第46話 失敗♪失敗の連続♪


 翌月の2回目の炊き出しの会。ニーナ達は出るのはやめて上から眺めていた。他の女性達も出席、欠席は半分くらいであったが、出たとしても裏方になっていた。


 今回は噂を聞きつけてものすごい人が集まった。王都だけでない、他所の貧困層も炊き出し目当てにやってきたのだ。

 しかし、ここまでの人が来ると思っていなかったためにあっという間に炊き出しが無くなってしまった。


「おかぁさん…お腹すいたよぅ…」

「おぉい!もう無いのかよっ!」

「えぇ?わざわざ遠くから来たのに…」


 ざわざわとまだ炊き出しをもらっていない人達から文句を言う声が聞こえる。


「なんでてやっているのにあんな態度なんだ!」

「足りないのは俺たちのせいじゃないだろ」

 

 そう並んでいる人々に対してボランティアに参加している生徒たちも不満を漏らし始める。


「皆さま、お集りいただいたのに大変申し訳ございません。次回の炊き出しの際にはもっと量を用意いたしますので、本日はお引き取り願います」


 ブランカが皆の間に立ち、集まってきた人々に頭を下げた。貴族に頭を下げられたというのは皆人生で初めてだったために引き下がってくれた。

 

 2回目の炊き出しは側ももいい気持ちのしない会となった。

 遠くから来た貧困層は戻る気力もお金もないという事で王都に残ってしまった。王都に貧困層が増えてしまうという結果になった。

 


 3回目の炊き出しでは前回の失敗を繰り返さないために倍の量を用意した。しかし蓋を開けてみると2回目よりももっと多くの人が集まっっていた。


「おい、あいつら、いつも屋台で店出してるやつらじゃないか?」

「あいつらは屋敷の修理に来たやつらで大工だぜ?」


 生徒達の中に貧困層だけでなく普段は仕事をしているであろう人間がボロい服を着用して貧困層のフリをしてやってきている疑惑が上がる。

 おかげで量を増やしたのに足りる訳が無かった。


「なんだよ!前回、もっと量を増やすって言っただろ!」

 群衆から文句が出る


「増やした!増やしたけど足りなかったんだ!」

「いいから出せよ!こっちは腹が減ってるんだよ!」


 空腹で腹が立っているため気が立っており、多くの人間がグラウンドに殺到し、暴動のような状況になった。生徒達はなんとか校舎に逃げ込むのが精一杯でただただ怯える事しかできなかった。

 すぐ王都の騎士達が制圧してくれたために学生にけが人は出なかったものの、多くの人にけが人が出てしまい、グラウンドは炊き出しの道具などた散らかっており惨状と化していた。


 王子アレクサンダーは生徒会室からその様子を眺めており


「平民というのは何てみっともないんだ…てやるっていっているのに文句を言うなんて…」


 と落胆を見せる。ブランカはそっと横に寄り添っていた。


 結局、危ない目にあった生徒達から生徒会、ひいては王子アレクサンダーへと不満を持つようになってしまった。3回目にして多くの予算を使ってしまったために、もう『炊き出しの会』は中止となった。



 レポート作成のためにニーナのタウンハウスにリズ、田中と集まった。


 リズは7歳で王子アレクサンダーの婚約者となり、そこから王妃教育が始まってしまった。

 そのため学校ではなく家庭教師についてもらい勉強と王妃教育を同時にすることになった。

 今回の進学で初めて学友という物が出来てともて嬉しいと話した。家族も娘が明るくなったと喜んでくれているそうだ。


(王子妃になる前に学校生活を…ねぇ…王子アレクサンダーがBa…だからフォローするため…なんだろなぁ)

 

 失礼な推理をニーナはするが、そうでないと未来の王妃を男性ばかりの学校に進学させようなんて誰も思わないからだ。


王子アレクサンダーがBa…だったから出会えたんだなあ…感謝!)


 レポートが終わる頃にプリシラも自分達のレポートが終わったからとニーナのタウンハウスへと来てくれた。


 実は今日は週末という事もありレポートが終わったら女性だけのパジャマパーティをしよう!という事になっているのだ。田中は悪いが除外。当たり前。


「もう楽しみ過ぎて昨夜は寝れなかったんですのよ」

 リズが荷物をギュッとしながら話す姿は本当に可愛い。

 アーロンもリズの可愛らしさにポッと頬を染める。


「じゃ、そろそろ僕は退散しようと思います」

 そう言って田中が女子トークから離れるべく席を立とうとした。


「ただいまぁ」

 オニールとテッドが帰宅してきた。みんなで出迎える。


「いつも娘がお世話になっております。仲良くしてくれてありがとう」


オニールがそう頭を下げると皆も「いえいえ、こちらこそ」と頭を下げる。


「こちらはテッド、父の部下でこの家の居候なの」

「どうも」


 ニーナに紹介されて頭をペコッとした後にテッドは田中を見る。


「「あっ!」」

「ん?どうしたの?二人とも知り合い?」

 コクコクッと頷き合う二人。


「「久しぶりじゃないか!」」

 また声があってしまい二人は笑い合う。


「友達だったら、じゃ田中も一緒にテッドの部屋に泊まればいいじゃない?募る話しもあるんじゃないの?」


 ニーナの一言に田中がメガネで目は見えないけどぱぁぁぁっ!と喜んでいるのが伺える。


「い、いいのか?」

「おう!いいな!俺の部屋に泊まれよ!」


 こうして田中もタウンハウスに泊まる事になった。


         ※

 夕食の後、応接室でみんなで談笑して、炊き出しの会の話になった。

「ニーナは『2回目からは女子生徒は表に出ない方がいい』って言っていたわよね?」

 プリシラの問いに無言で頷くニーナ。


「お陰で女子生徒が危ない思いをする事はなく、本当に良かったけど…ニーナは予想していたのかしら?」

「……」

 今度はどう答えたらいいかをニーナは考えているようだ。


「何故、うまくいかなかったのかしら?」

 リズが首をかしげて不思議そうにしている。


(子リスちゃんみたいでかわいいっ!)

 ニーナは密かに悶えるのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

タイトルはデーモン閣下の

「がんばれ!装置153番のマーチ!」より


個人的には

「toitoitoi」が好き(⋈◍>◡<◍)。✧♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る