」
テッドのイヤミをスルーしてオニールは部屋の方へと戻って行った。
「テッド、後でいいかな?」
※
タウンハウスのバルコニーでテッドを待つ。秋も段々深まって寒くなってきたかも…ストールをギュッと巻く。
「どうしたの?」
テッドはホットワインを二つ持ってきてくれた。
「いや、実は…」
今日の
「いつも、あんな調子でいろんな女の子にちょっかいを出しているのかな?友達の婚約者なんだけど…キモかったんですけどぉぉっ!」
「あいつ!ほんとBa…だな!!へ!ヘクション!」
「あ!ごめん!寒いよね?中入る?」
ニーナは部屋の方を見たが
「ううん、コレがいい」
とテッドはニーナのストールを奪って自分に掛けたかと思ったら、そのままニーナを後ろから覆った。ニーナの頭の上から頭を出して
「うん、暖かい」
満足そうな声に
「そか」
(後ろから抱っこぉ!こんな事された事ない!うっわぁ!臭かったらどうしよう!暖かいを超えて一気に熱くなった!ホットフラッシュですぅ!汗まで出たらどうしようっ!ほんと、勘弁っ!)
ニーナもスンッと答えたつもりだったが心の中は大騒ぎだった。
後ろの方でごそごそすると思ったらテッドが首に腕を回した。
(ヘッドロック?!)
身を固くしたが一瞬にして後ろに腕が行きホッとする。
「入学祝第二段!」
へっ?と思って下を向くとネックレスが首にかかっていた。もう首にかかっているため、ものすごく顎を引かないと見えない。二重あごに目は下に寄っている顔を見てテッドが笑う。
「おぉいっ!」
振り返ってテッドを殴る!その腕はテッドに捕まれる。
「アハハッ!ごめんごめん!」
「っていうかもらってばっかりだよ?ちゃんとペンも使ってるよ?」
「いいじゃん!前みたいに護衛できないんだからペンダントならいつも一緒にいれるだろ?」
「まぁ護衛なんていらないし、いらなかったんですけどね!」
「えぇぇぇ?」
困った顔になるテッドを見てニーナは仕返しのように笑った。
「ありがとう。馬の蹄の形。嬉しい」
「でしょ?」
テッドはご満悦だ。腕は離してくれないけど…
「明日って学園休みだよね?ちょっとピクニック行かない?」
「いいね!久しぶりにクロを思いっきり走らせたいと思っていたの!」
「僕も!ハナちゃんと遠出したい!って思ってた!」
いきなりバルコニーにバーンッ!とアーロンが現れて、思わず二人は離れた。
「う、うん!アーロンも行こう!」
※
晴れ渡る空!どこまでも続く草原!コスモスが咲いている。丘のようになっていてアップダウンが気持ちいい!
「うわぁ!気持ちいい!あそこの木まで競争ね!」
「お!おい!」
ドコッ!ドコッ!ドコッ!ドコッ!
クロとニーナはあっという間に小さくなった。
「そりゃ無理だろ…いいんだ、シロゆっくり行くぞ」
「ハナちゃんもマイペースにいこっ」
「着いた!いっちばぁん!」
振り返るもまだ2頭は見えない…
「クロ、まだ自由に走りたいよね?」
ブヒヒンッ!
首を上下に振るクロ。
「うん、じゃ、あの木の下で休んでるからクロ、あの2頭を迎えに行っておいでよ」
ヒヒヒンッ!
ドコッ!ドコッ!ドコッ!ドコッ!
クロは二頭を迎えに行くべく戻って行った。
「ふぅ…」
木の下に座って伸びをする。
「ん~~~、気持ちいい!」
いった瞬間!
ズサッ!!
「えっ!」
上から人が振ってきた!!!
「君は誰だ!」
落ち着いた口調だけどすっごい怒気を込めて聞いて来たのは
「わ、私はラウタヴァーラ辺境伯の娘、ニーナと申します」
慌てて立ち上がりカーテシーをしながらニーナは答えた。
「どうしてここにいるんだ?」
「今日は友人とピクニックに…」
「一人のようだが?」
「ちょっと先に着いてしまったもので…」
上空ではピーヒョロロロロロロと鳶の鳴き声が響き、そよそよと風でコスモスが揺れている。
「誰もいないようだが?どうやってここに?」
「え~と…馬で…」
「う、馬?あの馬か?ちょっと待てラウタヴァーラ辺境伯って言ったな。じゃあの馬車のあの大きな馬か!」
「そ、そうなりますねぇ」
「その馬は今どこに?」
「友達を迎えに行っちゃいましたねぇ…」
「誰かが乗っているのか?」
「いやぁ…」
(
※シミレーション1※
「王子はあの女生徒とはどのようなご関係で?」
いや、違うなぁ
※シミレーション2※
「王子はエリザベス意外とあの女性のどちらが本命なんですか?」
これも違うなぁ
(あぁ!どう言っても不敬罪だわぁ…)
前世の芸能レポーターを尊敬しながらニーナは頭のコンピューターで必死に言葉を探していた。
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