第52話 男性は閲覧注意!

 午前中は卒業式だった。卒業生代表として新生徒会長が送辞を、元生徒会長の王子アレクサンダーが答辞をして、卒業生は涙を流す素晴らしい式だった。


 夕方は王宮で舞踏会。卒業式の日にするので『卒業舞踏会』とも呼ばれている。この日だけは学生も参加するので今までにない賑わいだ。


 たくさんの人の中で王子アレクサンダーとリズが一番最初に陛下と皇后に挨拶に行った。王子アレクサンダーから色が指定されていたので二人はラベンダー色でセットのような感じになっていて傍から見るとすごく仲の良い婚約者同士に見えた。

 ニーナの横の田中からはただならぬオーラが…

(熱い、熱いよ…田中氏)

 そんな田中氏は今日は瓶底メガネを外しボサボサの髪をピシッと整え後に流していた。初めて見る田中の目は奥二重のスッとした眼で長身でスタイルも相まって、まるで韓流スターのようだった。田中の服は黒色なんだけどラベンダー色のラインが入っており、胸のハンカチーフもラベンダーとなっており密かにリズと合わせたようになっていた。


(うん本気だね!田中!頑張れ!田中!)

 ニーナは心の中でエールを送る。


 周りを見るとプリシラが背の高いイケメンと来ていた。可愛いピンク色のドレスで

(あぁ、恋してますぅって感じの色)

 こちらまで幸せが伝わってきそうなくらいだ。


 次々と陛下と皇后に挨拶へと向かう。いつもなら爵位の順に挨拶へと向かうが、今日だけは卒業生から挨拶へと向かう。

 学園は男性が多いのでペアではなく一人一人名前を呼ばれ男性は会釈、女性はカーテシーで終わる。他の学年もそうだ。そのため、ニーナもプリシラもパートナーとではなくサクサクと流れるようにカーテシーをして終わる。


 一般の参加者はその後だった。そこでフンボルト伯爵を把握できた。燕尾服を着た少し太めで小柄の男性だ。かっこいいとはお世辞にも言えない。

 そりゃ王子アレクサンダーのお古だったとしてもブランカほどの若くて妖艶な後妻をいただけるなんて棚ぼたでしかないだろう。


 ほどなくして舞踏会が始まった。1曲目は王族から踊る。陛下と皇后、それに王子アレクサンダーとその婚約者のリズだ。

 皆、美しくてホゥと見惚れていた。うん、リズは本当に可愛らしく美しい。『可憐』という言葉がこんなにも似あう女性はいないと横で田中がブツブツとつぶやいていた。


 2曲目からは全員踊って良し!だ。王子アレクサンダーがズイッとこっちに向かってくる。

(ヒッ!)

 田中は…もうリズに一直線でニーナの事なんて放置!


 王子アレクサンダーがスッと赤いドレスの女性ニーナの手を取り手の甲にチュッとリップ音をさせ

「一曲お付き合い願います」

 そう爽やか王子の笑顔で上を向いたら赤いドレスの女性はニーナでなくブランカだった。

 ニーナの後ろにブランカが控えており、王子アレクサンダーが向かって来て手を握ろうとした瞬間に前後を入れ替えたのだ。


「まぁ殿下、光栄でございます」

 そうブランカに大きな声で言われてしまったら否定するのは男性として失礼となる。王子アレクサンダーは爽やか王子の笑顔を引きつらせるが曲が始まってしまったので、そのまま踊り始める。


「今日で最後でございますわね…」

 踊りながら王子アレクサンダーの耳元で妖艶にブランカは囁く。


「あんな男に抱かれる前に…最後に…思い出が欲しゅうございます…」

 一度下を向いてから上目遣いをしながら妖艶にささやかれてしまうと…王子アレクサンダー

「そ、そうだな…あんな年寄りじゃもう君を満足させられないだろうからな…」


「えぇ…是非…最後に激しく私の心を突き上げて…欲しい…ですわ…」

 艶っぽくそんな言葉を吐かれてしまっては、もう健全な18歳の男にはそりゃ刺激的な訳で…


 2曲目が終わったらもうニーナの事なんて忘れたかのごとく王子アレクサンダーはブランカを連れホールを後にした。


 ニーナはある人物達に目くばせをしてから二人の後をバレないようにこっそりと後を追う。パタンとある部屋の扉が閉まるとニーナはその部屋に耳を当てる。そしてもう一度目くばせをした。その目くばせを確認した人物達は行動へと移った。


 扉の中ではシュルシュルと着崩れの音がする。バフンッとベッドに雪崩こむ音がした。

 今だ!ニーナは扉を思いっきり開けた!!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!誰かぁぁぁぁぁぁっ!!」

「な!貴様!何故!」

 慌てて立ち上がる王子アレクサンダー!裸だ!


「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ニーナはまた一段と大きい声を上げる。


「貴様!ふざけるな!」

 王子アレクサンダーが両手を伸ばして向かって来た。


『ニーナ!男に押し倒されたり、壁に押し付けられたら、モウ抵抗するのはムズカシイヨ。その向かってくるチカラを利用して、こう、コウネ!』

 頭の中でナオミが教えてくれた事が流れる。


 王子アレクサンダーの伸ばした手を両手で掴む。そのままニーナの方に引く。ニーナの方に向かっていただけに勢いが止まらずそのまま引っ張られる王子アレクサンダー

 ニーナはしゃがんで後転するように背中を着く。勢いが殺されないまま王子アレクサンダーは体制を崩す。

 ニーナは腕をガッチリ脇で固定して両足で思いっきり上にいる王子アレクサンダーを蹴り上げる。そのまま王子アレクサンダーは一回転するようにニーナの後ろに飛ばされ背中から地面に打ち付けられる。


 そう!柔道の巴投げだ。


『投げたらすぐ立ち上がるネ!男はちゃんと急所を攻撃して動きをとめないとあぶないアル!』

 心の中のナオミが叫ぶ


 ニーナはすぐ立ち上がり王子アレクサンダーの急所!そう真ん中も真ん中!一番男性にとって大事なところに上から16文キックをお見舞いしようと足を思いっきり振りあげるが…丸見えだけに汚くて勇気が出ず、足が下りない。


 するとシーツに身を包んだブランカがベッドから飛び降りて王子の股間を思いっきり上から踏みつぶした!



~~~~~~~~~~~~~

ご愁傷様です。きっと、ぐにゅっ!って感触…

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