第16話 サラシにま~い~て~♪

※ニーナ視点


 時は少し遡る…


 ニーナがチャーリと二人でミスターXになってからというもの、休みという休みが無いくらいミスターXニーナは街づくりに奔走していた。あっという間にニーナは15歳を迎えていた。屋敷の皆にお祝いしてもらい、アーロンからバースディカードが届いた。

 

 砦虎口が完成したというので今日もミスターXになって見に行くつもりだ。胸にサラシを巻いて男装し、髪の毛は帽子の邪魔にならないように下の方でお団子にして、最後はネットを張ったハンターハットを被る。


 ハンターハットに一周にネットを張るというアイデアは日本の農家のおばちゃまが虫よけにやっていたのを見て閃いた。

 外側を銀、中が黒色のネットにする事で中からは良く見えるが外からは光を反射するために見えにくいのだ。

 これも日本にある外側を銀色、内側を黒色にする事で外からは部屋の中を見えにくくする網戸からアイデアをいただいた。


 みんなの前で声を出さねばならない時はチャーリーにミスターXをやってもらっている。普段チャーリーは会計仕事で大忙しなので申し訳ない。

 クロに跨って視察をしたりするのはもっぱらニーナである。外でどうしても指示を出さねばならない時は一番最初に馬に乗れるようになった騎士のトムが護衛として付いて回るので『風邪を引いて声が出ない設定』でトムに耳打ちをして代弁してもらうという形を取った。


 チャーリーとは身長差は大体5cmくらいだが、チャーリーは大体皆の前に出る時は座って対応しているので一応バレていない。


 襲撃事件の後、シルヴィオには砦の前に虎口を作る提案をした。洋風の砦あるあるなんだけど砦の外側ってノッペリ、つるーんって外に出っ張った半円で面白味が無い。だからこそ、牛に丸太を取り付けた破城槌はじょうついであっさりと打ち破られちゃう。


 シルヴィオは図面を見て面喰っていたいたけど、ニヤッと笑って飲み込んでくれたから良かった。


(やっぱり男の器が、デカイのよねぇ)


 うっとりとしながらクロに跨って砦に向かう。うっかりトムの乗っている栗毛の馬のクリちゃんを引き離してしまった。砦についてからトムに軽く叱られた。てへぺろ。


「もう先に行かないでくださいよ!僕はボカァちょっと彼女から手紙が届いてるかもしれないんで、事務室へ行ってますね。帰る時に声かけてくださいねぇ」


「へぇ~い」


 彼女の事を思って甘い顔が駄々洩れなトムにニーナは横柄な返事をして砦の上に銀色の髪が光るのが見つける。シルヴィオだ!階段を駆け上る!もう飼い犬が飼い主に尻尾を振りまくって飛びつく勢いだ。


「シ!むぐっ!」


 もう一人男性がいるのに気づいて慌てて言葉を飲み込んだ。


(あっぶなぁ!)


 出ていた尻尾も引っ込めて(本当は無いけど)ジェントルメンな歩き方でシルヴィオに近づいて行った。ちょっとシルヴィオにはバレバレだったみたいで笑いを噛み殺している。


「ようこそ、ミスターX。こいつは私の弟子のテッドです」

「どうも、こちらラウダヴァーラに赴任する事になりました、テッドです。よろしくお願いします」


 シルヴィオがすごく驚いた顔をしてもう一人の男性を見たので、やっとニーナはもう一人の男性のテッドに目がいった。

 

 背が高く、スラッとしたボディに何頭身ですか?っつぅくらい頭も小さくて少し長めの前髪を横にサラッと流したさわやか青年。『眉目秀麗』って貴方のためにあるんですかぃ?って神々しさに言葉を失う。まぁ簡単に言えば見惚れて固まってしまった。というところでしょうかね。


 いや、前世も合わせてこんなイケメンを生で見るなんて初めてだったんだもの。そりゃ、しゃーない。そしたら動く彫刻が握手を求めて手を出してきた!


 ミスターXニーナはおそるおそる手を出す。テッドはその手を力強く引っ張って握手をした。


(ぎぃやぁぁぁぁぁっ!イケメンすぎる!怖い!流れるしぐさ!貴族だな!)


 美しすぎると人は恐れ多くて怖くなってしまうのね。シルヴィオが執務室へ移動する事を提案してくれた。おかげでイケメンが手を離してくれたのでホッとする。

 シルヴィオ、ミスターX、ニーナの並びで階段を下りていく。

 ホッとしたのはいいが、あと階段2段くらいのところでまさか足を踏み外すなんて!!!


 その瞬間!後ろから手がにょっ!と脇から湧いて私の胸をギュッとしたのだ。ギュッと!!いや、男装を初めてからサラシを巻いているからね、胸なんて無いようなもんなんだ!そうなんだけども!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 自然と声が出ちゃった上に足が着地した瞬間(いや、助けてもらったから無事に着地したんだが)ギュッと胸にあるその腕を両手で抱え込んでしゃがむ。テッドは逆に重心を前に持っていかれる。その勢いを活かしてテッドを背中に載せて一本背負い!!!


 で終らずに勢い余って自分も一緒にクルッと回転してテッドの上に背中から着地。


ドォォンッ!(テッドの着地音)

ドスンッ!(ニーナがテッドの上に着地した音)


 ハッと気づいた時には空が上でした。ハイ。慌ててテッドの上から降りてテッドの顔を覗き込む。


「ご!ごご!ごめん!つい!投げちゃった!大丈夫?ねぇ!」


 目が一瞬あったように思ったがその後、テッドがこと切れるように脱力してしまった!反応が無い!!焦る!!シルヴィオがテッドを診てくれた。


「気を失ってるだけだ。医務室へ運ぶぞ」


 シルヴィオはヒョイとテッドを肩に担ぎあげた。


「帽子、忘れんなよ」


 ミスターXニーナは指摘されて初めて帽子が取れている事に気付き、慌てて帽子をかぶってシルヴィオの後を付いて行く。シルヴィオの肩に乗っているテッドが縦に小刻みに揺れている。


「あ!シルヴィオ!笑わないでよ!」


 周りに人がいないことをいい事にシルヴィオの背中をポカスカ殴ると耐え切れなくなったシルヴィオは大きな声で笑った。

 こんなに笑っているシルヴィオは初めてでビックリした。きゅん。




 医務室で横になったテッドは目が覚めた途端、左手で私の腕を掴み、右手で帽子を取り払った。もの凄い速さでなす術もなかった。


(あかーん!バレたぁ!)


万事休す。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

包丁い〜っぽん♪

サラシにぃま〜いぃてぇ〜♪


見た目はうる星や◯らのら「海が好きぃっ!」の息子?竜〇介とお揃い♪

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