第50話 〇さん臭い 〇=おっorう?

 あっという間に春が過ぎ、雲が白く厚く空ににょきにょきと入道雲となって青い空に表す季節になっていた。


 学生という事もあり、この一年間、本当に社交界という物を『学業のため多忙』という事でサボれたのはありがたかった。


 学年の終わると長い夏休み期間に入るのと、本格的に暑くなるため、社交界シーズンもラストの王宮での舞踏会がある。

 それは学園の卒業直後なので卒業もお祝いされる舞踏会でもあるので『卒業舞踏会』と名前もついており学生も全員出席せねばならないらしい。


 ニーナとしては舞踏会よりもラウタヴァーラにいろいろと口を出し、手を出したい箇所がいっぱいあるので早くラウタヴァーラに戻りたいところ。


 最近はいろんな所で投資の話しが漏れ聞こえるようになっていた。

「あれ、本当にすごいんだよ」

「本当か?」


「あぁ、1ヵ月で………が戻ってくるんだ」

「凄いな!」


「あぁ、そのお金で俺は……」


(投資?1ヵ月で?胡散臭いねぇ)


「ねぇ、その話、私にも聞かせてよ」

 ニーナが明るく声をかける。


「いや、この話は信用できる人間にしか話しちゃいけないってヤツでさ、二人にまでしか教えちゃいけないって言われてるんだ。だからムリ」

「えぇ~ひどぉい!」


「んじゃ、君!話しを聞いたらその信用している人の一人に私を入れてよ」

 と今、話しを持ちかけられていた学友に言う

「え、えぇぇぇ」

 困って立ち去ってしまった。チッ!


(話をしてもいいのは信用できる二人まで…この感じもなんかイヤな予感がする)



「ねぇ、みんなは彼らが話していた投資話って聞いた事ある?」

 リズもプリシラも田中もさぁ?って聞いた事が無いようだった。


「そっか、プリシラでも分からないなら分からないね…」

「ちょっと!失礼ね!なんで私なのよ」


「だって、この中で一番社交界に近いのはプリシラじゃん。舞踏会だって積極的に出てるんでしょ?」

「ま、まぁそうねぇ…でも知らないわねぇ…投資だけに男子で流行っているんじゃないの?」

 プリシラは田中を見る。


「私にはテッド意外の友人はいないから分からない」

「でしょうねぇ…」

 田中は自虐したわりにプリシラに言われると

「なっ!」

 動揺を隠しきれなかった。



「あぁ、そういえば…社交界で噂になっていたんだけど…ブランカ様がフンボルト伯爵様と結婚するんだって話題になっていたわ」

 王子アレクサンダーの浮気相手でもあるブランカの名前にはリズも敏感に反応した。

「フンボルト伯爵様って…もう45歳よ…ね?」


「そうなのよ!後妻よね。もう跡継ぎに長男がいらっしゃるからお子様が生まれても後を継げる訳じゃないし。でも、ブランカ様のご実家の援助を申し出てくださったんですって…」


「まぁ…」

 愛の無い結婚という事が透けて見えて自分とも重なるのかそれ以上言葉が出ないリズだった。


「今度の『卒業舞踏会』で顔合わせしてそのまま結婚じゃないかってみんな話していたわ」


(へぇ、王子の愛人、もしくは王宮への仕官は諦めたって事かな?)


 意志の強そうなブランカの眼差しを思い出し、なにか引っかかる気がニーナはした。

「ねぇ、プリシラ…教えて欲しいんだけど…」


        ※

 放課後、ニーナは学園の女子寮へと足を運んだ。プリシラにブランカの住居を聞いたのだ。管理人に話をして、ブランカの部屋へと案内してもらう。


 管理人にノックをされ、扉をあけたブランカは思いもよらぬ訪問者に目を見張った。

「あら…いらっしゃい…どうなさったの?」

 

 管理人にお礼の会釈をしてブランカの部屋へと足を踏み入れた。ブランカの部屋は貴族子女とは思えぬくらいにとても質素な物だった。キョロキョロするニーナに


「ふふっ、質素でしょ?私の実家は貧しいの。税金を毎年払うので精一杯」


 ラウタヴァーラ辺境伯も同じだったので気持ちはよく分かる。


「で?今日は何の御用?」

 質素なベッドにブランカは腰をかけ、質素な勉強机の椅子にニーナを座らせた。


「あの、一つお伺いしたいんですけど…」

「何かしら?」

 ニッコリと優雅に笑う姿は本当に妖艶な雰囲気があり、ニーナは飲み込まれそうになる。王子アレクサンダーが魅かれてしまうのも納得だった。


「あ、あの!!」

「うん?」

 弧を描く唇の右下にある黒子がまたセクシーだ。


 ニーナはずっとあの炊き出しの会、そして老人を支えるための政策…なんとなく既視感を感じていた。そう、ブランカは日本人なんじゃないだろうか。そして自分ニーナのように日本人だった記憶を持っている人間なんじゃないだろうかと。

 

 自分ニーナという前例がいるなら他にも同じように転生している人間がいたって何の不思議もない。ただ日本人かどうかは分からない。

 だから勇気を出してニーナはを見極めるある質問を彼女ブランカにぶつけた!



~~~~~~~~~~~~~~~~

私は「おっ」さん臭い……

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