第24話 あ〜素晴らしい株の世界♪

 アーロンが執務室の扉をバンッと開ける。テーブルに付いていたニーナとチャーリーは驚いて振り向くが、セバスチャン、ミラは落ち着いてテーブルの方を向いたままだ。テッドも護衛として扉近くにおり、身体はニーナ、顔だけアーロンの方へと向けただけだった。


「株式会社って何?どうなってるの?」


 そんなアーロンの質問にニーナは落ち着いて答えた。


「株式会社?畑を遊ばせておくのももったいないじゃない?

株っていう、まぁ証明書?を発行するわけ。


 100株を発行して半分の50株はラウタヴァーラ辺境伯の持ち分。残りの50株を畑を譲ってくれた広さに比例してお渡しするの。


 で、収穫があっていろんな費用やみんなへの給与を渡した後の純利益を100で割ってその分を株の持ち分によってお渡しするのよ。


 そしたらもう歳を取って畑を耕せなくなった休耕地も活かせるでしょ?その持ち主にもいつになるかは分からないけどお金は入るから悪い話しじゃないでしょ?


 畑を譲ってもらったけど生活できないってこの土地を離れた人には今回はお願いして土地を譲ってもらったわ」


 『譲ってもらった』と言ったが実はニーナは土地を離れ休耕地にしていた人には『今までの税金を払うなら土地所有の権利を認め株式を発行する。支払わないなら土地の権利を手放して?』


というような内容で手紙を出し、無料タダで手に入れていた。

 それはちゃっかりニーナ個人の土地として株式を得ている。まぁ、これも『くうねるあそぶ計画』のためなのでちゃっかりとやる事はやっておく。



「そしたらうちへのお金はどうなるの?」


「ラウタヴァーラ辺境伯は50%の株を持っているわけだから純利益の半分は約束されている訳よ」


(まぁ本当だったら法人税だとか所得税だとかいろいろと税金が起こるけどこの世界ではまだ必要ないわよね。

株式会社とは多少違うかもだけど私の分かる限りではこんな感じかな

上場する場も無いしね


ラウタヴァーラ辺境伯プランテーション改革よ!)


「人口減少っていうのは税収に一番の問題だけど、これからはラウタヴァーラを離れる人も減ってくれるだろうし、給料が出るから働きたいって人がたくさんこの領地にもっと来てくれたら嬉しいわよね」


「うん、すごい!すごいけど大変だったろ?そんな時にボクは知らないでいたのがすごく悔しいよ」


「ご、ごめんね。

きっと知ってしまったらアーロンはお母さんを放っておいてこちらに帰ってきてしまうでしょ?それだけは避けたかったんだよね。ごめんね」


「もう隠し事は無しだよ!」

「うん」


 指切りげんまんした。


「でさぁ、『ミスターX』って何?今、一番答えていたのはニーナだよね?って事は『ミスターX』ってニーナだよね?」


(うぐっ)


 無言で固まるニーナ


「『隠し事は無しだよ』って今さっき指切りげんまんしたよね」


(はうっ)


「そ、そうでした……実は『ミスターX』は私とチャーリーでやっているの。みんなの前で指示を出すのはチャーリーなの。私は私で視察したり……そこでどうしても指示が必要になったら護衛に耳打ちして代わりに話してもらってるってところかな」


 はっと何かに気づいたアーロン。


「じゃ、じゃじゃじゃじゃじゃぁ!テッドは知っていたんだね!

あ!セバスチャン!ミラも!」


 見渡されたみんな黙ってコクンと頷いた。


「もぉぉぉっ!なんだよっ!ボクだけ知らなかったのかよっ!」


 むぅぅぅっとほっぺを膨らます姿に可愛いっと癒されるニーナ。身長は大きくなったけど相変わらずかわいいアーロンでホッとした。


「まぁまぁ、じゃ今のラウタヴァーラの地図を見せてあげる」


 バッとテーブルに地図を広げる。見入るアーロン。


 屋敷があってその周りを道が囲っていて、いろんな町があってその外側を大きな道でまた囲ってある。まるで二重丸のようになっている。


 家や商店はその二重丸の中にある。大体商店は二重丸のラインに沿ってできている。大通り沿いは商いに向いているのだろう。


 二重丸の外側は砦までは大きな道が一本で繋がっている。砦の方に向かって畑エリア、その外側に牧場エリアとなっている。


 畑エリアと牧場エリアの間に馬場や厩舎、牛小屋、馬小屋、屠畜場(とちくじょう)がある。


 砦方向とは逆方向の外側は生地や服を扱う紺屋町、食器を多く作って販売している焼物町、山に近い木を切り倒してため池を作り木を漬けて加工して販売する材木町などいろいろな町ができている。


 アーロンは興味津々でいろいろと質問をしてくる。


「この『鍛治町』って何?」

「これはいわゆる物を作る工場が集まった町でね、馬車だったり鞍、農業の道具も作ってもらったりしているところよ」


「馬車ってあの馬棲バス!」

「そう!馬棲!」


「あの馬棲っていうのはこの二重丸の外側を走る環状線と砦までのこの大通りを走るのと二種類あるんだね」

「そうね、その二種類あれば大体のところには行けるようになっているかな」


「っていうか馬が増えてるんだね。どこで手に入れたの?」

「みんなクロの家族なの。クロの出身のこの島にいっぱいいてね、渡って来たの。

 まぁそれが繁殖しているってところかな。どこまでがクロの血筋なのかは『卵が先か、鶏が先か』ってところかなぁ。

だから多くの馬は牧場にいるのよ。後で見に行こっか。アーロンも乗れるようになっておいてくれると助かるし」

「乗りたい!乗りたい!」


 それからアーロンは馬棲にみんなと一緒にお弁当を持って馬場に通い、馬に乗れるようになった。

 自慢気に尾花栗毛の「お花ちゃん」に乗って帰って来た時のドヤ顔は本当に可愛くて屋敷の皆がほっこりと癒されていた。




 数日後……


カンカンカンカン!

カンカンカンカン!


 鐘がけたたましく鳴り響いた!すっかり夢の中にいたニーナは布団から飛び起きた!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あ〜素晴らしい株の世界♪

株♪株♪株♪株♪

ガブ ドッ◯コムセンター♪


カンカンカンカン?

晩餐◯?



CMソングご存知の方いらっしゃるかなぁ…

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