第51話 ブランカ!お前もか!

「クイズ!大きな桃が川に流れてきました!どんな音?」









「え??」


「あなた!!日本人よね?」

 ビシィッと真実は一つ!のポーズでブランカを指差す!


「えっ?ど、どうしてそれを?」


「桃が流れてくる音を『どんぶらこ』なんて表現するのは日本人しかいないからよっ!」

「日本人…懐かしい響きだわ…ねぇ、そう言うって事は!もしかして貴女も日本人なの?」


 コクンと頷くニーナ。


「そうよね!無限連鎖講ねずみ講なんて言葉知ってるなんて怪しいって思っていたのよ!」

「私もです!」


 なんだか二人とも同郷なんだという変な連帯感がそこで生まれてしまう。


「ブランカさんはいつまでの日本の記憶を持っていますか?私は2023年!令和5年です!」

「2023年?令和?えっ!1999年のノストラダムスの大予言は?2000年以降も人類はいたの?」


「いました!何事もなく2000年を迎えました!ブランカさんは何年に亡くなってしまったんですか?」

「私は…1990年よ。平成2年…」


「なんで亡くなったんですか?私は交通事故です!」

「私は…お立ち台から落ちて…打ちどころが悪くて…」


(ま、まさかのお立ち台!ブランカさん、ボディコン着てふわふわ扇子振っていたのか!)


「そうなんですね…お立ち台に立てるという事はお若かったんですね…」

「えぇ、あの時21歳…1969年、昭和44年生まれよ…」


「お、おぉ、私は昭和48年生まれですっ!とはいえ死んだ時はブランカさんより全然年上ですけどね」

 テヘッとニーナは笑った。


(そりゃ日本の絶頂期に亡くなったんじゃその後のバブル崩壊も知らないか…)


「ところで…あの…フンボルト伯爵様とご結婚なさると聞きました。それはブランカさんの意志なんですか?」

「ふふっ、日本人って分かったらハッキリ聞くわねぇ~。違うわよ。あんな50歳の男の後妻なんて自分から望む訳ないじゃない。

炊き出しに老人支援政策と2つも失策したら王子アレクサンダーに厄介払いされちゃったって訳」


「親御さんは何も言わないんですか?」

「借金だらけのところに援助してくださるって話ですもの。何も言わないわ。フンボルト様は私がもし王子アレクサンダーの子を宿していたとしても、もう跡取りもいるから受け入れてくださるんですって…」


「えっ!それって王子アレクサンダーとの関係も知っていて…って事ですか?」

「そうよ…」


「あったまきた!ブランカさん!それでいいの?大和撫子があんな胡散臭い王子アレクサンダーのいいなりで悔しくないの?!」

「……そうね…悔しいわ…面白い事を教えてあげるわ…次に王子アレクサンダーが狙っているのは実は…あなたよ?」


「えっ?なんで?」

「あなたのあの時の頭脳…そして…」

 ゴクッと生唾をニーナは飲んだ!


「馬よ!」

(馬かぁぁいっ!)


「それで尚更、私が邪魔になったみたい」

「何それ!私もイヤですけど馬はもっと譲りませんよっ!許せない!ブランカさんはそれでいいの?

今まで尽くしてきて、そんな終わりでいいんですか?」


 ブランカは横に首を振った。


「ですよね?!私は許せません!そこで一つ大変申し訳ないんですが…お耳を拝借…」

 ニーナは誰もいないけど周りに誰もいない事を確認してブランカさんに耳打ちをした。


「ふふっいいわ!力を貸しましょ!」

 ニーナはブランカさんと硬い握手をした。



          ※


「ねぇニーナ」

「うん?」


 夕食後、まったりと談話室で過ごしていたらテッドが話しかけてきた。とはいえ大体夕食後はここでテッドとアーロンと過ごす事がほとんどなのでいつもの事である。


「『卒業舞踏会』出るんだよね?パートナーはいるの?」

「あぁ、リズは婚約者という事で王子アレクサンダーにエスコートされなくちゃいけないんだって。

で、プリシラはこの間の舞踏会でちょっといい感じになった男性がいるらしくって…その人と出るっていうからさ、じゃの田中と出る?って話にもなってるよ?」


「えっ?!」

「テッドは舞踏会好きじゃないでしょ?特に王室主催のなんて」


「た、確かにそうだけどさ!」

「まぁ、『卒業舞踏会』だからエスコートが絶対必要じゃないから一人で中に入ってもいいんだけどね。別に田中と踊るわけじゃないし、田中はリズが一曲目はしょうがなく王子アレクサンダーと踊るけど2曲目は是非自分と!ってもう申し込んでたしね。私もちょっとやりたい事が…あって…ねぇ?」


「な、何か企んでる?」

「企んでるだなんて失礼な」


「おぃいぃ。心配しかない!俺も出る!」

「まぁまぁ無理しないでよ。テッドの命も心配だし」


「いやいや、さすがに大勢の目の前では狙わないでしょぉ」

「そぉかなぁ?でも仕事も今すごい大変だってお父様言ってたよ?」


「そぉなんだよねぇ…でも遅れてでも絶対行く!さすがに王宮主催の舞踏会の日に残業はない!と思う!」

「ふふっ、そうだといいねぇ」


「ね、せめて!ドレスだけでも贈らせて?」

「あぁ!ごめーん、ドレスはもうリズ、プリシラと一緒に買いに行っちゃった」


「えぇぇっ!じゃ色!色教えて!」

「しょうがないなぁ…」


 テッドに根負けしたニーナであった。


 舞踏会前日にはドレスの色赤色に合わせたネックレスとイヤリングをテッドから贈られてしまった。


「もう買っちゃったもん」

 なんだそうで…アクセサリーには罪は無いし、自分で用意していたものよりもすごかったのといつもつけているテッドからもらった馬の蹄ネックレスにも合わせやすいデザインだったので、そちらを着けさせていただく事にした。


 当日の朝にはオニールと一緒に出勤するテッドにしつこく

「いい?絶対後から行くから誰にも触れさせちゃダメだよ?男の人にも付いて行っちゃだめだからね?ニッコリするのもダメ!分かった?」

(おとんか!)

 本当の父親であるオニールは自分の言わんとする事を全部テッドに言われているため、もう何も言う事がなく、ただ呆れていた。


 そしてお父様オニールに連れ去られるようにテッドは仕事へと出発していった。



~~~~~~~~~~~~~

「ブルータス…お前もか!」

うん、ちゃんと劇見た事ない。

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