第12話 うちの〇〇知りませんか?
海の中クロの首にしがみつく。ぐんぐんと海の中を進むクロ。馬って泳げるんだね。知らなかった。
クロはあっという間に島に付き、ニーナを乗せたまま岩場を登っていく。結構急なので、クロにしがみつくコアラのようになってしまった。
上につくと腰くらいまでの高さの草が広がり海が見渡せ、潮風も吹いて本当に気持ちがいい全身がビチョ濡れなのでちょうど良く乾くかも。
「ヒヒヒヒ~~~ン!」
クロが嘶いた。
ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!
地響きがどんどんこちらに近づいてくる。
またもやクロにしがみつく!
(もぉぉなんなぁん!)
あっと言う間にたくさんの馬に囲まれていた。クロほどでかくは無いけど食用にされるような小さなポニーじゃない。サラブレッドくらいの本当に馬!よくいう馬!
みんながお帰りと言わんばかりにクロに頬ずりしに寄ってくる。
「も、もしかして、これみんなクロの家族?」
「ブヒンッ」
(えぇぇっ!マジで?
どう考えてもメスいっぱいじゃぁん。雄はどう見てもクロの子供たちじゃん。
浮気の範疇を越えてもうハーレムやないの!
クロ!一途を想像して理想だと思っていたのにぃ!
裏切り者ぉ!結局お前も獣なのね。)
そんなガッカリしているニーナに気づいているのかいないのか。クロはニーナを乗せたまま元来た陸地方向に向け歩を進める。それに倣って他の馬たちも歩を進める。
高台のようになっているため陸地との間に海があるように見えないくらい開けた景色。
(えっ。えっ。ほぼ崖だよね。崖だよね?)
そんな気持ちも無視して進むクロ。崖に向かって走り出した。
(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!)
クロにしがみつくので精一杯。
ガッ!
崖を蹴った!
空中に飛んだ!
飛んでる!
あっという間に近づく海面!
ドボォォォォン!
クロの首しがみついたまま一瞬で全身海の中に浸かる。一瞬水中に頭まで浸かってすぐ胸の位置まで浮上した。
「ブハッ!ブハッ」
(し、死ぬかと思った。マジで。死ぬかと思った。)
振り返ると他の馬たちも飛び込んでいる。
(えぇぇ。マジっすか)
全馬が飛び込んだのを見守ったクロは陸地に向かって泳ぎ出した。それにみんなが付いて泳いだのを確認するとクロは一番後ろについた。
泳ぎが上手くない馬を鼓舞しているようだ。
(くぅぅぅぅ!
悔しいけどクロはいい漢(オトコ)だ!
そりゃ惚れてまうやろ!)
ハーレムになってしまうのもしょうがないわ。クロを許す事にした。これが惚れた弱みってヤツかぁ。
いや、でも前世の旦那の浮気を許す気は無いのよ。惚れてなかったって事なのか。いや、あれは甲斐性もなかった。
別れた後も養育費を最初だけ払ってトンズラしたから、また探して裁判所に訴えて差し押さえまでしてさ。それでも結局またトンズラして、さすがに費用もかかるし、娘も
「あんな男は父親と思いたくない、関わりたくない」
そう言ってくれたからスッパリと関係を断てた。
養育費ってのはもっと強制的になるべきよね。賃貸保証会社みたいにさ、養育費保証会社ってのができて、任意じゃなくて強制にすればいいのに。
まったく、男は気持ちいいばっかりで家事はしないわ、金もまともに入れないわ、浮気もするわで、そりゃやってられない訳で。
この世界ではどうやら貴族子女として結婚させられるのかもしれないと思うとゾッとする。
貴族だから政略結婚が主だから恋愛結婚なんて夢物語なのかもしれない。まぁ愛の無い結婚と割り切っているだけに楽なのかもしれない。
何よりも感覚が50歳だから10代、20代の男子って言葉の通り「男の子」にしか見えないんだよね。シルヴィオくらいの年齢がほんと落ち着いていいのよね。
だからといってシルヴィオにときめくのか?って言ったらいいなぁとは思うけど『トキメキ』とは違うのよね。
クロは理想だったけどハーレムの一員になりたくはないし、何よりも種別が違う。これもまた『トキメキ』とは程遠いわよね。
『
そう張り紙出さないと!
やばい!社交界デビューする前に枯れているって事に気づいてしまった……
でもまずはこの領地をなんとか立て直して利益を出してアーロンが継いだ時に、私は私で不労収得を得て『くうねるあそぶ』生活をこのラウタヴァーラ辺境伯でさせてもらおう。
はっ!お嫁さんがイヤがるか?
小姑はまぁ、一緒には暮さない、干渉しないような場所に別荘でも立ててもらってノンビリ過ごすのも悪くないかも。この海が見える場所がいいなぁ。クロとたまに海辺を走るの。
やだ、すごくいいんじゃない?
いよぉし!『くうねるあそぶ』のために『アーロンが、将来お荷物の私がいても困らない領地にする!』よ!
ゴールが決まると俄然やる気が出るわ。考えがまとまったくらいにはもう屋敷の近くまで戻って来てた。
この馬の大群を連れて町を通って屋敷に戻るなんて無理!
急遽ポニー達の放牧場へ連れて行く。
馬は全部で50頭くらいいた。クロは本名『黒王号』の名前に負けない本当に馬の王だったようだ。
ポニー達は大きな馬に驚いてはいるが、好奇心の方が勝っているのか喧嘩にならず、お互い鼻を擦り寄せ一緒に走り回っているので仮にここで過ごしてもらおう。
しかし10頭ほどクロと別れがたい感じだったので
「一緒に来る?」
そうニーナが聞くと喜びを身体で表しスキップのような足取りでついて来た。
奥さんなのかな。ってか10頭も!やっぱりクロは女の敵かも!
ぐぬぬっ!と馬上からクロを睨んでいると察しているのかクロの耳が申し訳なさそうにペタンと後ろに倒れた。
やっぱりかわいい。
はっ!私ってばダメンズばかり好きになるダメンズウォーカーなのかもしれない…
1週間後、国境の方も片付けが済んで落ち着いてきた。しかし戦争。ケガ人も多く出たため補充の新たな騎士達、補給物資と共に新たな領土経営のためにと一人の男性がやってきた。
「チャ、チャーリー・テンパートンと申します!
よ、よろしくお願いいたします!」
緊張しているのか、噛み噛みの挨拶とともにやってきたのはこげ茶のボサボサ頭で目が隠れてよく見えない細い体つきの20代半ばの男性だった。
前任のデニスは右腕という立場だっただけに辺境伯への着任は現代でいうところの左遷という感覚でプライドが許さなかったのだろうから今回は若い雑用だったら文句も言わないだろうという事なんだろうか。
だからといってこの人選はどうなの?ねぇ?早くも『くうねるあそぶ』の危機!であります!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ウチのタ◯知りませんか
ご存知でしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます