第13話 ふたりは!

※チャーリー視点 


王宮にある執務室…いつものようにチャーリーは仕事(雑務)をしていた。


「チャーリー、突然で悪いがラウタヴァーラ辺境伯領へ行ってもらえるか?」


 突然の辞令に固まるしかなかった。え?なんで?どうして?頭が混乱して真っ白だ。


「ど、ど、どういう事でしょうか?」


 上司のエグモントに質問するのが精一杯だった。


「チャーリーはまだ家庭を持っていないだろ?身分も男爵家の次男だから家とのしがらみも無い。まだ任されているチャーリーでないと無理という仕事も無い。今は本当に忙しくてな。まぁ頼んだわ」


(えぇぇぇぇぇぇぇぇ!)

 

それって単に皆嫌がっただけじゃないのか?巡り巡って最後の最後の下っ端の俺に回ってきただけじゃないのか?


「いや、自分ではまだ雑用しかできませんし、実力不足なんではないでしょうか?」


「はははっ。前任の帳簿を見ながら収支と支出を記録して税金を納めてくれたらいいだけだから。簡単だろ?」


 もう行ける人間が俺しかないという事で結局『断る』という選択肢も元々無かった。大ボスのオニール様にでさえ姿を見る事はあっても話しをする事も叶わなかった俺がそのオニール様に代わって領土経営って……


(おかしいだろ!)


 本当に社会って理不尽だ。どんなに主席で学校を卒業したとしても兄よりも勉強が出来ても次男だからって家を継ぐ事もできず、王宮に仕官したと思ったら雑用の間にラウタヴァーラ辺境伯に飛ばされるってなんだよ!


 どれだけ不満があろうとも日にちは遠慮なくやってきて気付いたらラウタヴァーラ辺境領に連れてこられていた。これから、もう上司もいない俺がこの領土を実践もなくいきなり経営していくんだと思ったら身震いと段々と緊張してきた。


「チャ、チャーリー・テンパートンと申します!

よ、よろしくお願いいたします!」


 緊張しすぎて噛んでしまった……

でも周りの俺を見る目はみんな不安そうだ。安心してほしい。俺も不安だ。


 ニーナお嬢様と執事のセバスチャンがいる執務室へと案内された。

ニーナお嬢様はまだ14歳だというし、セバスチャンがこれから仕事を教えてくれるのだろうか。


「チャーリーさん、ラウタヴァーラ辺境領へようこそ!これからよろしくお願いします」


 ニーナお嬢様がにっこりと笑顔で挨拶をしてくれた。


「早速なんだけど、これが今までの帳簿」


ドォン!


たくさんの帳簿が出てきた。


ゴクッ


思わず生唾を飲んでしまった。


「まぁこれらを見てくれてもいいのだけど、これは前任のデニスが付けていたもので横領するために粉飾決算されているものだから参考にはならないわ

そして残念ながらこの間のデニスの事件によって私達の領土は本当にヤバイ状況まできているの」


 ヤバイ状況……


「でね、思い切って領土改革をしようと思っているのだけれど、

私ってばじゃない?

私がかけあっても誰も相手にしてくれなかったのよ…

社会的信用が無い!のよ

それでチャーリーにはこの領土改革を一緒にやってもらいたいと思っているんだけど…」


「領土改革……ですか?」


「えぇ、チャーリー、ちょっと威張ったおじさんのように低い声で話してみて」


「えっ?!こ、こうですか?あ~君は本当に使えないねぇ」


 城でさんざん上司のエグモントに言われまくっていた言葉をエグモントのように低い声で真似してみた。


「いいね!普段は執務室で会計仕事に集中してくれていいから。皆の前で話さなければならない!って時だけ!ね!お願い!」


 なんだかよく分からない……


 返事を待つことなくもう一緒に頑張る事になっていた。お嬢様はもう俺がラウタヴァーラ辺境伯領に着く前から考えていたらしく地図を広げる。


「この領土はね、隣国アヴェリンに近い、つまり砦に近い所の畑は襲撃によってダメになりやすいのよ。今回もだったんだけど……」


 ニーナお嬢様が苦い顔をした。


「それに、襲撃されてしまうのに疲れてしまって、その子供たちがもうラウダヴァーラを出ていってしまったの。


 それで誰も継いでもらえずに休耕地になっている畑がたくさんあるの。

 だから収穫量が減ってしまう。でも帝国からの税は変わらない。


 だからこそどんどん領土がやせ細っていくという負のスパイラルに陥ってしまっているの」


 なるほど。確かに王都は全領土から税がやってくるから潤っているが他の領土は領民から領土へ、領土から王都へと税があるために大変だというのを学んだ。


 それにどこの領土も王都へ仕事を求めて若者が出て行ってしまい苦しいという事も学んでいた。


 俺は王都で取る側から取られる側へと変わった事が身につまされて言葉が出てこなかった。


「『食を守る事は国を守る事!』だと私は思うの。だからね……」


 そこからの話は今まで学んできたこと、体験してきた事を全てをことごとくぶっ壊した。





 まず最初にした事はラウタヴァーラ辺境伯領土は隣国アヴェリンとの境にあり普通よりも襲撃にあって畑がダメになりやすい事。


 今年は襲撃によって収穫量が半分以下となってしまったため、領土の再建にも費用がかかるので今年度の税を免除してもらいたいという陳情書と予算提案書を作り王都へ送らされた。


 それから用意されたシャツにトラウザーズを履く。そしてツバの広い黒色のハンターハット。このハンターハットには何故か外側は銀色、内側は黒色のネットがカーテンのようにめぐらされている。


「?」


 被って鏡を見ると中からはネットのおかげで顔が見えない。でも内側からの視界は何も問題はない。


「着替えた?」


 入って来たのはまったく同じ格好をしたお嬢様だった。背丈はまだ俺の方が5cmほど高いし、俺の方がヒョロヒョロだ。


「う~ん、まぁ似てないけれど、パッと見は同じ人間に見えるよね?」


 執事のセバスチャンと侍女のミラが頷いている。


「うん、これでチャーリーには直接領民と交渉して欲しいの!私は貴方が執務に追われている時には視察に出るからね!二人は一つよ!そうねぇ、名前は『ミスターXエックス』よ!」


「みすたぁえっくそ?」


「ミスターエックス!あぁもぉ!こっちにはアルファベットも無いもんなぁ」


 お嬢様が訳の分からない独り言を言う。救いを求めてセバスチャン、ミラの方を見るがシレッとしており何も言わない。よくある事のようだ。


 こうして二人で一人の『ミスターXエックス』が誕生した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ふたりはプリ…いや、ミスターX!


わいは猿や!プ◯ゴルファー猿や!

の敵対組織のバス!ミスターX!

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