第53話 Money Money Money
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
腹の底から一気に喉もとへ突き上げてくる、この世のものとは思えない絶叫が響いた。
(叫びたいのはこっちだよ…)
バタバタバタバタと複数の足音が扉の元へとやってきた。
「なんという事だ…」
裸の女性がシーツにくるまれており、その女性の横で裸で大の字で意識を飛ばしている
リズ、田中、リズの父親でもあるリュシリュー公爵、フンボルト伯爵がそして最後に…陛下がやってきてこの惨状を目にした。
その後ろでは
そう実はブランカと話し合って、最後に
「陛下…私はエリザベスを愛している。いくらなんでも娘を大事にできない男に娘はやれないな…婚約解消していただきたい…」
陛下は目をつぶり黙って頷くしかなかった。
「陛下…
フンボルト伯爵の一言に陛下はため息を付きながら頷くしかなかった。
田中は意志を決めたかのようにメガネを外しリズの方を向いて片膝をついてリズの手を取った。
「リズ…私はこの時を待っていた。私は貴女の芯の強いところ、頑張り屋なところ、意地っ張りなところも全て愛している。どうか、私と結婚してくれないか」
プロポーズを突然されたリズは涙を流しながら
「ハイ…」
と返事をした。すると今度は田中はリズの手を取ったまま立ち上がるとリュシリュー公爵の方へと向かい
「私はビリー・タッカーことウィリアム・バラーク…バラーク王国の第一王子です。娘さんを私にください」
それにはリズも驚いた。まさか田中がバラークの王子だったなんて!しかも初めて見た田中の目はスッとした男らしい目をしており、なかなかのイケメンだった。
(マジか…)
ニーナも驚いた。
「分かりました。友好の証としてリズを嫁に出します。それでよろしいか?その代わり第二王子のアルフレッド殿下を帝国にお返しいただきたい」
「えぇ、リズを手に入れることができるならそのくらいお安いもんですよ」
田中とリュシリュー公爵が固い握手をした。その上から陛下も手を添えた。
リズは田中の左腕に抱かれながらうれし涙を流していた。
「えっ、あの投資はどうなるんだ?」
「金は返ってくるのか?」
学生達が騒ぎ出す。すると大人たちも
「えっ!あの投資、
「私は皇后に持ちかけられたぞ!」
「私もだ!」
「金は無事ですよね?」
「返していただけるんですよね?」
多くの貴族が皇后へと押し寄せた。皇后は近衛兵に守られながら奥へと隠れてしまった。そこでまた皆の疑惑や不安が消えるどころか余計に増してしまい、答えを聞くまで帰るに帰れない状況へとなってしまった。
一仕事終えてホールへ戻り、この状況に驚いたのはニーナだった。
「な、何事?」
するとホールにいたプリシラが近くに寄ってきて
「なんかね、
プリシラの話しは続く
「そしたら学生だけじゃなく貴族の人たちも皇后に持ちかけられて投資していたっていうのよ。それで大人たちが皇后に詰め寄っちゃって…皇后は奥に引っ込んじゃってもう戻らないんじゃないかって余計に大騒ぎになっちゃって…」
プリシラは興奮して
「そしたらね!私のパートナーも投資してた!って!最初はちゃんと1割返ってきて、すごい!って…」
「……」
「それで友達にも紹介して、友達も投資したら1割返ってきて『この話は本当だ!』ってもっと投資しちゃったんだって…」
「……」
「でもそれから利息がまだ返ってこないから利息の支払いが遅れているだけなのかなって思っていたんだって。結構全財産に近いお金を投資しちゃったからって今、彼もあの中にいるの…」
矢継ぎ早に説明してくれた。
(ポンジスキーム!!)
「とりあえず皆興奮しちゃっているから、関係の無い女性などは避難しないと危ないわ!プリシラ急いで周りの女性にも帰るよう促して!」
ニーナがプリシラに皆の避難をお願いする。プリシラはコクッと頷いて、周りで驚いて引いている女性達に帰るよう伝えてくれ一緒にホールから退出していってくれた。
それでもお金の事なると目の色が変わってしまった男性達の怒りは収まらない。軽い暴動のようになっている。どうしたら治まるのか、分からず戸惑っていると
「ニーナ!」
テッドが走って来てくれた。タキシードに赤いハンカチーフが入っており、ニーナの赤いドレスと合うようにしてくれていて嬉しいけれど、もう舞踏会どころではない状況にテッドは唖然としていた。
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ABBAの名曲ですなぁ…
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