第18話 付きっ切り?ア〇ドレか?
「そうなのね。よろしくお願いします。」
目が開かないのでそのまま笑っておたふくのようになる。最近はミスターXの時はジャケットを羽織ったしっかりとした紳士。ニーナの時はラフなシャツにズボンという服装で相変わらず生活をしている。
テッドが貴族出身っぽいからシルヴィオから一番安全な仕事に任されたというところかしらね。まぁ、トム一人じゃ申し訳なかったからね。いっか。
いつものように隣の教会に向かう。子供たちが笑顔で迎えてくれる。
「このお兄ちゃんだぁれ?」
「かっこいい!」
みんな好奇心旺盛だ。
「私の専属騎士になったテッドよ。みんなもよろしくね」
「わぁ!これから毎日一緒なの?」
「専属騎士なんてニーナお姉さま、お姫さまみたぁい」
「毎日、来てくれるの?」
テッドは子供たちに囲まれて戸惑いつつも嬉しそうだ。
「こんな天使みたいな方が本当にいるんだねぇ。教会だから尚更神々しいねぇ」
テッドに手を合わせるおばさま方。そう、実は最近は子供だけじゃなく大人も来てくれるようになったのだ。最初は自分の名前のサインだけでも書けるように!と領民に強制で来てもらったのだ。
「本当にここに来て、計算を覚えてからっていうもの変にお釣りを胡麻化そうとするヤツが来ても『違うだろ』って自信持って言えるようになったのが本当にうれしくてねぇ」
「そうそう。簡単な計算は私らでもできるけど数が多くなったらそう簡単には計算できなくてねぇ。本当にここに来て良かったよ」
「私らからしたらニーナ様も天使様だよ」
(いやぁ照れるなぁ)
「最初は『自分の名前だけでも書けるように!』ってミスターXに言われて来たけどさ、その後も『来ていいんだよ』って言ってもらえた時の嬉しさったらねぇ」
「そうだよぉ。ここに来てから子供たちも進んで店の手伝いしてくれてさ、計算をしてくれるから本当に助かってます」
「俺なんて字もちゃんと読めないからさ、子供に読んでもらってるんだけど、それもいつまでも子供頼っちゃいけないって思ってさぁ」
(うんうん。来てくれて本当に嬉しい)
店の準備があったりで大人は夫婦交替で来てくれたり、忙しくて来れない日もあったりするけれど、学ぼうとする気持ちが何よりも嬉しい。
今では家庭教師のバーバラ先生とアーロンの家庭教師のコンスタン先生も教えに来てくれている。ニコニコする私と牧師さんを不思議な物をみるような目で見るテッド。
「さぁさぁ!朝のちょっとの時間だから今日も頑張りましょう!」
一緒にみんなの勉強を見る。少ない時間なのと年齢もまちまちなので、進むスピードも違うため結局個別教室のようになっている。
「ねぇねぇ、これは?」
「え、私にも教えておくれよ」
結局テッドも先生になっていた。特に女の子、女性に大人気だ。
紳士的に教えてくれるテッド先生にみんなキュンキュンしている。
目がハートだ。
(キュン死させないでよぉ)
この世界で学校に行けるのは貴族と金持ちの子だけ。そつなく教える事ができるテッドはやっぱり貴族の子なのだろう。でも嫌がらずに教えてくれるテッドに感謝。
授業を終えてみんなはいつもの生活へ。授業の片付けをしていると
「なぜ、この勉強会を始めようと思ったのですか?」
真剣なまなざしのテッド。
(えぇ、まさかの平民嫌いだったりする?)
「う~~ん。もったいないと思ったから?」
「もったいない?」
きょとんとするテッド。まったく頭の中に無かった答えだったようだ。
「えぇ?だって子供って本当にいろんな事を毎日吸収するんだよ?それを家の手伝いだけで終わらせてしまうのは『もったいない』よね?」
まだ理解できない様子のテッド。
「人には『学ぶ』『知る』権利があると思うのよ」
「権利」
「そう権利」
「まぁ私が教えられる事は限られているかもしれないけれど
『知る』事によってあの子達の世界は昨日よりは絶対に良くなっている。
広がっていると思うのよ。」
「『学ぶ』か『学ばない』かの選択肢があってもいいんじゃないかなって」
「学んだとてそれが活かされるとは限らないですよね」
「そうね、活かすか活かさないかも自分次第よね。
でもちょっと学んだだけだけど、あの子達は計算を活かして商売に活かしてくれているわ。
計算だけじゃない、文字や社会を知る事は決して無駄にはならないはずよ。
むしろ、何故限られた人しか学べないのか不思議でしょうがないわ」
「テッドは何故平民は学ばなくてもいいと思っているの?」
「学ばなくても生活できるからですよ。
苦しくなった時には国が助けてくれるでしょ?
貴族たちは平民の生活のために勉強するんですよ。
領地を豊かにするために」
「うん、平民だって豊かにするために勉強してもいいんじゃない?
『知識』って誰にも侵されない財産だと思わない?
領民の財産が増えたらそれは領地の財産も増える事だと思わない?」
(「知識は荷物にならない財産だ」って凛の担任が言ってたんだよね)
「お金にはなってないじゃないですか」
「そうね、お金には直結していないかもしれない。
でも、知識が増えた事により騙されないようになったわ。
それって損失を無くしているから利益をあげた事にならないかしら?
つまりお金が増えたって事にならないかな?」
絶句するテッド。
まぁ、当たり前と思っていた事を覆された時ってそうなるわよね。
意外と頭、固いのね。カッチカチなのねん。
「あそこ!見て!」
大勢の人間で少し大きめの建物を建てているところをニーナが指さす。
「いつまでも教会をお借りするのも悪いから今『学び舎』を建てているの」
「『学校』じゃないんだ?」
「『学校』ってなるとみんなが横並びで同じ事を学ぶって感じでしょ?この『学び舎』は子供達はいつでも好きな時に来て勉強をするの。大人だって言っていいの。」
学びたい人間がそこに言って学ぶのよ。先生に聞いてもいいし、自分が教えたっていいのよ。自分の学びたい事を学ぶ『学び舎』なの。
コンスタン先生とバーバラ先生が常駐してくれる予定なのよ」
「好きな事を学ぶ……」
「まぁ、それこそ貴族じゃないからね。義務じゃないのよ。繁忙期は猫の手も借りたいしね」
屋敷には話しをしながらという事もあり、あっという間についた。
教会は隣だからそりゃそうだ。
「ありがとうテッド」
お別れの意味を込めてお礼を言ったのだが屋敷の敷地に入ったらテッドも付いて来た。
「?」
首をかしげていると
「これからは付きっ切りで護衛させていただく事になりましたので」
(付きっ切りってどこまで?!何を言っているのか理解不能ですぅぅ)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
オス◯ルの側にはいつもいたあの人ね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます